見出し画像

日本人拉致問題は、国外ではどう見られているのか 結局日朝首脳会談は実現しない

岸田首相の所信表明演説には、歴代の首相が言ったのと同じように、拉致問題への言及があった。

北朝鮮による核、ミサイル開発は断じて容認できません。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。
 拉致問題は最重要課題です。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、全力で取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。

しかし、この問題、海外ではどう見られているか。いま、あえて拉致問題を取り上げるニュース番組は日本にはない。動きがないから仕方がない。

北朝鮮を語る中で、拉致被害者家族のコメントが載ったり、関連のイベントが報道されるだけだ。

10月9日に、東亜日報の脱北記者、チュソンハ氏がこの問題を1時間にわたって取り上げていた。彼も「最近、北朝鮮の動きがないので何を語ろうか悩んだ」などと話ながら放送を始めていた。

一連の流れを説明していたが、新しい情報はなかった。日本政府が、拉致被害者が住んでいるという噂のあった平壌にあるアパートの入居者名簿を欲しがっていた、という当たりが目新しい気もした。

その後、「北朝鮮の肩を持つわけではない」としつつ、日朝の間には強い不信感があり、拉致の解決はほぼ不可能だと語った。そして

12人の拉致被害者のことを日本政府は言うが、日本は戦前、たくさんの人を朝鮮半島から日本に連れて行った。それを考えると、いい気分ではない。

というふうな事を言っていた。戦前、いわゆる「強制連行」をしたのに、今になって12人の拉致被害者のことを言う資格はないということだろう。

厳密にいえば、双方を並列に語るのは無理があるし、時代も背景も違い、誤りとしか言えない。しかし、朝鮮半島に住む人たちからこういう意見はよく聞く事がある。実は、日本政府だけが、懸命になっていて他の国の人たちは、話半分で聞いているのが実状だ。

先日、あるウェビナーを聞いていたら、東京大学名誉教授の和田春樹氏が、拉致問題で最も重要で、しかもあいまいになっているのは、「拉致の解決とは何かがはっきりしていないこと」と言っていた。

その部分をおおざっぱに起こしてあるので、ご紹介したい。

拉致問題の解決とは何なのかと思うんですね。

これがはっきりしていないということです。何を要求するか、がはっきりしていない。その点で、例えば当然ながら謝罪して、もう拉致はもうくり返さないっていう、向こう側の政権がやっぱり、明確な表明が必要だ、これはもう当然ですよね。

そうした場合にそうなったら、(北朝鮮は)拉致した人被害者の全員対する賠償を支払うことが、もう当然だと思います。

今度は生きている人がいるのか、死んでいるというのなら調査を行わないといけない。

死んだその理由を説明しろということを、家族の立ち入りとか調査とかいろんなこともあり得ると思うんですが、そういう話はそれから他にもっとあるかもしれませんね。

そういう明確に整理されなきゃいけないが、現在のところ拉致問題は被害者全員が生きているんだからそれを返せという、そこで止まっている。

だから、この目標を掲げなければ、交渉はできない。交渉してなにを要求し、交渉するか、何を勝ち取るか。このことをまず固めないと。それが実現する前なのかとか、そういうことについての障害っては何か。

それをはっきりさせるってことが重要じゃないかって、私は思いますね。

今はそういう要求のうち、どこまでが実現されたのか、全く実現されてないか。どこまでが実現されたのか、残ってるのは何だろう、こういう視点も必要じゃないか。

それと、そういうことの解決ということと、日朝国交正常化についてはもっときつい議論をしていくべきだと思います。

つまりは、解決に必要なより詳細な条件と、解決に向けた段階的な取り組み目標がないということだ。チュ記者が持っているような誤解も解かねばなるまい。

さらに韓国にもっと協力してもらう必要もある。

趙総領事はこう語っている。

日朝会談の実現については、北朝鮮は「拉致問題で日本と米国はほぼ同じ立場ととらえているとみられ、日本と直接交渉をしようとはしないだろう」と推測する。

南北首脳会談が、今後また実現する可能性もあるからだ。

しかし、日本政府には韓国と関係改善する意欲が見えない。

結局、岸田首相をはじめ、日本政府には拉致問題解決の青写真がないということだ。

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!