鶴姫(つるひめ)と常山城(つねやまじょう)落城 その3(全3回)


鶴姫は、「駆け破れ、ものども!」
と大勢に声高く駆けあうと、鶴姫と34人の女房たちと83人の家僕たちは、毛利の先陣、浦兵部宗勝(うらのひょうぶむねかつ)たち700騎の真っただ中へと切り込んでいったんだ。女たちの叫び声が、そこここであがる。敵の数十人が倒れていく。鶴姫は馬上に目当ての宗勝(むねかつ)を見つけると、
「我と一勝負つかまつらん」
とただ一文字に切りかかった。これを宗勝はかわすと、
「御身(おんみ)は強きにせよ、女なれば相手にできぬ」
といって逃げた。横から切りかかってくる雑兵(ぞうひょう)を薙刀で7、8人薙伏せる(なぎふせる)。鶴姫は浅手(あさで)を負ってしまった。浅手とは怪我をしたことだよ。鶴姫はね、宗勝との勝負を諦めたよ。そして、腰の刀を抜き出して言うには、
「これは父、三村家親(みむらいえちか)の秘蔵の国平(くにひら)が名作よ。これは、そなたに差し上げよう。弔って(とむらって)くだされよ」
と宗勝に言いおくと、さっとお城へと引き返して行ったんだ。見事な引き際(ひきぎわ)に敵は鶴姫の後ろ姿を、惜しいことよ見守っていたよ。

鶴姫はね、お城の中にいた隆徳(たかのり)のもとに戻ると、一瞬隆徳と見つめあった後、二人で南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)を念じたよ。鶴姫は刀の先を口に咥える(くわえる)と、そのまま体をうつ伏せに倒して鮮血の中に33歳の命を絶ったよ。隆徳の父は胸を刺し貫き、妹は自分で胸を刺し、長男15歳は武士の子らしく切腹したところを隆徳が介錯(かいしゃく)したんだ。そして、鶴姫の最後を見届けて、隆徳も死んでいったんだ。こうして常山城は毛利方の手に落ちていったんだよ。

最後まで読んでくれて、ありがとう。
鶴姫は悲劇のヒロインだね。
お休み、ポン!

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