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臨床工学技士に聞いた、「夜間透析」のリアルな実情

こんにちは。

産業理学療法で社会と理学療法をつなげたいyokoです。
理学療法士は「身体の悩みを、動いて治すことが得意な専門家」です。

愛用のipadが使えなくなってしまったので、今日はイラストなしでの投稿です。(泣)

今日は経営者の方にも是非知っていただきたい、夜間透析についてのお話です。

夜間透析とは夜間に行う人工透析のこと。
夜間とは17時以降に開始、21時以降に終了することを指します。

糖尿病や糸球体腎炎などが原因で腎臓の機能に重度の障害が出ると、腎臓の機能を補うために人工透析が必要になります。
透析には約3時間が必要で、前後の診察や準備などを含めると4−5時間を有します。一般的にこれを週3回、一生続けなければなりません。

人工透析患者数は年々増えており、2020年末のデータでは35万人です。約380人に1人が透析を受けている計算になるそうです。

腎炎隊HPよりhttps://jinentai.com/dialysis/tips/1_1.html

2021年度の日本透析医会ワーキンググループによるに透析患者実態調査を見ると、夜間透析を受けている患者さんは男性で18.9%、女性で6.1%です。
20代−50代の働き盛りの年代で見ると、40%が夜間透析を受けています。

透析現場で働く臨床工学技士さんから、働き盛り世代のリアルな透析事情を聞くことができたので、以下にご紹介します。

・夜間透析を受けている患者さんの中には、会社に言わずに透析を続けている人も多い
・早く帰ったり体調不良を理由に解雇されることを恐れているからだ
・職場に言わないから、透析に遅れて来ざるを得ないこともある
・透析の時間が短いので、どんどん状態が悪くなる
・状態が悪くなれば、仕事を辞めて(人手の厚い)昼の時間帯に透析に移行せざるを得ない

透析病院で働く臨床工学士さんの言葉

事実を知りたくて、今一度データを漁ってみました。

下のデータを見ると、理解のある職場であると答えた方は75%前後で推移している一方で、理解のない職場が7%ほどあります。
そして比較対象である5年前のデータを見ても数値がほとんど変わっていないことから、夜間透析の理解は一定のところから伸びていない現状が読み取れます。

日本透析医会WG 「2021年度血液透析患者実態報告書」http://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_index_public/no_37-2_sv.pdf


透析者自身が家計を支える立場にある方が半数近くおり、年齢が下がるほど家計が苦しいというデータもあります。
このことから、家計を支えるために働き続けなければいけない、厳しい現実も見て取れます。

日本透析医会WG 「2021年度血液透析患者実態報告書」http://www.touseki-ikai.or.jp/htm/05_publish/dld_index_public/no_37-2_sv.pdf


働きながら夜間透析をしている患者さんは日本全国にどのくらいいるのでしょうか?
透析医会ワーキンググループの実態調査から計算してみます
男性(66%)では20−50代は23% 65歳未満で働いている人は60% 夜間透析をしている人は働いている人の40%
35万人*0.66*0.23*0.6*0.4=12751人

女性が(34%)では20−50代は18% 65歳未満で働いている人は33% 夜間透析している人は働いている人の40%
35万人*0.34*0.18*0.33*0.4=2827人

男性では12751人、女性では2827人いる計算になります。
うち7%である1090人は職場理解がなく、夜間透析をしている計算になります。
日本の就労人口が6900万人であることを考えると、この数字はとても小さなものです。
だからこそ、声になりにくいし、届きにくい。
Twitterには夜間透析をしている患者さんの声が載っています。
透析は周りにわかりにくいから辛いと。

一方で仕事をしていることで、精神的な安定を得ているという文献もあります。
社会的な役割や収入があることが、透析患者さんの生活の質を上げているのです。

通 院, 有 職, 年 収 あ り, Alb 3.6g/dl以 上, K 5~5.5mEq/l, Ht 25%以 上 の 者 で精 神 状 態 が 良 好 で あ っ た. ま た, 身体 機 能 障 害 に よ る役 割 制 限 が 少 な い こ と, 社 会 機 能 の 制 限 が 少 な い こ と, 睡 眠 が 良 好 で あ る こ とが, 精 神 状 態 が 良好 で あ る こ と に強 く影 響 して い た.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt1994/34/10/34_10_1299/_pdf/-char/ja

私は大学の時、透析を行う病院で研究の手伝いをしていたことがあります。
患者さん達が口をそろえて言っていたのは「透析のあとは非常に疲れる」ということ。
全身の血液を入れ替えるわけですから無理もありません。
23時近くまで透析をして、翌朝出勤するのは、相当な体力を使っているはずです。

雇用の提供者とも言える経営者の方には、ぜひ透析患者さんへの透析(特に夜間透析)における理解や、患者さんが透析を受けていることを言い出しやすい職場作りにご尽力いただけたらと思います。

数は少ないけれど、働き盛りで透析を受けている患者さんがいることを知っておいてください。

患者さんが必要な量の透析を受けることができれば、体調が整うことで業績にも貢献できたり、心地よく長きにわたって働くことができます。

皆さんに少しでも働きやすい毎日を!
働きたい人のために働きたいyokoでした。

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これからも産業理学療法と理学療法士が、社会に必要とされるために、いろいろな視点から情報発信をしていきます!

思うところがありましたら、コメントなど頂けると嬉しいです。


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