水鳥の羽音と幻の富士川の合戦 その2(全3回)

ポン!昨日の続きじゃよ。
平氏のリーダー平維盛(たいらのこれもり)ってのはね、清盛(きよもり)の息子で重盛(しげもり)の子供だったからね。維盛はね、このとき23歳の若者でとぉっても美男で、かっこ良かったから、都の女性たちからは一番の人気だったんだって。
維盛軍の東への道案内に、武蔵の国から来ていた、斎藤の別当、実盛(さねもり)という、とても弓がうまい武士がいたんだよ。
「実盛よ、坂東(ばんどう)の武者どもはどんな働きなのじゃ?」
と維盛が実盛に聞いてみた。
「それがし程度の弓の達者はいくらでもおりますぞ。しかも、戦いになりますと、親が打たれようが子が打たれようが、その屍(しかばね)を乗り越えて向かって行きますのですぞ。そりゃあもう、凄まじい猛者(もうじゃ)ですわい。」
これを聞くと、維盛は怖くて震えがとまらなくなってしまったって。屍っていうのはね、死んでしまった人の体の事を言うんだよ。そりゃぁそうだよ。弓も刀のお稽古もしないで美味しいものばかり食べて、歌ったり踊ったりとずっとしてきていたんだからね。
戦う勇気も自信もなかったよ。怖くて怖くてたまらなかったんだよ。この様子を見ていてか、いなくてか、維盛の家来たちが5人抜け、20人抜けして、3万人もいたはずなのに、駿河の国(するがのくに)に来たころには、たったの3千人しか残っていなかったんだって。
「敵は20万人もの兵にございますぅ」
こんな知らせが続々と入ってくるから、維盛たち皆な、まだ見たことのない東の国の猛者と言われた源氏の者たちが怖くてならなかったんだよ。

今日はここまで、続きはまた明日。ポン!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?