実名で話す大切さ(2012年)

 警察の批判をしている 北海道の原田宏さんという人がいる。彼と会ったのは2012年5月のことだった。あるテレビの対談番組でご一緒した。小柄で話し方は穏やかだが、芯の強い人という印象だった。高校卒業後、警察に入り巡査から警視長という高い位まで出世した人だ。

 番組で言葉を交わした後、個人的にもお電話で話をうかがった。元部下が2002年に、警察の裏金問題を明らかにした。 原田さんは、すでに警察を退職していたが、テレビ局からの要請で、顔にモザイクをかけた匿名の道警元幹部として、実態を告発した。


 同じ時期、道警の人が自分の顔を出して、実名で問題を指摘し始めていた。 長崎県警で懲戒免職となった警部補も、堂々と実名で告発をしていた。警察官の仕事を支えるのは、古くさいけれど使命感や正義感だとおもう。多くの警察官に、まだこういう気骨が残っていたのだ。 これを見た原田さんは、「自分が恥ずかしくなった」と振り返る。

 「匿名で告発するサイトには2ちゃんねるなどたくさんありますよね、でも誇張されていたり、無責任な発言が多い。読む人への訴える力は落ちてしまう」と原田さんは自分の決断に自信を持っている。 思い切って実名で問題を語り始めた。

 匿名で批判していたのでは全く反響がなかったのに、実名にしたら大変な波紋が起きたという。それはそうだろう。
 会った時、背広の中からおどろおどろしい脅迫文が書かれたはがきを取り出して見せてくれた。何か発言すると、今でも脅迫の手紙が届くという。
 原田さんの例を出したのは、匿名で言い続けていても何の変化ももたらさないということだ。自分が正しいと思うのなら、それは口に出し、責任を取ることが必要だと思う。

 「ただこれだけは覚悟してください」と原田さんは言う。もし、あなたが組織の問題点や上司について率直に指摘しても、応援してくれる人はほとんどいないということだ。 原田さんの場合も同じだった。

 「もし自分の仕事や地位をかけるつもりで何かやるなら、どういうことが起きるか弁護士などと十分相談してほしい。 私は安易に勧めません」と念を押していた。

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