土を使った昔ながらの家づくり。「Rooted in clay 人も家も土から生まれた」展
日本有数のやきものの街、愛知県常滑市にあるINAXライブミュージアム。
そこで開かれた展覧会「Rooted in clay 人も家も土から生まれた」のトークイベントに出かけました(5月6日)。
同展では「土」を共通言語とする3人のアーティストが招かれ、公開制作が行なわれました。
アメリカ・アリゾナ州在住のアセーナ・スティーン&ビル・スティーン夫妻、そして日本を代表する左官職人のひとりで、土を素材とした創造性を追求する挟土(はさど)秀平さんです。
アセーナとビルは30年前から土や藁ブロック、日干しレンガといった昔ながらの自然素材を使った家づくりを行い、アリゾナでワークショップを開催しています。
アメリカの先住民族プエブロとメキシコをそれぞれのルーツに持つ夫妻と、飛騨高山出身の挟土さんが初めてアリゾナで出会ったのは2004年のこと。
夫妻はそれ以前にニューメキシコで左官職人・久住章さんと知り合い、そのご縁で日本の左官道具を送ってもらったのですが、使い方がよくわからない。そこで挟土さんが技術指導に呼ばれたそうです。
夫妻とワークショップ参加者は壁を平滑に塗るところから日本の左官技術を学び、「土は単なるマテリアル(材料)だと思っていましたが、そこに精神とエネルギーを込められることを知りました」という参加者のコメントも紹介されました。
一方、 挟土さんは「人々と文化と自然をつなげる」夫妻のライフスタイルに感銘を受け、現在まで三度にわたる交流を重ねています。
トークイベントではこれまでの交流の様子や、それぞれのルーツをテーマにした作品、アリゾナと日本の手法の違いなどについて語られました。「私たちは土に砂を混ぜて塗りますが、日本のように藁を混ぜることもある。それは同じですね」とアセーナ。
印象的だったのは挟土さんがアリゾナのワークショップ現場で家の土壁を塗っていた時のエピソードです。
現地の土は日本の土よりも固い上に、日差しが強く高温で乾ききった気候では、5㎝ほどの厚みの土壁でもすぐに乾いて固くなってしまう。日本で用いている土の調合ではひび割れが起こるので、「日差しの影響を受けない真夜中に仕上げをした」と挟土さん。
そしてこうも言われました。「何層にも、幾重にも塗り重ねてできるのが左官の魅力なんです。(そうしてできた現地の)厚い塗り壁には本当の暮らし、実存しているという感じがある。本物ですね!」
ぶ厚い土壁で強い日射を遮るアリゾナ、呼吸する土壁で高温多湿の気候を調節する日本、3人のお話を伺いながら、まさに地域の気候風土と自然の素材、工法は密接に関わり合っているものだと実感しました。
この展覧会は9月19日まで。面白そう、と思った方はぜひ会場に足を運んでみてくださいね。
★展覧会の詳細はこちら(9月19日まで)
また今回は、トークイベントの聞き手を務められた編集者の多田君枝さん(日本左官会議 事務局長)にお世話になりました。このイベントのおかげで全国の「土」を愛する仲間と出会い、再会できたのは何よりの喜びです。
ありがとうございました!
次の投稿では、やきものの街・常滑ならではのレストランをご紹介したいと思います。
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