平清盛と松王丸 その2(全3回)



そんなことは知らずに生田の森を通った村人たちが次々と牢に放り込まれてしまった。子供もお年寄りもいたって。「お助け下さい。お許しください」牢に閉じ込められた34人
の人たちが大声で泣き叫んでいてね。その声は清盛の館中にずうっと響き渡っていたんだよ。

人柱っていうのはね、昔はね大きな工事、こういう港をつくるとか、お城を作るとか、橋を架けるとか、堤防を作るとか、そういう時に誰もケガをしないように、ちゃんとできあがりますようにと、生きている人間をその場所の土の中に埋めてお祈りをしたんだよ。怖いね。今は人間は埋めないけれど、お家や大きな工事をする前にはみんなでお祈りをする
んだよ。このお家を作るときにも、神社の神主さんに来てもらって土にお酒をまいて、よいお家が出来ますようにってお祈りをしたんだよ。誰のお家でもマンションでもしているよ。

清盛のそばで、その声を聴いていた一人の小姓がいてね。松王丸といって年は17歳。お父さんは四国の香川にいる大井民部というお殿様で、小さい時から清盛に預けられていたんだよ。松王丸は小さい時からずばぬけて賢くて清盛も大変可愛がっていてね。清盛はどんなことがあっても、この大輪田福原の港作りを止めないということを松王丸はよく知っ
ていた。なんでって。大阪の堺に比べて海は深いから大きな船が入れるし、京都や大阪に行く道はできているし、後ろには山があるし前は海だから、敵が来ても守りやすかったしね。松王丸はね、清盛のお傍でいろいろお手伝いをしていたんだけれど、泣き叫ぶ声を聴いていると可哀そうで可哀そうでどうしようもなくなっちゃったの。でね、松王丸はお願
いしちゃったんだって。

今日はここまで。また明日。

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