源頼朝とよもぎ餅 その3(全3回)



おばあさんを乗せた駕籠は鎌倉へと向かっていったのです。
「おばばよ、よく来てくれた。達者であったか。」
高いところから声がしました。おばあさんは、ぶるぶる震えながら頭を床にこすりつけていました。
「おばばよ、わしじゃ。」
その声におそるおそる顔を上げてみますと、ぱっとおばあさんは目を見張りました。
「あっ、蛭ケ小島、、、へえ、将軍様になられましたとは、、、」
おばあさんは、びっくりすりやら喜ぶやら最後にはおいおいと泣き出してしまいました。
あの頃伊豆に流されていた源頼朝は、いつか平家を倒し源氏の世をと毎日三島明神にお参りに出かけていたのでした。この源頼朝が鎌倉に幕府を開いたのでした。
「おばばよ、ヨモギ餅をくれ。」
おばあさんは、持ってきたヨモギ餅を差し出すと頼朝は美味しそうに食べ、
「うまいぞ、おばば。あの頃と同じ味じゃ。おお、そうじゃ。約束通り天下を取ったのでおばばに礼をしようぞ。何なりと申してみよ」
おばあさんは、目に涙をためて言いました。
「もったいないことでございますじゃ。このばばのヨモギの餅を食べてもらっただけでもう嬉しゅうございます。」
「欲のないおばばじゃのう。それでは、おばばのためにひとつ寺をたててやろう」
伊豆の原木にある成願寺(じょうがんじ)はこうして頼朝が餅売りのおばあさんのために建てたお寺だそうです。また、そこにはおばあさんのお墓もあるそうです。
原木(ばらき)といっていた所は荒木(あらき)と変わっているようです。近くにお餅を売っているお店はあるのでしょうか。

これでおしまい、さあおやすみ。

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