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旅の総括/バルト三国でTinder社会調査

旅の総括


ミンスクの旅行記を書いてからというもの、「こんなことを書こうかなあ」と各国で考えてはいたもののなかなか筆が進まず、100文字くらいしか書いてない下書きがただ増えただけだった。それならばツイートすればいいだけの話だなあなんて思いつつも、気が向いたら最後まで書くかもしれないし、例によってただ下書きの肥やしになっていくかもしれない。

ビザ取得の目処が立ったので、ペテルブルク行きのバスチケットを買ったところ、この旅ももう終わりなのだという実感がやっと湧いてきたので、軽く総括をしようと思う。きっと人生のうちでこんなにもいい加減に1ヶ月も放浪するなんてことはまたとないと思うので…というかそうであってほしい。私は旅人には向いていない。

まず訪れた都市は、ミンスク(ベラルーシ)、ヴィリニュス、カウナス(リトアニア)、リガ(ラトビア)、タリン(エストニア)、ヘルシンキ(フィンランド)の5カ国6都市。周りからはブレストやらタルトゥやら、「せっかくならここも行きなよ!」とたくさんのオススメを頂いたのだが、ものぐさが祟った結果こんなもんになった。移動手段や宿の確保といった細かくて間違えてはならない作業は、ADHDテストに途中で飽きて最後まで回答できずに終わった私にはかなりストレスのかかるものなので、極力最低限に抑えたいのだ。それだけでなく、やれスーツケースをどこに預けるとか、その町ごとのローカルルール(公共交通機関のチケットの買い方など)とか、行き先が増えると考えなくてはならないことが増えるので、まあこんなもんでしょう、というのが正直なところ。

話を戻そう。
複数都市を回るとどうしても「どこが一番良かったか」というのが定番の話題だが「一番良い」 の「良い」ってなんぞやと、どうしても思ってしまう。「ロシアで最も優れた作曲家は?」みたいな質問なわけで、そんなの答えられない、みんな違ってみんないい。
「どこに一番住みたいか」のほうがまだ決めやすいだろう、というわけで、もしペテルブルクに住めなくなったらどこに引っ越そうかなランキングを考えた。仕事があるかとか、言葉が通じるかとかは一旦無視することとする。

1位 タリン

なんちゃら門

なんとなくピンとくる、というのが正直なところなのだが、多分それを突き詰めると「寒いから」とかなのかもしれない。ひんやり感がとても気持ちが良かった。バルト三国の都市の旧市街は(もちろん少しずつ違っているけど)わりかし似たような印象を受ける。煉瓦造りの要塞、石畳、カラフルなパステルカラーのお家。特にリガとは同じ港湾都市で歴史的にもハンザ同盟の都市という点で似通ってはいるのだが、私はリガより断然タリン派だった。理由は謎。タリンのほうが坂が多いから、ワクワク感が強いのかもしれない(と言いつつも、街を歩いていたときは「坂がなければ完璧なんだけどなあ」なんて考えていた)。とにかくなんか雰囲気。

さらにタリンは、18世紀初頭にはロシア帝国の支配下に入った歴史があり、ピョートル大帝が建てた宮殿がある。これはもう完全にロマノフ家趣味丸出しといった感じだ。そのままペテルブルクのどこか運河沿いにでも持っていっても全く違和感がない。

初めてきたのにめちゃくちゃ既視感

宮殿内は現在外国の美術作品を展示する美術館として使用されており、イタリアやオランダ美術、そしてもちろんロシア美術が展示されている。エカテリーナ2世の肖像画に始まり、シーシキン、レーピン、アイヴァゾフスキーなど19世紀ロシアの画家たちの作品があるので、これまたペテルブルク感を強く感じた。


この内装の「ぽさ」と言ったらない
窓から見える紅葉がきれいなのでお気に入りの写真

宮殿の周りの庭園もなかなかにペテルブルクみが溢れているので、ペテルブルクが恋しくなったらここに来ればいい、というのもひとつプラスポイント。

さらに(これはタリンに限った話ではなくリガもヘルシンキもそうだが)、海が近い。人生が嫌になったら海風に当たりに行けば8割位のことは解決する。多分。解決しなければ船に乗ってみよう、そしたら多分なんとかなる。

タリン―ヘルシンキ間の主な移動手段は船らしい

2位 ヴィリニュス 


リトアニアは結構お気に入りの国になった。今回訪れた国の中で街中にウクライナ国旗が最も多かったのはリトアニアだった気がするし、結構過激なポスターなんかも見かけた(あくまで体感として)(もちろんウクライナが近いので避難してきた方が多いせいもあるだろう)。バルト三国の中ではリトアニアが1番ロシアと仲が悪いという話はよく聞くし、なんとなく納得した。

ヴィリニュスで一番気に入ったことは、教会が多いことだ。リトアニアはカトリックの信者の割合が最も高いということを高校の地理で呪文のように覚えた記憶があるが、行ってみると「確かに〜」という感じだった。街中にとにかく教会が多い。数ヶ所はロシア正教の教会もあったが、基本的にはカトリックの教会が旧市街の中にいくつもあった。

聖テレサ教会
中が繋がっている夜明けの門には巡礼地としても有名なマリア様のイコンがある

外観はそう派手ではないのだが、どこも中がとにかく綺麗。ロシア正教の教会ももちろん大好きなのだが、また違う良さがある。ステンドグラスもパイプオルガンも、それでしか癒せない何かがある。

いくつかの教会では、ヨーロッパの都市の例に漏れずコンサートも行われているようで、ちゃっかりポスターを見つけて行ってきた。ポスターはリトアニア語だったのでヴァインベルクが演奏されること以外は何もわからない状態で行ったがどうやらイタリアから来た室内楽オーケストラと合唱のコンサートだったようだ。

コンサートのチケットを目敏く見つけた

もうひとつ、リトアニアといえば合唱大国。めちゃくちゃ良かった。聴きに行ったアルヴォ・ペルトというエストニア人の作曲家の『アダムの受難』という曲が演奏された。教会で聴く人の声ってなんでこんなに美しいのだろうか。

3位以降は決めるの難しいので同列ということで(そろそろ飽きてきたというのもある)。


バルト三国でTinder社会調査

思ったより前半が長くなってしまった(とはいえ本当は他の都市のことももっとたくさん書きたかった)(のでそれはまたの機会に)。

ということで2つ目のタイトルに移りたいと思う。 
「Tinder社会調査ってなんだよ」「旅行先でTinder使うとかどうかしてるだろ」 など様々ご意見あるかとは思うが、特に危ないことや倫理に反することはしていないのでご安心あれ。普通にメッセージをやり取りして男女問わず数人と軽く街を散歩した程度なので、一般的なTinderの使い方はしていない。
純粋な情報収集として、今その都市に住む若い層の中でどんなものが流行しているのかということを知るのにTinderは便利なのだ。別に会わなくたっていいし、メッセージのやり取りをして「旅行できてるんだけどおすすめある?」と聞けばいいのだ。男女問わず大抵皆快く教えてくれる。さらには私はロシア語OKとプロフィールに書いていたので割と「なんでロシア語?」と聞かれることがあり、それに答えるついでに彼らが今ロシアについてどう思っているのかや、ロシア語が話せる人達についてはどういうバックグラウンドなのかを聞くこともできた。旅行先でいきなり現地人に声をかけるわけにも行かないので、こういう話をきけるというのもなかなか便利なツールだと思う。

ロシアに対する反応は人によってまちまちだった。「今ロシアに住んでいることはモラル的に問題がある」と言う人もいたが、どの国かに拘わらず概して英語でメッセージを書くひとはルソフォビアが強く、ロシア語でやり取りをした人はそこまでの反感はないような印象を受けた(もちろん侵攻には反対だったが)。もちろんソ連時代以降に生まれた層でロシア語が話せる人というのは、両親がロシアやベラルーシ系だったり、ロシア系の学校に通っていた人たちなので、思想的にもどちらかといえば親露(これは現在のロシア政府を支持するという意味ではなく)になるというのは理解できるし、彼らの多くはロシアに住む友人がいるようで、友人たちが今いかに苦しんでいるのかということも理解しているようだった。さらには、彼らの親世代のロシア系住民の中には、いわゆるZで侵攻を支持している人たちも一定数いると複数人が話してくれた。当たり前といえばそうなのだが、同じ国籍を持ち同じ都市に住んでいても、話す言葉(母語)によって考え方も変わってくるのだと強く感じた(アクセスできるメディアの違いもあるかもしれない)。

おまけ
以下は統計調査(プロフィールを見て受けた印象)(正確に数えてはない):

・ロシア語話者の多さ
リガ(ラトビア)>タリン(エストニア)>ヴィリニュス(リトアニア)

・エストニアは職業が"Software engineer"の人がやたら多い(体感半分くらい)

おやすみなさい〜

ヴィリニュスの夜景

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