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スーパーシティ法 AI、先端都市構想実現へ

 人工知能(AI)などの技術を活用した先端都市「スーパーシティ」の構想実現に向けた改正国家戦略特区法が参院本会議で可決、成立した。

 全国で5カ所程度の地域を特区に指定する方針で、秋までに募集を開始し年内の決定を目指す。計画を具体化し、実現するのは2022年以降になる見込みだ。

 複数の分野にまたがる規制を一括して緩和することで、自動車の自動運転やドローン配送、キャッシュレス決済、オンライン診療などのサービスを同時に利用できる暮らしの実現を目指す。それぞれのサービスを連携させて利便性を高めるためのデータ基盤を構築する。

スーパーシティ法が成立 まちづくりに最先端技術活用

 複数の分野にわたる規制改革を一括して行えるよう、まちづくりに関する手続きを定めた。人口減少や少子高齢化といった課題を、最先端技術を生かして解決するのが狙い。

 スーパーシティでは、行政や企業などが持つさまざまなデータを分野横断的に収集・整理する「データ連携基盤」を整備し、車の自動運転やキャッシュレス決済、遠隔医療などのサービスを提供する。

 今後選定される自治体が、国や事業者と「区域会議」を設けて事業計画を策定し、住民の合意を得た上で国に申請。関係省庁の検討を経て迅速な実現につなげる。 

 一部Twitter上では、反対意見も見られるこの法律ですが一体どんな内容なのでしょうか。採決に先立って3議員が述べた法案への賛成・反対意見(討論)をもとに、意義や懸念点をみていきます。

 AIやビッグデータを活用して最先端都市を実現

 内閣府「国家戦略特区」のサイトによると、スーパーシティ構想の背景として世界各国でAIやビッグデータを活用して社会のあり方を根本から変えるような都市設計を目指す動きがあるといいます。

 そのなかで、

(1)生活を支える複数のサービスが導入されている

(2)複数のサービスがデータ連携を通じて相乗効果を発揮している

(3)その成果が住民に評価されるような事業になっている

 3条件を満たすような都市づくりは、まだ世界でも見られないとして国家戦略特区制度を活用する形で「日本型スーパーシティ」を実現しようという動きが浮上しました。

 スーパーシティ構想の核となるのが「複数のサービスのデータ連携」だとしています。「データ連携基盤」整備事業と呼ばれるものです。

 こうした国や自治体が持つ行政・住民データや企業が保有するデータなど膨大な個人情報を含むデータが一元的に管理される代わりに、医療や交通、金融などの各種サービスが提供されることに対し、「最先端の技術を活用して快適な生活を送ることにだれも異論はないだろうが、その代わりに自由とプライバシーを差し出すことはできない。と懸念する見方もあります。

快適な生活の代わりに自由とプライバシー差し出せない。

 スーパーシティ構想では、「データ連携基盤」整備事業により、国・自治体の持つ行政・住民データ、企業保有データ、さらには空間座標などの地域データなど、膨大な個人情報を含む広範囲なデータが収集整理され、活用されて最先端のサービスが提供され、理想の未来社会を追求するとしているが問題は、本人の同意なしに目的外使用や第三者への提供が可能になる場合があること。

 もっとも重要な住民の合意形成が具体的にどのように図られるか、法案には明記されていない。最先端の技術を活用して快適な生活を送ることに、だれも異論はないだろうが、その代わりに自由とプライバシーを差し出すことはできない。

 少なくとも米国の巨大IT企業が参入した場合には、協定によりローカライゼーションを主張することはできないのではないか。また竹中会長は最先端の技術を持つ海外の事業者を想定している趣旨の発言をしており、北村大臣も国内事業者に限らないとしている。

 日本はこの変化に対応できるのか。我が国に求められているのは、大胆な規制改革をスピード感を持って行うことだ。

 その上で、国家戦略特区制度は重要な役割を担っている。今回の法改正はこの規制改革を促進する。

 国家戦略特区制度は、自治体や事業者が創意工夫を生かした取り組みを行う上で障害となっている岩盤規制について、規制の特例措置の整備や関連諸制度の改革を総合的かつ集中的に実施するもの。

 今回の法改正では、国家戦略特区制度を進化させキャッシュレス化、行政手続きワンスオンリー化、遠隔医療、自動走行など、複数の規制改革を同時一体、包括的に進めることで地域課題の解決を図るスーパーシティ構想の実現に向けた制度整備を行うものとする。

 改革の起爆剤として期待し、賛成するが以下、懸念される点について述べる。

 スーパーシティにおける区域の選定が、透明かつ公正なプロセスを踏まなければならないことは当然だが、区域会議に参加する事業者の選定についての外形的公正性をどう担保するかは重要である。

 IRでは、大阪方式と呼ばれる非常に厳しい事業者との接触ルールが設けられている。特区とIRではエリアの選定と事業者の公募選定の順番が異なるが、前向きに厳しいルールを設定し、透明性、公平性、公正性を確保すべきだ。

 ビッグデータの活用が進む現代では、イノベーションを促進する観点から個人情報を保護しつつ適正に活用することが重要である。スーパーシティ構想においては、こうした個人情報の保護と活用に十分に配慮し地域課題の解決に抜本的に取り組んでもらいたい。

個人情報を一元的に管理で「恐るべき監視社会」出現

 反対する最大の理由は、日本を中国のような監視社会に導き、個人のプライバシーと権利を侵害する重大な危険性があるからだ。

 現在オンラインショッピングなど、個別のサービスで個人が自分の情報を提供しサービスを受けることは日常に行われている。しかし各サービスの間で、勝手に個人情報が交換されるということはない。

 ところがスーパーシティ構想は、企業などの実施主体が住民のさまざまな個人情報を一元的に管理し、代わりに医療、交通、金融の各種サービスを丸ごと提供しようとするもの。

 街中に設置された監視センサーによる顔認証やスマートフォンの位置情報によって、住民の行動を実施主体が掌握する。さらに個人情報や行動軌跡は、ビッグデータに集積され、AI=人工知能によって、分析=プロファイリング、個人の特徴を識別する。実施主体がその個人の情報だけではなく、特性や人格まで推定することが可能となる。

 最先端のIT技術を活用した便利で快適な暮らしは国民の多くが望むものだが、個人情報を一元的に管理されると恐るべき監視社会が出現する。

 政府がスーパーシティ構想のお手本にしたのが中国の杭州市だ。杭州市はIT大手企業のアリババの本拠地で、街全体のIT化が世界で一番進んでいるが、裏を返せば、街中に監視カメラが数千台もあるなど監視社会の最先端を走っている。

 科学技術というものは、どんな社会を目指すのかという哲学やビジョンによって方向性と中身が決まる。中国のような民主化を弾圧するような国が整えてきた監視技術を日本が見習い、後追いするべきではないと思う。

いってらっしゃい!


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