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『大豆田とわこと三人の元夫』と「ハレとケ」

「お祝いしてる最中に口内炎ができていることに気付いた大豆田とわ子」

「おしゃれなカフェにジャージで入れる大豆田とわ子」

・・・靴の中の小石に引っ掛かり、口内炎が引っ掛かり、

小さなことが気になり、引っ掛かる。そんな人間らしさ、キャラクターが魅力の「大豆田とわ子と三人の元夫」というドラマはご存知でしょうか。

私はもとより、同年代の淑女たちは、「とわこ!わかる!!わかるよー!」と涙を流しながら何度スタンディングオベーションしたことか。

日常の些細な苛立ちに対しても「とわこだったら、きっとこう乗り越えるはず」と、勝手ながら自分をとわこに憑依させ、空想してみたり・・・と、

いつぶりだろう?こんなにドラマにハマったのは?・・・そうだ、『ずっとあなたが好きだった』以来か。(お久しぶり、冬彦さん)

・・・が、世間の皆様が我々と同じような評価ということでは当然なく、ネットで検索すると出るわ、出るわ・・・。

「大豆田とわこ つまらない」というスレッド。

はて?何が共感ポイントでそうじゃないのか?

あれこれ考えるうちに見えてきた、これって今のSNS社会と繋がるのでは?!

・・・ということで、オリンピック一色になった

このタイミングではありますが・・・今日も張り切って参りましょう!!

まず、ネットで多く挙がっていた、

「大豆田とわこと三人の元夫」がつまらないと思う理由としては、

「コンセプトが不明瞭、何を伝えたいんだがよくわからない」

・・・なるほど。言われてみたらそりゃそうだ、と納得。

しかしながら、それこそが、「とわこ」の魅力そのものだと思うのですよ。このドラマは最終的に「誰かを選んで幸せ掴むぜ」とか「仕事を選んでとわこ、渡米」などというような分かりやすいメッセージは一切ない。

ドラマ全体を通して「小さく呟くようなシュールな言葉のやり取り」で話が展開していくし、視聴者に押し付けるようなドラマティックなBGMもない。

そう、全ては諸行無常。日々繰り返される“人生”という“営み”こそが、このドラマの醍醐味、と私は思うのです。

理不尽なこともグッと呑み込み、自分のあさはかさに悶絶し・・・日々いろいろあるけれど、それでも“心の折り合いをつけながら”、

前に進んでいく、そんな「日常」そのもの。当たり前になっていた「ハレ」の世界


日本人の伝統的な世界観として「ハレとケ」という概念があります。

ハレ=晴れ、ケ=日常。どっちが大事、ではなく対になっているのですね。普段は慎ましく生活をしていても、お祝いごとの時には晴れ着を纏い、花や食器も誂える

・・・なんとも日本人らしく、とても好きな価値観です。しかし、現代はどうでしょう?

かつてはハレの日しか口にできなかったような食事や旅行などは誰もが簡単にできるようになり、今や毎日がハレの日に?!

SNSを開けばラグジュアリーな場所でシャンパングラスを傾け(←私もやったことがある。爆)「大きな仕事が決まりました!」と一眼で分かる企業のビルの前で撮った写真を投稿し、「空港なう」をアピールするエアポートおじさん・・・(何処へ?)

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クスッと失笑していたあの頃も、今となってはすべてかけがえのない思い出。

・・・だって、コロナで変わってしまったんですもの。

他人に見せる顔=ハレ、気心許せる人に見せる顔=ケ


コロナによって、人と会うことも制限され、多くの人がリモートで出会う時代。通勤も減って、外食にもなかなか行けず、

ライブにも行けない。家電が飛ぶように売れ、家での時間がプレシャスとなった。

「ケ」が暮らしのほとんどを占めている今、「ハレ」のテンションでずっと動いていた社会を振り返ると、

やっぱり、あれは無理があったんだろうな〜と思う訳です。「“ケ”が枯れる」というのは「気が枯れる」とイコールなんだとか。

・・・うんうん、納得。そりゃぁ、人も社会も疲れちゃうよね。

コロナ禍では、「映え」や「マウント」、もっと言えば「売り上げを上げる」ためではなく、

本当に自分が思っていること、考えていること、やっていることを素直に発信する人が増えてきたように思うし、

それをやり続けた先にこそ、「本当のファン」が集まってくるんだと思うのです。

・・・実感値を込めて。はい。

随分と長いこと「ハレ」で生きてきた私たちにとって、「ケ」の世界というのは、退屈で刺激が少ないかもしれないけれど、実は長い目で見たら、「持続可能な人間関係」と、「自分にとって必要な分のお金」を運んでくれる、大事な概念だと思うのです。

そんな訳で、今日も、

「ラジオ体操が他の人とズレて」「網戸はよく外れてしまうし(実話)」「キッチンの棚を開けたらパスタが降ってくる(これも実話)」

そんな“日常”を愛しく感じながら、謙虚に生きていこうと思うのです。

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そう、「とわこ」のように。


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