来年のことを言うと鬼が笑うって? その3(全3回)



鬼は痛そうに顔を顰めて(しかめて)いた。けれど食べ続けている。皆びっくりして鬼を見ていたんだ。鬼は3杯目をおかわりして、またガシガシと音を立てながら顔をゆがめて食べていた。鬼は3杯目を食べ終えるとそっとお箸を置いて部屋から出て行ってしまったんだ。皆どうしたかと思っていたんだけれど、自分のそば切りだご汁の中に浮いている竹を見つけると外につまみだしてまた食べ始めた。和尚さんも他のお坊さんたちも、この時は3杯づつお代わりすることが出来た。

ところが、家に帰った鬼は歯が全部折れてしまったんだから、痛くてたまらない。そば切りだごと思って食べたのが竹だったのだからね。谷川の水でうがいをしたり、冷やしたりしていたけれど、痛さのあまり、ワーンワーンと大声で泣いていたんだ。

次の日の朝、和尚さんは鬼のところへ様子を見に行った。鬼の口の中をのぞいてみたら、歯がみな折れている。
「大丈夫だ。来年はもっと丈夫な歯が生えてくるから心配するな。」
「本当じゃろか。来年になったらまた、そば切りだごが食べられるようになるんじゃろうか」
と今まで一度も笑ったことのない鬼が笑いながらこう言って喜んだった。このことを聞いて村人やお坊さんたちは鬼に会うと、
「来年はいいね。そば切りだご汁を食べられるようになるんだから。来年はいいね。」と言ってあげたんだって。鬼は来年のことを言われると、またあのそば切りだご汁が食べられるかと思ってニッコリと笑ったんだって。こんな事があって、「来年の事を言うと鬼が笑う」と言うようになったんだね。

皆のために頑張ってくれた鬼なのに和尚さんもお坊さんたちも酷い(ひどい)ことをするよ。鬼は可哀そうだよね。泣いちゃったよ、ぼく。

最後まで読んでくれて、ありがとうね。
じゃぁ、お休み。ポン。

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