Word 11 あちらとこちらと

少し前
「あー。送り込んだ子達やられちゃったねー。オブザーバーが言ってるよーまぁ予想通りっていうか当たり前っていうかさー」
正位置、額、カチューシャの様にとメガネを3つかけた男は気怠そうに話した。
「まぁ良いでしょう。兵隊はまた増やせば良いだけの事。我々支援者の悲願。もうすぐ叶う手前まで来ているのですから」
執事風の男が丁寧な口調で話す。
「障害はめんどくさければ」
「めんどくさい程良い!!」
似たような格好の男2人はテンション高めに話した。
「めんどくさい方が良いなんてTHE!どうかしてますわ!」
西洋人形の様な服の少女が甲高く声をあげた。
「まぁまぁ。ここで言い争っても仕方ないですか?」
口以外を黒い布で覆い胴体をイモムシの様にベルトで拘束した男がおかしな話し方でいさめた。
「ボクら出番あるのかな?折角ならちまちましたのじゃなくて派手に暴れたいよ」
マッシュルームカットの少年が物騒な事を話した。
「何にせよ!わたくし達と神代七がぶつかるのはTHE!明白ですから!」
「そうなんだよねーまぁこっちからぶつかりに行くからあちらは回避出来ないけどさー」
「次は?」
「いつ?」
「あまり駒を失う必要もありますまい」
「もう僕らがでしゃばれば済む話なんじゃないかなですか?」
「それもそうだね」
「近々お目にかかりましょうーだね」


着替えて来たのはラヴだけだった。
私達はハルカから出されたお茶飲んでいた。
「しゃて。思ったより支援者の動きが早かったので明日の早朝出発しましゅ。異論は?」
「早寝早起きは美しさの基本。異論はないわ。IRONWA!」
「どうするッスか?普通に森を抜けて行くかテレポートのワードの人に連れてってもらうかッス」
そんなお手軽な方法あるんだ。それで良い気がするけど。
「それだと塔に支援者が押し寄せたら面倒じゃないか?塔壊すワケにいかないんだし」
G太郎ごもっとも。安寧の塔には妹がいるから。壊されたら意味がない。
「わたし達が出発したら支援者が追って来るでしゅ。彼らには待ちに待った、あるかないかの機会でしゅ。是が非でもベルを奪おうとするハズでしゅから」
それもごもっともなんだろう。
ただ渦中の私には全くピンと来ない話ではあるんだけど。
ほんの少し前まで普通に生活をしていていきなり命を狙われるなんてそうそうある事じゃない。
自分の謳歌が周りを巻き込んでいる申し訳無さも感じている。しかも妹と一つに戻るとかも意味が分からないし、世界が終わるとかも意味が分からない。
何が起きるのか起きているのかも把握はしていない。
でも前に進むと決めたから。私も謳歌をすると。
キャピタルは常に私に言ってくれる。
「気にする事は無いんだよぉ。自分の生き方が誰かの邪魔だったり迷惑だったりはよくある事だから。それでも生きていかなきゃならないんだよぉ。自分を助けてくれる人と何より。自分の為にねぇ」
と。
「ほんなら普通に森を歩いて敵と出くわしゃ戦闘、で塔を目指すって事でええんかな?」
フェイタルマスク要約お上手。
【そうしましょうか。時間と手間はかかりそうですが確実な気もしましゅ←イズリスペクト!】
ハルカの唐突なボケが私のモヤモヤを少し晴らした。隣でキャピタルが少し笑う。
「ハルカちゃん。今のはなかなか良かったよぉ。おじさんソレ嫌いじゃないなぁ」
【ありがとうございましゅ←イズリスペクト!2ndシーズン!】
「ハルカ。流石に続けざまはイマイチよ。SASUGANI!」
辛口のラヴ。
若干冷めた目になったイズがそれではと話始める。
「明日の朝。我々の任務スタートでしゅ。ベルにとっては謳歌の旅。我々にとっては伝説に触れる旅。どちらも皆の謳歌の一部になるでしゅ。皆の謳歌に幸あれ」
マリアン先生に教えてもらった。
「あなたの謳歌に幸あれ」
色んなタイミングで使う言葉らしい。1日の始まりにだったり。1日の終わりにだったり。久しぶりに会った友達との別れ際だったり。
そして戦いの合図としても使われるらしい。
「この世界では戦いの前にお互いの謳歌を讃えるのよ。戦いになった時点でのケンカを売った側と買った側の決断に敬意を表すの。もしかしたら命を落とすかもしれないから。だから闇討ちとか騙し討ちみたいな汚い手はご法度なのよ。イヤーンてなるからね!」
らしい。イヤーンはよく分からないけどね。
私はイズとハルカと同じ部屋で寝る事になった。何かあった時対策だろう。
「そういえば」
イズとハルカが私を見た。
「神代七の皆は普段は何してるの?」
イズがベッドに腰掛けた。絵に描いた様な豪華なベッドに。
ハルカは地面に正座をした。
「この世界には警察に該当する組織がありましぇん。個人間のいざこざや殺人すら謳歌の範疇で済まされましゅ。火災等の場合は役所の人間がオブザーバーを使って状況を把握。場合によってはその時の映像を被害者に見せて原因を伝えたりしましゅ。神代七が出張るのは強力なインテレクトが悪事を働いてそのインテレクトにしか利益がいかないみたいな時くらいでしゅ」
でしゅからとイズは続けた。
「基本的に神代七は暇でしゅ。なのでわたしは主にトレーニングと街の見回りでしゅ。皆何かしら働いてましゅが」
神代七最強がトレーニング?なぜ?
というか神代七働いてるの?なぜ?
【基本的に神代七は働かなくても良いのですが何らかの理由で神代七を辞めた時に社会と繋がりをもってなくてはいけませんから】
なんて現実的。全うな理由。
「ラヴとかは?何してるの?」
あの見た目で何をしているのか気になる。
イズはどう話そうかなという表情を浮かべた。
「ラヴは子供が200人くらいいましゅ」
「えっ!?200人?」
【そうです。SOUDESU!】
意味が分からない。奥さん大丈夫なの?そもそも200っていう数は何?
「ラヴの館って知りましぇんか?」
知ってる。派手な外観の建物。リゾートにあるホテルみたいな見た目なのに建物の右側がゴールド、左側がシルバー。夜になるとネオンがビカビカの建物。いかがわしいお店だと思っていた。
「ラヴは身寄りの無い子供達を保護する施設を運営してましゅ。ラヴの館がそれでしゅ」
マトモー!!!むしろ尊敬に値するー!!!
でもネーミングと建物のチョイスー!!
【ジョーとG太郎はフェイタルレッドのお店で働いています】
「フェイタルレッドのお店?」
【笛至(ふえいたる)というお店知りませんか?】
知ってる。ボロボロのお店なのに毎日行列のお好み焼きのお店。
「フェイタルレッドのお好み焼きは普通に絶品でしゅ」
キャピタルは?と聞こうとした時にイズが教えてくれた。
「キャピタルは服屋さんでしゅ。デイリーユース&ユースデイリーって知りましぇんか?」
知ってる。オシャレさん御用達のお店。このお店で服を買うのがステータスになる位のお店。
「皆普通に働いてるんだ。ハルカは?」
【ワタシは小料理屋を営んでますよ。鬼涙無(おになかず)ってご存知ですか?】
知ってる。この街で皆が行きたい店ナンバー1の店だ。激烈繁盛店。予約は2年先までいっぱいだという噂を聞いた事がある。
「知ってるも何もこの街の超人気店じゃない?いつか行ってみたいってお母さんと言ってたんだよ」
【あら。ご存知でしたか。ありがとうございます。ベルさんとお母様ならいつでも来て頂いて大丈夫ですよ】
やったよ!お母さん!一番の収穫かもしれないよ!お母さん!
「でもとっても忙しいでしょ?働く人もたくさん雇うの大変じゃない?」
【あぁ。それはゾンビ達にしてもらってますから。ワタシは基本的に電話番ですよ】
えっ?ゾンビ?さっきバトルしてたアレらが配膳から調理に至るまで請け負ってるの?それで繁盛店?カオス!
【大丈夫ですよ?死んでいるだけで造形はどうにでも出来ますから。普通の生きている人間の様にも造れますし。造れま寿司!】
お母さん!どうしたら良いの!予想を越えてカオスだよ!
その日はあまり眠れなかった。


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