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「ママは良い人生なの?」Vol.15

一番恐れていた後遺症でも、コロナでも、インフルエンザでもなかった。ただウィルス名は確定していない。何らかの菌が手術の傷口から入り悪さをして発熱している。原因の菌がわからぬ間は抗生剤を朝・昼・晩と点滴注入しなくてはならない。なかなか熱は下がりきらなかった。
2週間経ち、ようやく原因の菌がわかった。ピントの合った薬を入れると発熱も治まり食事を取ることも可能になってきた。このころのやり取りをメモ書きしたものにはこう書いてある。

<げっぷが多く、便秘がち。食欲は以前の半分くらいしかない。胃薬などは飲んでいるがあまり効果が見られない。彼は食べられなく痩せていくのは致し方ない、と思っている。術後なので食事量は少しずつ増やすしかないと医者からも言われたようだ。長期戦か。『日中着る服が化繊で乾燥から静電気がひどい。木綿地の長袖のシャツを希望。』慌てて2着買う。『少し歩けるようになったよ。』とのこと。>
最悪の事態から少しずつ回復傾向にあるのだ、と感じる。

しかし、今回の発熱で私は不安になった。(退院してからもまた、こんなことが起きるかもしれない。大変な状況になったらどうしよう)手術は成功したがこれから何が起こるかわからない。

うわ、こんな困難を自宅で対応して乗り越えるのか・・・。再度入院になるのか。

そう思い始めると、今から経験するすべてが「最後かもしれない」と感じ、起こる出来事全てがグッと重いものになる。

メモの続きにはこう書いてあった。

<次女が「はたちのつどい」で支援学校へ久しぶりに行き友達と会う。その前にパパの所に行く>

この日、次女は可愛いワンピースを着て髪の毛も美容院でセットし少しメイクもした。晴れの姿を夫にも見てもらいたいと思い、会場に行く前に病院に立ち寄る。しかし次女は早く会場に行きたいからか、「パパのところ絶対行くの?行かなくてもいいんだけど」とふてくされ顔。病院で再会しても二コリともせず「パパほら、みたでしょ。もう帰るね。」と3秒くらいで病院を出ようとする。夫は「わー、綺麗にしてもらったねぇ。今日は楽しみだね。」と嬉しそう。
しかし、彼女のあまりの対応の悪さに私は思わずカッとなり「誰のおかげで20歳まで生きてこれたと思ってるの!!」と声を荒げてしまう。次女は私の怒る姿を見てまずいと思いつつ、少しおどけて自分を指さし「わたしー、1人で。」と答える。火に油を注ぐとはこのこと。「あぁそうですか。そしたら今から1人で会場に行ってこれからは1人で頑張って生きて行ってください。」と大人げない反応をする。
「こんな綺麗な姿、パパはもしかしたらもう見られないかもしれないのよ」と言いたいけれど言えないので、感情のままに苛立たしさを彼女にぶつけてしまう。
次女は本当の理由もわからぬまま、ただ私の迫力から逃げるために「ごめんなさい。」と言いながら夫と何とも言えない表情でツーショットの写真を撮る。

「行っておいで。楽しんでね。また報告待ってるよ。」と夫に見送られて会場に行く。

久しぶりの同級生達との再会は無事終わり楽しい時間を過ごした。

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