福島正則(ふくしままさのり)と広島のお酒 その3(全3回)

一杯だけお酒を飲みたい。
こう言いますので、それは出来ぬ。この酒は我が主君の福島正則公が遠く江戸で心待ちにされているもの。たとえ一杯といえども主君の酒を勝手に与える訳にはいかぬ。と断りますと、その男は肩を落として立ち去りかけましたのでありますが、どうにも哀れでして名を聞いてみたのでございます。すると、しばらく考え込んでから、宇喜多秀家だ。と答えられたのです。」
宇喜多秀家といえば、正則と同じように豊臣の家来で備前岡山城の城主であった仲間だったんだ。でも、関ヶ原の合戦では石田三成方についたために、負けて岡山城からは出されて、この八丈島に流されてしまっていたんだ。目付は考えたよ。ここに福島正則さまがおられたらなんとするかと。昔同じ豊臣の家来だった仲間だ。友達だ。心優しき主君、正則さまなればと思って、
「待たれよ、宇喜多秀家どの。酒を差し上げる。一杯などとは言わぬ。一樽差し上げる。これはわしからではなく、我が主君福島正則公からの酒だと思って受け取られよ。」
と言ったんだ。
「無くなった一樽は、宇喜多秀家どのにお渡ししたのです。」
目付は話の最後にこう言って膝まづいたよ。
「うーむ、そうだったのか。怒鳴りつけたりして悪かった。お前は正しいことをした。自分は福島正則の家臣だ。宇喜多秀家どのから酒を所望(しょもう)されて、これを断ったとあっては主人の名が廃る(すたる)と考えたに違いない。今回のことは立派であった。褒めてやるぞ。これからも嵐が来なくても、必ず八丈島に立ち寄るが良い。そして、宇喜多どのが望むなら、一樽とは言わぬ、二樽でも三樽でも望む限りの酒を置いてきてくれよ。」
正則はね、目付に頭を下げて謝ると、肩に手を置いてこう言ったんだって。

福島正則ってかっこいいね。明日はきっといいことあるよ。
最後まで読んでくれてありがとう。

じゃぁ、お休みね。ポン!

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