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クラレ#3:相談「学校に居場所を… 」

中学校入学後から先生とうまく関係を築けず、徐々に「学校」へ行くこと自体がストレスになっていったクラレ。

それでも1学期はなんとか登校できていたが、2学期になると登校前に腹痛を訴え遅刻する日が増えていった。
総合病院を受診した結果『過敏性腸症候群』と診断された。

小学校時代は友達は居なくても、担任の先生やいろんな先生がクラレと繋がりを持ってくれていたことで、クラレは安心して学校に行けていたと思う。

その繋がりが中学校では築けていない。
小学校とは全く違う怖い雰囲気の中学校の先生に対してクラレは心を開けないでいた。

その結果、学校内で安心できる居場所を見つけることができず不安になり、その不安が「腹痛」という形で身体にまで影響してきているようだった。

もう一つ、クラレにとって中学校や中学校の先生に対して拒否感を持つ理由があった。

クラレが腹痛を訴え遅刻が増えてきた頃にクラレから学校の様子を聞いた時の話だ。

「英語と国語の授業がホンマに嫌やねん。いっつも最後まで残るし。」

中学校の授業では、授業内で生徒同士でディスカッションを積極的に行うよう先生から指示があるらしく、特に英語と国語では毎回やることが決まっていたそうだ。

英語では、クラス全員が席を立って二人組になって英語のフレーズをお互いに言い合い、3回繰り返したら着席できる。
クラレは二人組になる時点で相手を見つけることができず、毎回最後に一人残っているところを先生が気付いて先生とやることになるそうだ。

国語では自分の席の周囲で班を作り、グループでのディスカッションを行うが、一人ずつ意見を言わないといけないのに、クラレはなかなか自分の意見を言うことができず、ディスカッションが進まないことでクラレの班はいつまでも終わらない状態になってしまうらしい。

そういったことも学校へ足が向かない大きな理由になっているようだった。

学校の中にクラレにとって安心できる居場所が必要だと思った。
どこかに一つでも、一人でも、クラレが安心できる先生や居場所があれば学校に行けるんじゃないかと思った。

そのことをまずは学校に相談しなければと考え、担任の先生に連絡を取ることにした。

担任の先生も最近遅刻の多いクラレのことは気にしてくれていたので、すぐに対応してくれて面談してくれることになった。

面談の際に相談したのは
●中学校の先生が怖いと言っていること
●小学校の先生が大好きだったので、中学校の先生と比べてしまい現状を受け入れれていない状態であること
●学校生活において、友達よりも先生との繋がりの方がクラレにとっては重要であること
●英語と国語の授業の中でも困っていることがあること
●登校前の腹痛がストレスによる『過敏性腸症候群』と診断されたこと
●クラレにとって安心できる居場所、心を開ける先生が学校の中に必要なこと

という内容で、先生はしっかりと受け止めてくれた。
授業での困りごとについては、教科の先生と相談して対応を考えてくれると約束してくれた。

あとその面談の中で、先生から『スクールカウンセラー』の提案が出た。
週に1回、専門の心理士が学校に訪問して個別にカウンセリングを行うシステムがあるそうだ。

学校の先生は怖いと言っているクラレだが、もしかしたらこの『スクールカウンセラー』は受け入れれるかもしれない。
週に1回でも、安心して話せる人と場所ができれば、他の先生に対しても心を開くきっかけになるかもしれない。

そう思えたので、その場で『スクールカウンセラー』に繋げてもらえるよう先生にお願いした。

 ▼スクールカウンセラー初面談

中学校の先生に相談した翌週、さっそくスクールカウンセラーとの初面談の日がやってきた。

クラレと一緒に私も面談に参加することになったので、4時間目の授業の時間に校内にある「カウンセリング室」に向かった。

クラレは嫌いな英語の授業を堂々とサボれることを喜んでいて、この日は朝から学校に行けていた。

私がカウンセリング室に行くと、既にクラレが部屋の前で待っていた。
二人で一緒にカウンセリング室のドアをノックする。

「はい。どうぞ」

穏やかな男性の声がした。
二人で部屋の中に入る。

30代後半くらいの男性が立っていた。
とても優しそうで安心感のある雰囲気の人だ。

簡単にあいさつをして、向かい合ってソファーに座り、カウンセリングが始まった。

カウンセリングといっても普段の様子や、今困っていることを私が一方的に話すだけで、カウンセラーの先生はおだやかに話を聞いているだけだ。

「なるほど」
「それで?」
「クラレさんはお母さんの話を聞いてどう感じますか?」

など、相づちやクラレへ話を即すことは言ってくれるけれど、カウンセラーとして話しをすることは一切無い。

もっと何かアドバイス的なことがあるのかと思っていたが、特にそのようなこともなく、あっという間にカウンセリングの時間は終了した。

自分の想像していた「カウンセリング」とは様子が違っていたので、ちょっとモヤモヤしてしまったが「初回だからかな?」とも思い、次の週のカウンセリングの予約をとってもらうことにした。

結局クラレは一言もしゃべらなかったが、終わってから話を聞いてみると

「けっこうイケメンやったな。またカウンセリングしたい。」

意外にも好印象で、中学に入って初めての「イケメン」認定だった。

その後、クラレの朝の腹痛と遅刻は続いていたが、毎週1時間のスクールカウンセリングの日だけは朝から学校へ行けていた。

最初はカウンセリングで全くしゃべらなかったクラレだが、徐々に自分からも話すようになっていった。

カウンセリングの内容自体は最初から一貫して「こちらが一方的に話してカウンセラーは相づちのみの聞き専」だったが、それでもクラレが安心して話せる場所になるのだったらそれで充分だった。

このカウンセリングの時間がクラレの学校での居場所になるかもしれない。
そう思っていた。

クラレ編 ④ に続く

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