死ねば忘れられる 青空のむこう
ぼくだよ。ハリーだよ。戻ってきたんだ。ぼくを覚えているだろう。 ぼくが誰だか分かる? そして最も聞きたかったのは「ぼくがいなくてさみしくなかった?」
しかしぼくの言葉を聞けるのは、150歳のアーサーだけだった。
「青空のむこう」は、アレックス・シアラー作。交通事故で亡くなった少年ハリーが、死者の国から地上に舞い降り、自分の存在があっというまに消え去っていくことに衝撃を受ける。
お姉ちゃんとけんかして仲直りをしていなかった心残りを解決しようとする物語だ。
紹介した場面は、亡くなったハリーが魂となって通っていた学校に行く。
しかし、友達たちはすっかりハリーのことを忘れ、ハリーとケンカしていた相手と仲良く遊んでいる。声は届かない。
何回読んでも胸がチリチリする。
死んだ人が、現実社会に戻ってなんとか最後の望みを叶えるというストーリーはよくあるが、この物語は主人公が少年なのが特徴だ。
私も60を過ぎて、死をより意識するようになった。医療ドラマを見ると、わたしもああやって手術を受けて死ぬのかとか、私が死んだ後家族はどう暮らすだろうとか。
死んでしまえば、あっと言う間に忘れられてしまう。これは冷たい現実だ。
だから生きなければならない。ハリーの言葉は、それを伝えてくれる。
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