龍(りゅう)の涙探し(全2回 その1)
今日はね、愛知県の常滑市の熊野神社に伝わるお話だよ。
ポンと昔の昔。ずっと大昔のことだよ。伊勢の海にお母さん龍とこどもの龍が仲良く住んでいたよ。お月様がとってもキレイな夜のことだったよ。
「父さんはどこにいるの?」
「ぼうやのお父さんはね、この海で300年も生きて立派な龍神様になってお空に昇って行かれたのよ。神様になられたのよ」
「僕に会ってからお空へ行けばよかったのにね。僕、父さんに会ってみたいよ。会いたくてたまらないんだ。どうしたら会いに行けるの?」
ってね。ぼうやの龍はうれしそうに言ったんだよ。
「向こうにチラチラと明かりが見えるでしょう?おじいさまから聞いたのよ。あそこには人間という生き物が住んでいてぼうやのように誰かに苦しいほど会いたくなると目から涙というものを出すのだって。そうするとその苦しいのがなおっていくんだそうよ」
龍たちは涙を知らなかったんだね。龍のぼうやはその涙のことや人間のことなんかを知りたくてたまらなくなってしまったんだ。
「母さん。僕、どんなことも我慢するから人間になってみたいよ。お願いだよ」
母さん龍はね、しばらく考えてからぼうやを連れて海の底の底にある海藻の森へともぐって行ったんだよ。母さん龍は一本の海藻の根元から木でできたひとつの能面を取り出したんだよ。それは人間のおじいさんの顔をしたお面だったんだ。
「ぼうや、おじいさまから聞いたお話ですよ。陸に上がるときにこれをお顔に着けるのですよ。そうするとしっぽがふたつに切り分かれて二本の足になって人間になれるんですってよ。その時はしっぽが切りさかれるようにとっても痛いのですってよ」
母さん龍の話が終わるとね、ぼうやの龍は大きくうなずいたって。
今日はここまで、読んでくれてありがとう。続きは明日のお楽しみ!お休み、ポン!
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