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死に人に会える日金山

静岡県の日金山には地獄があるというんだよ。
こんなお話さ。
ポンと昔。
夏がやっと遠ざかって、秋がやってきた。虫たちが鳴いていたよ。お彼岸がやってきたんだ。赤い彼岸花はきれいさ。
昔、昔の江戸時代のこと。
山中新田に、一人の若者がいたよ。
「日金山に参ってくるでよ」
その若者は新しいわらじをおろすと、日金山へ向かって行ったんだ。
「お美代、何で、何で死んだ。祝言もあげずによ」
若者は肩を落として、お嫁さんになるはずだったお美代さんのことを思いだしていたよ。
昔からのいわれさ。日金山にはどこかに地獄があって、伊豆で死んだ者はここへ集ってくるという。
春、秋のお彼岸に、日金山のお地蔵様にお参りをして山に登ると行き来の人の群れの中に、
死んでしまった会いたい人に、巡り合えるという。
そしてそれは、後生の者の生まれ変わりの姿だという。後生ってね、死んだ後に生まれ変わった姿のことをいうんだよ。
去年の村のおまつりの夜のことさ。
初めて会った玉沢の美しい娘と、とても気があった。仲良くなったんだ。
お互い気にいったからね、結婚しようと約束をしたんだ。いろんな準備もして、
まもなく祝言の日がくるという少し前の日に、お美代さんは病気であっという間に死んでしまった。祝言って結婚式のことさ。それからは、ちっとも仕事をする気にもなれなかったんだ。
若者は、日金の地蔵堂にお参りをしたよ。えんま大王やしょうじかばの石造を通って松葉仙人、きしょう仙人、きんち仙人のお墓にもお参りしたよ。
そしていよいよ、日金山に登って行ったんだ。彼岸花の咲く山道は、いつもにもなく、彼岸詣での人で賑わっていたよ。

今日はここまで、読んでくれてありがとう!続きは明日のお楽しみ!お休み、ポン!

#江戸時代 #日金山

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