アトランタートラップシーンの過去と現在、そして人間力


HIPHOPDNA.JPにて、世紀の対決 Jeezy とGucci Maneの解説をしました。

この二人の歴史は、アトランタトラップシーンの歴史そのもの。過去が現在につながる壮大な大河ドラマのよう。



 とうとう9月下旬、ドラマ「Black Mafia Family」が解禁!そう、これは、上記にも解説したギャング、Black Mafia Family の伝記的ドラマで、なんと50セントがプロデュース。そして、今年に入って、Snoop Dogの追加キャスティングも発表され、期待値は上がるばかり。現在、お勤め中のボスBig Meech は、本人生写しの実の息子が演じる。

 50セント、このVerzuz対決を見て「Jeezyは、自分のアルバムセールスに必死なだけ」と言及。Big Meech が出所すれば、Jeezyとの対立は避けられないという、メディア一般論を考慮すれば、50セントがJeezyをディスるのは納得だ。ただ、BMFのメンバーに、実際に話を聞くと、Jeezyとの関係は良好だと言い切る。ボスが逮捕されたとはいえ、いまだにBMFのメンバーは多い。よって、あくまで個人的見解かも知れないし、牽制された可能性も否めないが。

 一方で、ルイジアナ州、バートンルージュのキング、Lil Boosieは「Verzuz前に一度、二人で話し合いを持つべきやったな。でもJeezyは、男や」とJeezyを擁護。そして、Jeezy派のイメージが強いRick Ross。当然、Verzuz会場では、Jeezy側につくも、この方、実は、Gucci Maneと家族ぐるみの付き合い。今年、7月に行われたアトランタ最大のコンサート、バースデーバッシュには、GucciがRick Rossをステージに呼び込み、ハイライトを演出。対立する二人の間で、中立を守り、どちらとも親しい関係を長年維持できるボスの人間力に頭が下がる。

 中立を守るといえば、アトランタで主にZone 6のアーティストを束ねるジェイダ、彼女の人間力も相当なものだ。ヤンサグや21など、今、最も勢いのあるラッパー達が、皆、彼女を雇い、慕う。私が、彼女に初めて会ったのは、もう13年も前になる。当時、彼女のメインのクライアントは、Jeezyだった。その関係から、Jeezyを見いだした右腕Kinky B (Gucciの楽曲でも、Jeezy が恩人を追い出したとディスしているー解説記事ご参照ください)を自身のポッドキャストに呼び、Verzuzの感想を聞いていた。ちなみにKinky Bは、Gucciとのビーフ勃発前後に、Jeezyの元を離れる決心をする。入ってきた金は全部Jeezyがどこかに移し、分け前をもらえなかったそうだ。以降、音楽ビジネスからは身をひき、LAで過ごしている。Kinky B曰く、「この対戦は、見ていないけど、この一件でJeezyはストリートからの信用をなくした」。ストリート(ギャング)目線からすると、ごもっとも。「アルバムを売りたいんやったら、俺を戻すことやな」と冗談半分のところ、ジェイダが切り込む。「Jeezyから、直接、電話あったんちゃうの?」。「あったよ、でも奴の態度、気に入らなかった。いきなり電話してきて、”お前が俺と喋りたがってるって誰かから聞いたから電話した”って言うんだ。なんだ、それ、だろ??」。間髪入れず、ジェイダは「それは、Jeezyの男のプライドってもんよ、Jeezy、天秤座やろ、天秤座はきっついって。それは、あんたもよく知ってるやん」。この見事な返しに、思わず、感嘆の声が漏れた。2人をよく知るジェイダ、どちらの見方につくわけでもなく、どちらを批判するわけでもない。Kinky Bも「まあな」としか言えなかった。

 そもそも、ヒップホップとはコミュニティーそのもので、人間力が勝るものが、いつの時代も活躍し、生き残れる。トラップシーンにおいても、例外でなく、人間力は必要不可欠だということを教えてくれる。LOVE & RESPECT!


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