日蓮上人(にちれんしょうにん)と角(つの)なしサザエ その2(全2回)


新しい名前を日蓮(にちれん)と変えて、船で海を越えて鎌倉に向かっている途中、日蓮上人たちは時化(しけ)にあってしまったんだよ。そして、島にたどりついた。日蓮上人も他の者たちも行先が分からなくなって困っていたんだよ。すると突然、白い猿が現れてね、横須賀へと船を導いてくれたんだ。

今度はね、岸へ船が近づけない。そこで、仲間の一人の漁師はね、日蓮上人を背負って浜に向かって歩いて行ったんだよ。そうさ、ありがたいお坊さまだから、海の潮水で足を濡らさせてはいけないと思ったからね。その海の底には角(つの)があるサザエがいくつもいたのさ。漁師の足はそのサザエの角に刺されて傷だらけになってしまったんだ。日蓮上人はそれを見ると、お経(おきょう)を唱え始めたんだよ。するとね、漁師の足の傷はすぐに治ってしまったんだって。この時、このお経でサザエたちの角もなくなってしまったというんだよ。

このことがあってから、横須賀の海にいるサザエには角がなくなってしまったのさ。おだやかな海も手伝ったのかもしれないね。

横須賀に銘菓、角なしさざえ最中(つのなしさざえもなか)が今でも伝えられているのは、こういうお話があったからなんだね。どんな味のする最中なのかな?そしてね、白い猿が現れた島は今でも猿島と呼ばれているんだって。

これでおしまい。
最後まで読んでくれてありがとう。

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