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クラレ#7:中学2年生へ進級。「普通になりたい」

クラレは中学2年生になった。
イケメン講師のいる個別指導塾も1年生の3学期が終わる前に辞めてしまい、相変わらず勉強は全くしないので塾の効果も皆無だった。

学年が上がり、担任の先生が変わることで、1年生の時よりもクラレが心を開ける先生にあたるんじゃないかと期待していたが、2年生の担任についての評価も「最悪。1年の時より悪い。キモイ。嫌い。」だった。

そもそも学校に好きな先生が居ないので、しょうがないのだが、新しく赴任してくる先生に期待していたものの、クラレが好きになりそうな先生は来なかった。

唯一、クラレが学校で過ごす中でマシだと思える時間に「吹奏楽部の活動」があったが、同じ楽器(ユーフォニアム)を教えてもらっている先輩以外とは交友関係も深まっていない様子で、「部活動」は授業よりはマシなだけで、そこまで打ち込めるものでもなさそうだった。

1日の生活の中でクラレの一番好きな時間は「スマホでオープンチャットに入り、自分の好きなキャラクターになりきって、本当の自分を知らない人同士でやりとりすること」だった。

そのオープンチャットの中でなら、クラレは誰に気遣うこともなく、思うままに自由に話したり、ケンカもしたりできると言っていた。

▼スマホ使用制限の新ルール

中学2年生にあがる前に、スマホの使用制限についてもクラレと話し合い、新しいルールを設けていた。

定期テストの点数での制限は、クラレには無意味であることが分かったので撤廃した。
その代わりに新しく設けたスマホルールでは

●学校に朝から行けた日は、次の日の朝まで無制限
●昼までに学校に行けば、夜23時まで使用可能
●6時間目までに学校に行けば、21時まで使用可能
●学校を休んだら、次の日以降に登校するまで使用禁止(ただし自分で学校に休みの連絡を入れれば1日1時間は使用可能)

スマホルールの変更は、クラレにとって「ネットの世界」が居心地のいい場所であるならば、人同士のコミュニケーションがとれる場所として、繋がれていた方がいいのではいか?と思ったからだった。

ただ、ネットの世界だけで生きていくことはできないので、やはり現実社会(学校)との繋がりは無くしてはいけないとも思っていた。
だから、少しでいいから学校には行ってもらうためのルールだった。

以前のルールでは、定期テストで平均点以上取らなければスマホ使用時間を延ばすこができなかったが、クラレは勉強するどころか、どうにかズルをしてスマホを使えるようにすることばかりを考える結果となり、お互いにストレスが積み重なるだけだった。

なので学校を休みさえしなければスマホを数時間は使えるようにルールを変えることにした。
他にも、学校は休むけれど夕食を作るなど、家の仕事をした場合もスマホが使えるなど、いろいろと試行錯誤をしてみた。

クラレもこれらのルールには納得してくれ、2年生に進級する前の春休みから新しいルールで始めていた。

このルールにしてから、クラレは6時間目の終了10分前に登校することもあるが、それでも自分で学校に行こうとしてくれるようにはなった。

どうしても行けない時は、学校を休むこともあったが、そんな日はちゃんと自分で学校に電話したり、スマホは使わないでテレビを見たり、絵を描いたりして過ごすようになった。

2年生になってからは、そんな日々が続いていた。

▼「普通になりたい。病院に行きたい。」

2年生の6月の朝。
クラレはまた布団に寝たまま貝のように固まって動かなかった。
目は覚めていて、意識はあるようだが、視線がどこを見ているか分からない。
声をかけてもしゃべらないし、何をしても反応がない。
定期的にクラレはこのような状態になる。

そんな時は、しばらくしてから紙と鉛筆を渡して、筆談形式で話をする。
紙に文字で思っていることを書いていくうちに、少しずつ声もでるようになってくる。

そしてクラレがポツリと話した。

「普通になりたい・・・
普通に学校に行って、みんながやってる様にしたい・・・」

そんなことを言ったのは、この時が初めてだった。

そして、こうも言った。

「病院に行ってみたい」

思わぬ言葉が出たことに、驚いた。
この「病院」というのは、いわゆるいつも行っているような「小児科」的な病院のことではないだろう。

不登校や精神面に問題を抱えている子ども達が行く病院のことだと思った。

でも、そういった病院のことを、この時点の私はまだなにも調べていなく、クラレが病院にかかるべきなのかも分からなくて焦ってしまった。

ただ、クラレが病院に行くことを望んでいるのであれば、行くべきなのだろうと思ったし、現状を変えるチャンスになるのではないか、とも思った。

「ごめん。クラレが行きたいような病院のこと、ママ、よく知らないから、これから調べるわ。すぐには行けないかもしれないけど、病院を探して予約するから、待ってて。」

「・・・うん」

こうしてクラレは児童精神科の思春期外来へと繋がることになる。

クラレ編 ⑧ に続く

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