見出し画像

9 皮膚&肌:肌が合って、肌を許す

 皮膚(ひふ)は動物の体の表面をおおっている層のことで、器官のひとつになる。体の内外を区切り、その境をなす。また、動物によっては、皮膚感覚を伝える感覚器の働きも持っている。ヒトの皮膚は肌(はだ)とも呼ばれる。毛、爪、羽毛、鱗など、皮膚に付随する器官をあわせて、外皮系としてまとめて扱う場合がある。

皮膚構造

 ヒトを含む高等脊椎動物における皮膚の構造は上から「表皮」、その下にある結合組織系の「真皮」、さらに「皮下組織」と続いている。真皮には、汗を出す「エクリン汗腺」、「毛根」が存在し、後者には「皮脂腺」が付随する(図1)。ヒト表皮の最も下の「基底層」で新しい細胞が作られる。これが徐々に表面に向けて押し上げられ、2週間で一番外側の「角質層」になる。これが垢やフケとなり少しずつはがれ落ちる。これに約2週間かかるので、新生細胞は合計約4週間で一生を終える。

 ヒトの皮膚は体重の6.3~6.9%を占め約9kgになる。面積は約1.6平方m(畳1畳分)であり、身体の中で最も大きい器官である。表皮は0.06~0.2mm、真皮は2.0~2.2mmだが、掌や足の裏など場所によって異なる。組成は水分約57.7%、タンパク質約27.3%、脂質約14.2%、灰分約0.6%である。


皮膚センサー

 ヒトの皮膚はセンサーの役割も担っている。感覚を知る器官としては、部分的な圧力を検知するメルケル細胞が表皮の基底部に存在する。触覚刺激を感知するマイスナー小体が真皮の上方にある。さらに、引っ張りなど皮膚の変形を感知するルフィニ終末が真皮下層の小胞内にある。また、高い感度で最初に接触を感じるパチニ小体が真皮の下層や皮下組織にある。

 皮膚と微生物の関係についても触れておかねばならない。通常、皮膚の常在菌は10種類程度存在する。多くはヒトに無害な非病原性の菌である。代表例として、表皮ブドウ球菌、アクネ菌、カビや酵母などの真菌類が挙げられる。

ブドウ球菌

 表皮ブドウ球菌が適切に生育している皮膚はしっとりしている。当該菌の餌となる汗や皮脂の分泌が良好な場合、順調に生育することができ、産生物質もまた皮膚を守ってくれる。しかし、ニキビといったトラブルが生じることがある。普段は無害なアクネ菌が毛包部で増殖し、炎症を起こすことがある。また、カビの仲間の水虫菌が水主を生じることがある。ウイルスによる水イボやヘルペスができることもある。これらは免疫力が低下した時に生ずることが多い。

 皮膚が傷ついた時、化膿することがある。これは黄色ブドウ球菌や化膿性連鎖球菌による。前者は食中毒の原因菌であるため、そのような手で食品に関わってはいけない。黄色ブドウ球菌が食品中で一定レベルに達するとエンテロトキシンという耐熱性毒素を生産する。雪印集団食中毒事件(1955、2000年)は本菌により起きている。1955年の反省を社是にのせていたが、「もういいだろう」と外した後(2000年)にまたやってしまったのである。「わたしは寝ていないんだよ!!」という石川社長の言葉は世間の顰蹙を買ってしまった。

 最後に皮膚と肌に関する慣用句と熟語を挙げておくが、ずいぶん少なかった。筆者が理解できなかった項目に意味を添えておく。
*慣用句
片肌脱ぐ        鳥肌が立つ      肌に栗を生ず
肌が合う        肌で感じる      肌身賭さす
肌を許す        一肌脱ぐ       諸肌を脱ぐ

*熟語
銘肌謬骨(めいきるこつ)心にしっかりと刻み込み、決して忘れることがないこと
肌肉玉雪(きにくぎょくせつ)白く美しい女性の肌を言い表す言葉
氷肌玉骨(ひょうきぎょっこつ)容姿の美しい女性のことまたは、梅の花の異称
*食品なんでも相談所 横山技術士事務所
*3頁目 発酵食品もの知り講座
*4頁目 大豆総合研究所
*中国ひとり歩記録 目次 中国ひとり歩記
*吉祥寺サバイバル 目次 吉祥寺サバイバル
*働くヒト器官 目次 働くヒト器官

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?