来年のことを言うと鬼が笑うって? その1(全3回)


今日はね、熊本県に伝わる「来年のことを言うと鬼が笑う」ってことの由来だよ。
ポンと昔々。熊本県の益城(ましき)という所に、福田寺(ふくでんじ)というお寺があったよ。福田寺の和尚さんは村人たちのために石垣の積み方や稲の育て方を教えてくれたり、それにありがたいお話もしてくれたので、和尚さんの所へは、あちこちからたくさんのお坊さんたちが話を聞きに集まってきていたんだ。

ある日のこと、集まってきていたお坊さんの中に、ひときわ体の大きな鬼が一匹紛れ込んでいたんだよ。和尚さんが鬼の前まで行くと、
「わしゃ鬼じゃが、生きているうちに修行していい鬼になりたいのじゃ。弟子にしてくだされ。」
とブスリと言ったんだ。和尚さんは心の広い人だったから、人間のお坊さんたちと同じように分け隔てなく鬼のことも弟子にしてあげたんだ。この鬼の顔はとっても恐ろしかったけれど、お話もよく聞いていたし、皆のためにも働いてくれていたんだ。けれど鬼は体が大きいし、鼾(いびき)も雷のように大きかったから、他のお坊さんたちはうるさくて夜眠れなかったんだよ。そこで、和尚さんは鬼を連れて景色の良い、内寺の上(うちでらのかみ)まで行ってそこに鬼の石の家を作らせたんだ。石の家に雨水も入ってこないようにと家の周りには深い堀も作らせた。おかげで鬼は一人そこで悠々と眠ることができるようになったんだ。これが今でも残っている内寺の上(うちでらのかみ)の「鬼の岩屋」のことさ。

さてその頃、福田寺ではこの益城地方で一番高い上徳(じょうとく)という所にお堂を建てることになった。上徳は山のてっぺんだから、柱一本石一つ運ぶにも坂が急だからそりゃあ大変なことだったよ。大きな柱や石を一つ運び上げるのに、人間のお坊さんなら20人くらいも必要だったんだ。けれど鬼は力が強いから、一人でひょいとかついでは山のてっぺんまで走るようにして何度も運んでくれたんだ。そのおかげで仕事はずんずん捗って(はかどって)いったよ。それを見た和尚さんはとても喜んでお夕食の時にはご馳走を出すことにしたんだ。それは和尚さんも大好きな「そば切りだご汁」だった。

今日はここまで。
読んでくれて、ありがとう。
ポン!

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