三途の川 その1(全2回)


今日はね、三途の川(さんずのかわ)に足を入れてみたら、すっごく冷たかったから、この世に帰って来たっていう人のお話しだよ。三途の川ってのは、死んでからあの世に行く途中にあるという川なんだって。でもね、今の世、青森県のむつ市にもある霊場恐山(おそれざん)の宇曽利湖(うそりこ)から流れ出てきている、三途の川っていうのもあるんだけれどね。その三途の川には太鼓橋がかかっていてね、業(ごう)の深い人は橋が糸のように細く見えてしまうんで、渡れないんだってよ。業(ごう)っていうのは、悪い心を持っていることをいうのさ。

ポンと昔。宮城県のおばあちゃまにお聞きしましたよ。
「そうさね、あの時台所でお茶碗を洗っていたら、急にお腹が痛くなって、急いでお手洗いに行ったのよ。しばらく座っていたんだけれど、気持ち悪くなってね。お手洗いで倒れると死んじゃうと聞いていたから、壁に掴まりながら廊下に出たのよ。そしたら、膝の力が抜けてふわりと横になってしまったみたいなの。そしたら、どういう訳だか、家の玄関を出ていて、大通りを通っているの。向こうのお寺さんに行こうと思ってたのね。どうしてって、そう思ってたのね。その日は、ぽっぽこ暖かい日だったから、気持ち良かったんよ。そしたら、どっからか、{戻れ、戻れ、戻れ}って聞いたことのない太い声がするのよ。なんだ、今気持ちよく出かけてきているのに、なんで戻らなきゃなんないのって思いながらも、家へもどることにしたのよ。玄関入ったら、私が倒れているじゃないの。だから、お父ちゃん、お父ちゃんって大声で呼んだんだけど。戸を閉めているから聞こえないのよ。で、やっと聞こえて、何だよっていうからね、足がうんと冷たいからお布団かけてよって頼んだの。そん時ね、足先から膝まで冷たい水みたいのが登ってきたのよ。お父ちゃん、死ぬかもしれないよ。冷たい水が膝まできたよ。ほら、いとこのあれが膝が冷たいって言って、それから、首下げて死んでいったよね。冷たい水が首んとこまで来たら、死んじゃうんだったっけ?ってお父ちゃんに言ったんだよね。冷たい水みたいのが、じんじかじんじか、上がってくるんでね。そんで、ここのあたりのね、胸んとこまで水みたいのが上がってきちゃったから、訳わかんなくなっちゃったのよ。あの時死んだんだね。

今日はここまで。
読んでくれて、ありがとう。
また明日、ポン!

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