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きつね憑(つ)き(その3 全3回)

おちよさんはふすまをけやぶってもピョンピョンとおどり回っているんだ。ものすごいパワーさ。
「きつねをいぶしだせ、おちよをしばって青松葉あおまつばでいぶしだせ」
おじいさんのかけ声でおちよさんはおさえつけられて荒縄あらで|縛られたんだ。
お部屋を閉め切って青松葉を燃やしたよ。煙がもうもうと立ち込めていたよ。おちよさんは苦し気にコンコンとせきをしだしたよ。眼ものどもいぶされて痛かったよ。突然におちよさんはね、聞いたこともない男の人の声を出して苦しそうに咳をしながら言い始めたんだ。
「わいは、、、森に住むきつねや。人にとりついてやろうと待ってたらこの女が来たんや。この女の気の中に入ってやったんや。こういぶされてはかなわんわ。この女の体から出てくから縄をといてくれや」
そう言うとコンコンと激しく咳をしだしたんだ。おじいさんは急いでおちよさんの縄をほどいてやったんだんだよ。するとおちよさんは、ぐったりと手足をばしたんだ。そうしたら、長い間眠り続けていたというんだよ。
「ああ、よく寝た。あれ、みなどうしはりました?」
おちよさんは何にも覚えていなかったんだって。ほんとに何にも覚えてはいなかったんだって。
こんな不思議なことってあるもんなんだね。
 
最後まで読んでくれてありがとう、ポン!
 
#伝承 #大阪


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