織田信長(おだのぶなが)と蘇鉄(そてつ)の木 その1(全2回)


今日はね、大阪の堺市(さかいし)に伝わる蘇鉄(そてつ)って名前を付けられた庭木のお話しだよ。

ポンと昔、今から450年くらい前の安土桃山(あづちももやま)時代のお話しさ。安土桃山時代というのはね、織田信長と豊臣秀吉(とよとみひでよし)が活躍していた時代のことを言うんだって。安土城(あづちじょう)はね本能寺の変(ほんのうじのへん)という大事件のあと燃やされてしまうんだ。その安土城の跡地にはね、桃の木がたくさん植えられたんだって。そういう訳で安土桃山時代と呼ばれているってことだよ。

織田信長は琵琶湖(びわこ)のほとりにそれはそれは見事なお城を作ったのさ。それも今までの日本では見たこともないような外国風のお城なのさ。それは金ピカでおしゃれな城だった。丘の上に建てられたそのお城はね、安土城と呼ばれていたんだ。6階建てというのだからすごいよね。お城の中もピカピカに磨かれていたし、金ピカの柱や壁があってこの当時日本一の絵師と言われていた狩野永徳(かのうえいとく)の絵もたくさんあったというよ。お庭だってそりゃぁ広いよ。季節の花々がお行儀よく咲き乱れているのさ。

ある日のこと、織田信長は堺の町の妙国寺(みょうこくじ)の前で一本の木を眺めていたんだ。
「これは珍しい木じゃ。この立ち姿がいい。我が安土城の庭に持ってくるのじゃ」
信長はね、すっかりその木を気に入ってしまったんだ。その木はね、堅く太い木だったんだ。幹のてっぺんには枝葉が広く覆い(おおい)茂っているのだけれど、幹の肌には小枝がない。それに一本樹ではなくて、根元から株分けの幹がいくつも増えている。木の根っこも太く隆々と(りゅうりゅうと)大地を掴んでいる。見るからに逞しく(たくましく)雄大でかっこいい木なんだ。これはね、蘇鉄(そてつ)という南国の木だったんだ。蘇鉄は木の化石ともいわれているとっても古い古い大昔からある木なんだって。ジュラ紀の頃からあったというからビックリだよ。ジュラ紀とはそうさ、恐竜がいた時代さ。今から1億5千年まえから2億年くらいも大昔の頃のことさ。この蘇鉄は南国の木だからね、暑さに強いし乾燥にも強いんだ。雨が少々降らなくたって元気でいられるんだ。たくさんの植木職人たちが集められてその蘇鉄の木を掘り返して遠く近江(おうみ)の安土城まで運んでいったんだよ。50キロくらいも離れているから大変だったよね。そして、安土城のお庭に植えられたんだよ。かっこいい木だから安土城にはお似合いだったよね。

今日はここまで。
読んでくれて、ありがとう。
また明日。ポン!

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