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喜多流職分会2004年10月自主公演

狂言「鎌腹」
シテ・山本則俊
アド・山本則秀
アド・遠藤博義

狂言「鎌腹」の充実感はとてつもない。山本則俊さんの狂言を拝見していると、自分がとてつもなく 貴重な舞台に接しているのだという思いを強く抱く。全体の構成、細部の仕上げ、どこをとっても 最高度に完成された芸術品なのだ。緩むことのない、見所にとっては心地良くさえある緊張感。 無駄なく、完璧に均整のとれたかたちとことば。(小道具の扱いさえ、疎かにならないのだ。) そして、その裡から溢れ出てくる諧謔味。山本家の狂言は、型の美しさが何より特徴かと思うが、 諧謔味という点でも、流儀を超えて、今まで見た中でも最高のものではなかったかと思う。 語りの間合いも絶妙、何より役柄が完璧に消化されていて、演技でここまで表現しきれるものなのかと、 ただただ感嘆する。 流儀の能の会の狂言というのは、見所の集中力が乏しく落ち着かないものになりがちであるのが、 その出から、そして最初の詞から最後まで見所の集中をかちえ、なおかつ見所からこれだけの笑いを引き出した その芸の力に感銘を新たにした。

(2004.10.31公開, 2024.6.28 noteにて公開)

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