見出し画像

世論調査 なぜ岸田新内閣の支持率はバラバラなのか。

最近、必要があって世論調査について調べていたら、ちょうどいい材料が出てきた。新首相に選ばれた岸田文雄氏を首班とする内閣支持率が各社から出てきた。筆者がまとめたところでは以下のような数字になっている。

キャプチャ

どの社の調査でも、過去の新政権発足時に比べ、岸田内閣の支持率が低いことが指摘されている。

ただ最も数字が低い朝日新聞と日経新聞では10ポイントもの差が出ている。

質問の仕方、内容、調査した新聞に対するイメージなど様々な要因があって、理由は簡単には分からない。しかし、1つだけ手がかりがある。

それは「重ね聞き」のあるなしだ。重ね聞きは、1回目の質問で「分からない」などと答えた人に「気持ちに近いのはどちらですか」などと聞く事だ。

この影響で、支持率も、不支持率も高くでる傾向にあるとされる。

そのことは、日経新聞の場合、ウェブ版で説明している。

日経世論調査では内閣支持率について「あなたはABC内閣を支持しますか、しませんか」と質問する。「いえない・わからない」と回答した人には、再度「お気持ちに近いのはどちらですか」と問うている。08年9月から1度目の質問と重ね聞きの回答比率を分けて公表している。
 政党支持率でも「あなたは今、どの政党を支持していますか。ひとつだけお答えください」と質問。さらに「支持政党なし」「いえない・わからない」と回答した人に「しいていえば、どの政党に好意をもっていますか。ひとつだけお答えください」とたずねている。それぞれの回答比率を公表したうえで「支持+好意政党」の比率を、政党支持率とみなしている。

読売も同じ方法を取っている。この記事はネットで読めるが、要するに方法が違うので読売、日経は高く出ると書いてある。

私は個人的に、重ね聞きはやめるべきではないかと思っている。調査員の言い方で誘導されてしまうかもしれないからだ。

しかも読売も、日経も支持率調査の本記(中心の記事)の中で、重ね聞きをしていると書いていない。行数の制約はあるにせよ、不親切というか怠慢だ。内閣支持率は、内閣の命運も決めてしまう。その数字をあえて高く出す必要があるのか。


例えば菅政権は、支持率が30%を割ったことで、辞任に追い込まれている。

まあ過去の数字と比べる意味から、途中で調査方法を変えるのは難しいのかもしれない。だれか統計学者が厳密にこの「重ね聞き」の影響を算出して欲しいものだ。

不思議なのは、支持率では数字がばらついているが、不支持率は似た数字になっていること。私が勝手に推測するに、まだ内閣が本格稼働していないのに「不支持」を言うには材料が足りないと思っている人が、かなりいるのかも知れない。発足直後に衆院の解散日程を発表したことへの失望感がある可能性もある。

岸田首相も、各社の数字を見てやや戸惑ったようだ。このように報道されている。

首相は6日、首相官邸で記者団から各社の世論調査について聞かれた。「低い数字も含めてしっかり受け止める。自分自身を振り返り、選挙に取り組んでいく」と話した。立民の安住淳国会対策委員長は国会内で記者団に「(岸田内閣の)ご祝儀相場のないスタートは事実だと思う。国民はシビアな目でみている」と述べた。


世論調査の新聞ごとのズレはあっても、支持率の上がり下がりは同じだと説明されている。ところが内閣支持率の数字が「事件」になったことがある。


この本に書かれている内容だ。要約するとこうだ。

福田康夫首相が2008年7月30日に内閣改造を突然表明した。各社はただちに緊急世論調査を実施した。結果は一斉に報道されたが、各紙の内閣支持率が大きく異なった。
支持率と見出しも、朝日24%「横ばい」、読売41%「好転」で反対のニユアンス。各紙の一面記事が横に並ぶと目立った。「これは何だ」と強い印象を与えた。朝日と読売の差は17ポィントで,過去最大級の乖離だった。世論調査に信頼性があるのかと批判を受けた。

このため各社の担当者が集まって、違いがどこから生まれたか調査をしたと、筆者の鈴木さんが明かしている。この時まで、各社は、他社の世論調査の方法を十分知らなかったという。企業秘密の1つなのだろう。

ここで各社は異例の情報交換をしたのです。ふだんは表面化しない部分も含めてどこが違うのか比較したところ、緊急調査のために調査会場を変えたなど、普段と違うことがいくつかありましたが、最終的に「運用方法の相違」が最大の原因だと判明しました。(196p)

運用方法としか書いていないが、中心は間違いなく「重ね聞き」のあるなしだ。

本書によれば、重ね聞きによって内閣の支持率は平均6ポイント高くなっているという。そこまで分かっていて、なぜこの方法を取り続けるのか、理解に苦しむ。実は日経は、重ね聞きをしない世論調査も行っている。

自動音声応答通話(オートコール)の仕組みを使った「世論観測」というものを始めているらしい。この調査では、重ね聞きはしていない。ゆくゆく、こちらの方に内閣支持率をシフトする考えなのかもしれない。

このシステムの違いが放置されていれば、今後も何かのタイミングで、また全然違う数字が出てくることがあるに違いない。

(専修大での授業の内容を土台に書いた文章です)






よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!