Word 7 神代七・水星

イズの宮でのお泊まり会?はとても素敵な時間だった。ばあやの他にもお手伝いさんはたくさんいて行き届き過ぎたおもてなしを受けた。
部屋はたくさんありましゅから。
の言葉通り有り余る程部屋があった。ジョーは全ての部屋見て回ったッス!と言っていた。
夕食も素晴らしく美味しかった。見た事の無い料理ばかりだったけど美味しかった。
意外過ぎたのはイズが眠る時に真っ赤なジャージで寝ていた事だ。
パジャマかなと思いきやまさかのジャージ!似合うけど!ジャージ!
ジョーは面白がっていたけど。
イズは良い人だった。枕投げも参加してくれたし。ただ枕の威力!強烈!首無くなったかと思った!
ジョーは面白がっていたけど。
イズ。友達になれるよ。絶対。


翌日はバタバタ用意をして出掛ける事になった。理由はもちろんジョー。
寝坊の化身かと思う程よく寝ていた。
イズは最初に会った時と同じ鎧を身に着けていた。最初と違うのは剣を持っている事位だ。
「あらかた準備はしゅみましたか。ジョーのせいでギリギリになりましたが」
「仕方ないッス!枕が!布団が!ベッドが!俺に起きる事を許さなかったッス!」
「私も寝過ごしちゃうかと思ったよ。次に会う神代七はどんな人なの?」
イズが答える。
「次の神代七はしゅいせい(水星)。ハルカでしゅ。現神代七のムードメーカーでしゅよ。ベルもすぐに仲良くなれるはずでしゅ」
「ハルカさんは面白い人ッスよ!優しいし、強いし。文句のつけようが無いッス!」
「神代七って強さを確認する機会があるの?魔女の護衛が仕事なんじゃなかった?」
イズが答える。
「神代七の任務はいくつかありましゅ。例えば悪事を働くインテレクトの討伐。災害の復興。そして」
ジョーが割り込んで来た。
「支援者から魔女を護る事ッス!」
新しい単語が出てきたよ。
「支援者?」
「そうッス!支援者は言わば神代七と逆の存在っス!」
「魔女が一つになると世界が終わるという話は聞いていましゅね?」
「学校で教わったよ」
「支援者は魔女の謳歌を邪魔しようとする存在でしゅ。メンバーの中には元神代七がいたり特殊なワードを持つ者がいたりでしゅ。支援者は」
「強いッス!普通のインテレクトより数倍!ビサイズに匹敵する位にッス!」
そういうグループもあるんだ。私を中心にそんな大きい事になっているのがいまいち実感として湧かない。自分の運命なんてモノがあるなら間違いなく私は今その中心にいて周りを巻き込む流れが出来ている気がする。私に耐えられそうにないかもしれない。
「気にする事はないでしゅよ」
「何が?」
「それとこれとは別の話でしゅ。ベルが謳歌を求めるのは当たり前の事。気にする必要は無い事でしゅ」
さすが神代七。見透かされているのかな。
「大丈夫ッス!イズさんと皆さんがいるッス!」
ジョーちょっと黙っておこうか。
でもジョーのお陰で和む時もある。これがジョーの力の一つなのかもしれないね。
「さぁ。準備出来たのなら水星の宮に向けて出発でしゅ」
「水星の宮って」
「そうッス!隣ッス!」
昨日の内に呼んで顔合わせ出来なかったの?隣なのに!ていうか宮って全部場所固まってるでしょ!尚更昨日の内に呼んで顔合わせ出来なかったの?
「きっとこう思ってましゅね。昨日の内に顔合わせ出来なかったの?と」
さすが神代七。見透かされてる。
「もちろん出来ました。しかしこっちの方が盛り上がりましゅ。冒険は1人1人仲間を増やしていくものなんでしゅ!異国のゲームでも大体そうでしゅ!」
「間違いないッス!いきなり仲間勢揃いドーン!じゃ盛り上がらないッス!俺は行くつもりはない…みたいな展開も必要ッス!」
神代七同行しないパターンとかあるの?自由過ぎるじゃない!まぁそれも本人の謳歌と言われれば仕方ない事だし。
「盛り上がるからは冗談として1日一緒に過ごす事でお互いを知る機会を設けているんでしゅ。なので各宮に一泊でしゅ」
「そんなのんびりで大丈夫なの?その支援者とかってのが宮に攻めて来たりしたら?」
イズとジョーはお互いの顔を見合わせて少し笑った後に答えた。
「そん時は神代七が秒で勢揃いしてバトルッス!」
可能性がないわけでもなかった!まさか!なら尚更皆一気に集まって一泊で良い気がする! キャンプ!もしくは合宿感覚で!
「しゃて。隣ですからもう着きましたね」
早い。まぁ隣だから当たり前か。
水星の宮は太陽と比べると見劣りした。普通の家4つ分くらいの敷地に建物が建っている。
気になるのは建物がこの街のモノと全く異なる造りな事だ。
何かで読んだ事がある。日本?とかって名前の国の建物の造りに似ている。扉にノブが無い。どうやって開けるんだろう。呼び鈴も見当たらない。イズを見ると横にずらすジェスチャーをしていた。
ジェスチャー通り扉を横にずらすと開いた。異国の扉なんだな。玄関に入ると広間の様な空間があって2段程の階段の様なものがあって部屋に続いている様だった。
「ごめんくだしゃい」
イズが穏やかに声をあげた。
「ごめんくださいッス!」
ジョーは元気に。
「ごめんください」
私は見様見真似で。
応答はない。しかしここからは伺い知れない階段の向こうからは人が動く気配はした。
「ごめんください」
ともう一度言い切るか言い切らないかのタイミングで奥から女の人が出てきた。
神代七は美人しか入れないのかな?キレイな人。日本で言う着物ってヤツだろう。めちゃくちゃはだけてるけど。こういう着方で合ってるのかな?髪の毛にもキラキラの装飾がされている。
ピンクの髪の毛が毛先に進むにつれて赤くなっている。気になるのは白い板の様なモノを背負っている事。
「ハルカさんは日本のお父さんとインテレクトのお母さんとのハーフなんッス。異国との血が混ざるとインテレクトは産まれないとされてるんッスけど、インテレクトでなおかつビサイズなんッス!」
そういえば神代七のムードメーカーって言っていたな。
「ハルカさん。初めまして。ベルといいます。今回はよろしくお願いします」
ハルカさんはニコっと笑ってくれた。
「はじめまして。ベルさん」
優しい声。この見た目、この声でムードメーカーは無敵じゃないの?
ん?白い板を自分の前に持ってきて何かしている。
ハルカさんは白い板をこちらに見せてきた。
【わたしはハルカといいます。これからよろしくお願いしますね。あらかた準備は出来てますから。今日はゆっくり楽しんじゃいましょう!遠足前の子供並に!眠れなくなって本番眠いみたいな?】
筆談ー!!白い板はホワイトボードだったー!ムードメーカーが筆談って聞いた事ないー!!ムードをメークする前に話題変わるでしょ?絶対そうでしょ?
「ハルカ。変わらず元気そうでしゅね。」
「ハルカさん!お久しぶりッス!」
【お元気ですよ!お二人共変わりな】
「ところでハルカ。お腹がしゅいたでしゅ」
「俺もッス!来て早々ですけど何か食べたいッス!」
ほれみろー!話題変わってるじゃない!
ハルカさんは急いで書いていた内容を消して新しく書き始めた。
堂々としたお姉さんみたいな見た目なのにセコセコとホワイトボードでコミュニケーションをとるなんて!なぜ!
「ハルカさんはなぜホワイトボードで?というか最初挨拶してくれてましたよね?」
素直な疑問。そりゃそうでしょ。気になりすぎるもの。
ハルカはしばらくペンを走らせてホワイトボードをベルに向けて来た。
【インテレクトだったり神代七と言えど人間ですから。いつ死ぬかも分かりません。なので挨拶と感謝だけは口で伝える様にしています】
「なるほど。でなぜホワイトボードで?」
【人見知りだからです。カリスマ人見知りのハルカです】
ムードメーカーは伊達ではないみたい。ムードをメークしようという気はあるらしい。
「ハルカ。お腹がしゅいたでしゅって」
【ごめんなさい!すぐ何かご用意を。新鮮な野菜が】
「ハルカさんトイレ借りたいッス!」
また急いでホワイトボードを消し始めた。
かわいい人。変わってるけど。不思議と仲良くなれる気はしていた。
ムードメーカーというかオモチャにされている印象が強いけれど。とにかく神代七が3人揃った。
思い思いに個性的だね。



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