吉祥寺サバイバル Ⅰ 誘導期(lag phase)   Ⅰ-1 ふたご座流星群 20XX年12月

 20XX年12月、例年通りにふたご座流星群を世界各国で観測することができた。ふたご座α星(カストル)付近を放射点として地球に降り注ぐ流星群である。母天体は小惑星ファエトンと分かっている。元々は彗星だったが、揮発成分を放出しつくしてしまった小惑星である。以前に放出したチリが地球の軌道と交差する軌道を巡っており、これが流星群となっている。

ふたご座流星群

 この年も流星をたくさん観察することができた。「1つの流星が輝いている間に願い事を3回唱えると、その願いが叶う」といわれている。数秒以内にこれを行うのは難しい。それでも、流れ星を観ながら、人々は多くの事柄を祈ったに違いない。通常は身近なものが多かっただろう。自分や家族の健康、職場の出世、宝くじの当選といったところである。中には世界平和といった大きな願いもあったかもしれない。なにせ、人間は大昔から戦争を繰り返してきたのである。

 天にまします神はこれらをどう感じたのだろう。普段は自分のことしか考えず、神のことなど頭の片隅にも存在しないのである。少数の信心深いものの願いはかなえてやろうと考えても不思議ではない。特に病気からの快復などである。また、世界平和といった崇高な願いについては検討したことに違いない。

 通常、流星群は光るだけで、地上まで落下することはない。ところが、この年のふたご座流星群では盛りを過ぎたころに地上まで届く隕石を伴っていた。地球から離れたところで分裂したため、世界各地に落下してきたのである。小惑星ファエトン由来かどうかは不明である。

 一言に隕石といっても多様である。隕石は3つのタイプに大別できる。鉄隕石 (iron meteorite)、石鉄隕石 (stony-iron meteorite) 、石質隕石(stone meteorite)である。鉄隕石は主に金属鉄(Fe-Ni合金)から成る。分化した天体の金属核に由来する。石鉄隕石はほぼ等量の金属鉄とケイ酸塩鉱物から成る。分化した天体のマントルに由来する。

 石鉄隕石はパラサイト (pallasite) とメソシデライト (mesosiderite) に2分される。前者は石鉄隕石のうち岩石質部分の大部分が橄欖石で出来た種類をいう。後者はニッケルと鉄の金属成分と珪化物がほぼ同量からなる。

石質隕石は主にケイ酸塩鉱物から成る隕石である。球粒状構造のコンドルール (chondrule) があるコンドライト (chondrite) と含まないエイコンドライト (achondrite) に2分できる。

 隕石は由来により、小惑星隕石、月隕石、火星隕石が存在する。量的には小惑星に由来する隕石が多い。日本で隕石と認定されたものは50個ほどであるが、南極でたくさん採取されている。

流星刀

 上記中の鉄隕石は優良な鉄として使用できる。そうであれば、これを用いて鉄器を作ることが可能だ。鋤や鍬などの農具に加工されたものもあるが、もっと意味のある使い方がある。洋の東西を問わず作られてきたのが刀である。隕石は流星とも呼ばれるが、それから作った「流星刀(りゅうせいとう)」である。神秘的であり、いかにも強そうではないか。

 いくつか例を挙げておこう。1793年、南アフリカで発見された喜望峰隕鉄から作られ、ロシア皇帝アレクサンドル1世に贈られたものが存在する。日本ではこの刀に影響を受けて作られた流星刀が富山市科学博物館に展示されている。

 改めて覚えておいてほしい。落ちてきた隕石は神から送られてきたものだったかもしれない。

細菌増殖曲線

 本シリーズは隔週火曜日に連載予定である。
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