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「知的低脳」と罵られた金徳訓首相 更迭は不可避? 金正恩総書記の焦り

 金正恩総書記が最近、公開行事を通じて厳しい口調の発言を行っている。

 米国で会談した日米韓首脳に向けて「凶悪犯のボス」と言い、国内に対しては金徳訓首相をはじめとする官僚たちに「知的低能」と言い放っている。

 業績と成果が上がらないことへの焦りではないかと見られているが、特に、最側近である金徳訓首相を公開の場で叱責したのは初めとみられ、注目されている。
 何らかの形の権力闘争を生むのでは、との観測も出ている。

 金徳訓は、首相に任命された2020年以降、金総書記の寵愛を受け、急速出世してきた。その象徴的場面は北朝鮮政権樹立74年を記念して行われた記念公演だった。

 この公演に出席した金総書記は、ある人物に向かって「隣に座れ」と何度も合図した。それが、金徳訓だった。この日、金徳訓は金総書記夫妻と同じテーブルに座って公演を観覧した。

 しかし、わずか1年も経たないうちに金首相の状況は180度変わった。干拓事業を重視する北朝鮮で、今年の夏、少なからぬ被害が発生した。
 北朝鮮のテレビは「海水の影響で堤防が破壊され、計560余りの干拓地区域が浸水する深刻な被害が発生した」と伝えた。

 朝鮮中央TVは2022年8月、「気象局を訪れた金徳訓同志は、台風6号と梅雨前線の移動経路に関連し、すべての部門、すべての単位で大水、大雨をはじめとする災害性気象現象に対処できるように気象予報の正確性と迅速性を保障しなければならないと指摘した」と放送している。

 ところが、その後水害現場を訪れ、太ももまで水につかってさまざまな指示を出した金総書記は、今回の被害の責任を金徳訓首相と内閣にあると発言した。
 金徳訓首相は現場を1回か2回見ただけで、副首相を現場に送った。これは間違ったことだと、厳しく叱責したのだ。

 その言い方が、常軌を逸している。「内閣と省、中央機関の責任幹部らは現場に顔も出していない」「内閣の行政・経済規律が甚だしく乱れ、怠け者らが無責任な働きぶりで国家経済事業を全て駄目にしている」

「無責任な仕事の態度で国家経済事業を台無しにしている。政治的未熟児、警鐘を警鐘として受け止めることができない知的低能児だ」(건달(チンピラ、遊び人)뱅이  건달꾼 지적저능아들(知的テ低脳) 관료배(官僚) 

 日本の新聞は、この発言を報道しているが、低脳うんぬんの部分は訳していない。

 これだけ批判されたので、近く更迭されるとの見方も浮上している。

 金総書記は政権後、内閣責任制を強調してきた。
  朝鮮中央TVは2016年5月に、こう放送したことがある。
 「内閣責任制、つまり国の全般的な経済事業を内閣に集中させ、すべての経済部門と単位が内閣の統一的な作戦と指揮に従って動く規律と秩序を厳格に立てなければならない」

 内閣に力を与えるために幹部を大々的に入れ替え、新しく任命された人たちには十分な権限を与えた。

 朝鮮中央TVは2021年2月、こう放送した。「総書記同志は、経済事業を大胆に革新的に展開するよう最後まで後押しする」
 そんな中、2020年8月、金徳訓は内閣首相職の任命と同時に政治局常務委員にも選出された。

 その後、金徳訓は活発に動いた。
経済現場訪問にも熱心で、北朝鮮にコロナ19患者が発生した際、金徳訓は金総書記を伴って平壌市内の薬局を訪れた。

 金総書記がコロナ19の余波で公開活動を減らした時も週に1回以上現地視察に出かけている。2022年6月に金徳訓は平壌製薬工場と順天製薬工場を現地視察したこともある。 

 しかし、北朝鮮は経済面で具体的な成果を出せていない。
 今年は経済発展5カ年計画3年目だが、経済発展はおろか、食糧難など民生問題はさらに深刻化している。
 また、長期化した国境封鎖と対北朝鮮制裁で実質的な経済難の解消は事実上不可能で、自力更生をスローガンにせざるを得ないのが現実だ。
 北朝鮮は2000年代初頭と2010年代、やはり深刻な経済難を経験しました。不十分とはいえ経済改革を行い、それなりの突破口を開いた。

 その中心的役割を果たしたのが。当時の朴奉珠首相だった。朴前首相に比べ、金徳訓首相は実力不足との評価もある。

 更迭の危機を乗り越え、側近の地位を固めるのか。信頼回復のチャンスをつかめないまま、表舞台から消えるのか。金徳訓首相の正念場は続きそうだ。

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