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たのしくおでかけできますように その1

商品にプラスアルファの喜びを(⋈◍>◡<◍)。✧♡

skip&clapさん。京都府木津川市にある、吸引機用バッグの専門店。吸引器って言われてそもそもピンとくる人は少ないし、その吸引器をより使いやすくするバッグがあるなんてことを知っている人はさらに少ない。そんなお店を切り盛りする奥山梨衣さん。彼女はごく普通に大学をでて就職し、結婚し、お子様を授かった。出産しても働き続けようか?、好きなハンドメイド作家として起業しようか?そんな未来を描く普通の新ママになるはずでした。2006年に誕生したTEPPI君は、何カ月たって首が座らず、寝返りも打たず…病弱だけど医者は様子を見ましょうというばかり、もやもやと不安な日々を過ごされました。

三歳の時、風邪からのけいれん発作が止まらなくなり入院。その後親子で思い切ってけいれん専門の静岡県の病院へ転院。そこでやっと病名が判りました。世界で150人(当時)しかいない、CFC症候群という病気。小児てんかんの専門病院に親子で入院している、ママと子供たち。それぞれてんかんの原因は違ってるし、症状もバラバラ、お互いに比べる必要もないその生活の中で培ったつながりが、奥山さんを変えました。「もっと楽に考えてもいい」、「普通に暮らせるんだ。」と。

六歳の時、風邪をこじらせ、肺炎となり、呼吸困難に陥り気管切開によって一命を取りとめました。が、TEPPI君は命と引き換えに声を失い、噴いて出る痰を吸引するための吸引器との付き合いが始まりました。退院し、家での生活、養護学校での生活が始まりました。TEPPI君は吸引器がなければ痰が詰まって息ができません。吸引器がTEPPI君の命を支えています。吸引作業は一日100回。支援学校の送り迎えの車の中でも、ママは赤信号で止まったわずかな時間で吸引を済ませ、車を走らせなければなりません。

吸引のことを何にも知らない、私たち。「吸引器一台あればできることでしょう。」って思ってしまいますが、必要な道具は、お水や予備のカニューレなどを加えると10点にも上ります。

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吸引器バッグは命を守るバッグ

気管切開をしたTEPPE君がお家に戻る。それまで医療行為であった吸引作業は、家族の日常になりました。毎回そろえなければならない付属物や電源アダプターなどなどそのどれがなくても命取り。吸引作業は吸引が出来れば終わり、ではなく、介護者の消毒に始まり、吸引チューブの拭きとり~ごみ捨てまで、沢山の工程を遅滞なく済まさなければなりません。「滅菌水が切れていた」「バッテリー不足」なんてことがあってはいけないんです。

にもかかわらず、それらをまとめて収納するバッグはなく、先輩ママたちは大きめの保冷バッグなどで、代用、していました。

おむつを入れたり、哺乳瓶を入れたり、赤ちゃんのために新ママが持つのは、デザインや機能性に優れた、オシャレでかわいいマザーバッグ。ネットでもリアル店舗でも豊富に取り揃えられています。

TEPPE君のように医療的ケア児にとって、おむつや哺乳瓶と同じように吸引器は必需品。そして、それが日常なのだから持ち歩くママにとっておしゃれでかわいく、色柄が選べ、同時に吸引作業を合理的・効率的に行える、そんなバッグがあっていい。むしろ当たり前にないことがおかしい。

当事者のママが創ったバッグだから

TEPPI君のママは、徹底して考え行動する人、そして思考がシンプル。「ないなら創ろう」と。気管切開した状態で退院したTEPPI君は吸引器持参で支援学校へ入学し、弟も二人産まれた。ママはその合間を縫って、吸引作業を最高に段取りよく行えて、且つオシャレでかわいい吸引器バッグの開発に取り掛かった。

吸引作業は徹底して清潔でないといけない、口腔内に入れるカテーテルなどの付属品を保管する清潔ゾーンと、痰を吸い込む吸引器を設置する場所はキチンと分けられていなければいけないし、なんならゴミもパコっと捨てたい。バッグそのものの構造から考え、同時に数キロもする吸引器を運ぶのだから、ベルトやバッグ本体の縫製にもこだわった。

「だって元アパレルママだから」

厳選して選んだ布地にコーティングし、防水を万全にして、本革を縫える技術をもった縫製工場へ委託して生産開始。その合間に、発明協会さんに勧められ、特許も申請。

TEPPE君の物語


付加価値をめぐるお話を書きたかったのですが、長くなりましたので次に続きます。






京都で「知的資産とビジネスモデルの専門家」として、活動しています。現在は内閣府の経営デザインシートの普及に勤めています。