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龍(りゅう)の涙探し(全2回 その2)

朝日が海にキラキラと光っている時だったよ。ぼうやの龍は今の常滑市の大谷の海岸にたどり着いたんだ。陸地とは広い広いところだったよ。遠くに小高い丘が見えたんだ。高砂たかさご山のことだよ。ぼうやの龍はねあの高い山に登ればお空の父さんに会えるって思ったんだね。涙も見つかるって思ったんだね。

そこでぼうやの龍は能面を顔に着けて砂浜へと上がって行ったんだ。すると、すぐにね、能面を着けた顔はカッカと熱くなってきて、しっぽはキリキリと音を立てながらけていったんだ。あまりの痛さで気が遠くなりそうだったよ。

「ぼうや、私のぼうや、涙を見つけたら持ってきてちょうだいね」

波間なみまから母さん龍の声が聞こえてきたんだよ。悲しそうでね、苦しそうな声だったって。ぼうやの龍がいなくなってしまったから、悲しくなって母さん龍も涙が欲しくなったんだね。

しばらくするとね、ぼうやの龍は人間のおじいさんになっていたんだ。足はキリキリと痛くて歩くことができなくてね、浜辺に座って海を見ていたんだよ。

「どうしたんですか?どこぞへお連れいたしましょう」

通りがかった若い漁師さんがこうして声をかけてくれたんだよ。

「ありがとう。あの山の上まで行きたいんですが」
「だいぶお疲れのようですね。あの山へ背負せおっていってあげましょう」

若い漁師さんはそう言うとね、おじいさんになったぼうやの龍を背負って高砂山へと歩いて行ってくれたんだ。

やっと高砂山のてっぺんに着くとね、静かに草の上に座らせてくれたんだよ。そうして、おじいさんの足をなでてくれたんだ。

「去年、今頃です。年老いた父をくしましてね、父も足を悪くしていました」

若い漁師さんはそう言って目から涙をホトホトとおじいさんの足の上へと落としていったんだ。あったかい涙がおじいさんになったぼうやの龍の足の上に落ちていったんだ。
『これが涙なんだ』
ぼうやの龍はね、涙ってものがわかったんだ。ぼうやの龍の目からもホロリホロリとあったかいしずくが落ちていったんだよ。

おじいさんになったぼうやの龍はね、能面をお返しして母さん龍の元へ戻って涙のことを話してあげようと思ったんだね。

この能面はね今でも熊野神社の宝物として伝えられているということなんだよ。

読んでくれてありがとう、ポン!

#伝説 #熊野神社 #高砂山 #常滑市  

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