那須与一と鏑矢(かぶらや)その1(全2回)


ポンと昔。
昔々のことじゃよ。平安時代の終りころのことじゃなぁ。今の栃木県の那須郡(なすぐん)に伝わるお話じゃよ。

那須与一宗高(なすのよいちむねたか)っちゅう若者はな、弓がとっても上手だったんじゃよ。毎日山に入って狩りをしておったんじゃ。ある日のことじゃ、与一はな、ススキの原でな、大きな蜂が、蜘蛛の巣に引っかかってな、もがいて苦しんでいるのを見つけたんじゃよ。可愛そうに思ってなぁ、弓の端っこを使ってその蜂を助けてやったんじゃ。蜂はな
、よろよろしながらも、与一の周りを3べん回るとな、遠くへ飛んでいったんだと。
そんなことがあって幾日かたった時じゃよ。与一がいつものように山の中で狩りをするんで歩いているとな。どこからともなく、9つくらいの男の童(わらし)が現れてなあ。
「どうぞ、こちらへおいでくだされ。」
と言うんじゃと。与一はな、まぁこんな山奥で不思議なこともあるものよと思いながらも、まぁ行ってみるかと、ついて行ったんじゃと。するとな、大きな大きなお屋敷があったんじゃと。大きな門のところには門番が何人も立っていてな、案内されるままに、その童についてお屋敷の中に入っていったんじゃ。そこらじゅうはなぁ、金銀をちりばめた飾りがキンキラしておったと。そりゃぁそりゃぁびっくりじゃよな。奥の間に通されるとな、そこには烏帽子(えぼし)狩衣(かりぎぬ)を着けた者達が並んでおってなぁ。今度は童に代わって、その者たちがな、金殿(きんでん)へと案内してくれたんじゃと。しばらくするとな、立派な身なりの老人がな、さっきの童を連れて現れたんじゃよ。
「先日は、那須の地で我が息子を危難(きなん)からお救いくださり、ありがとうございます。何とご恩返しをしたらよいか、わかりませぬ。」
と言って、深々と頭を下げたんじゃと。その後にはな、見たこともないようなご馳走が山ほど振舞われたんじゃよ。

今日はここまで、ポン!

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