朴正熙と文在寅

日韓関係について書いたものです。発表の機会がなかったのでここに残しておきます。

 先日、韓国映画「KCIA 南山の部長たち」を見た。一九七九年に起きた朴正煕大統領暗殺事件を題材とし、昨年韓国で大ヒットした。

 南山とは、中央情報部(KCIA)があった場所を指す。映画はKCIAのトップが、朴氏を暗殺するまでの過程を陰影深く描いている。
 映画には、日本の教育を受けた朴大統領が、仲間と日本語で話すシーンが出てくる。

 宴会の席で、歌手に日本の歌謡曲を歌わせていたのも有名なエピソードだ。

 朴大統領は一九六五年、国内の反対を抑え、日本と「基本条約」を結んで国交正常化を果たした。
 その後日本の協力を得ながら韓国経済を急成長させたが、軍事独裁を敷き、人権弾圧の批判も浴びた。
 現大統領の文在寅氏は、暗殺が起きた年、司法試験の一次に合格し、翌年の二次試験目指し勉強していた。

 朴大統領の暗殺で政局の渦に巻き込まれ、学生運動にのめり込んでいく。
 文氏にとって朴大統領は、韓国の暗い歴史の象徴だろう。大統領当選前、朴氏について、「自分と考えも違い、特に尊敬していない」と語ったこともある。

 朴氏が政治的決断で一歩を踏み出した日韓関係が、今揺れている。二〇一八年以降、韓国で相次いで出された元徴用工や元慰安婦に関する判決が引き金となった。
 未解決になっているとして、日本企業や日本政府に賠償を求めた。日本側は「すでに解決ずみ」と反発している。

 文氏は一月の新年記者会見で元慰安婦らへの賠償を命じた判決について、「正直、困惑している」と述べた。

 そして、「(原告が)同意できる解決策を探すため、韓日間の協議を続ける」と対応する考えを示したが、自分からは具体策を出さなかった。最近は「日本の謝罪に掛かっている」とも述べ、日本の出方を見ている。

 この判決の底流には、戦前に行われた韓国併合に対する考え方の違いが反映している。日本側は「当時は合法だった」とするが、韓国側は「不当だった」として平行線だ。

 この問題をあいまいにしたまま、両国間でさまざまな合意がなされてきた。
 文政権は、日本側に、関係修復に向けてさまざまな解決案を投げているようだが、大幅な妥協はしないだろう。

 日韓は、過去に対する認識でたびたび摩擦を起こしてきた。実は未来についても考えが違ってきている。

 文政権は冷戦は終わったので、同じ民族である北朝鮮と経済協力を進め、将来の南北統一を準備したい。

 一方、日本政府は、軍事的な拡大を続ける中国、北朝鮮と米国とともに「新冷戦」に備えようとしており、接点が見当たらない。

 政治的には「遠い世界」にいる日韓両国。歩み寄りは容易ではない。知恵を出し合ってほしいが、結局、米国のバイデン新大統領の仲介を待つしかないのかもしれない。

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