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「古代」村落の想像的根拠から「極東の架空の島」へ

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『山崎与次兵衛アーカイブ:三輪眞弘』別冊。藤井貞和が<うた>の起源に指摘する「双分観から三分観へ、中心(ミヤーク)を意識する」プロセスとジュリアン・ジェインズの<二分心>から意識…
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第2章:双分観と三分観

1. 狩俣における双分構造の複合と重層の様相 以下、双分観に関して、双分構造の複合と重層の様相を把握しつつ、それと三分観の関わりを描き出すことを試みる。 まずは東西の方位観について、8月15日の十五夜の綱引きを手掛かりに見ていくことにする。 当然のこととして、南西諸島に共通する、男(ビキリ)/女(ブナリ)の双分観をまず見ることができる。ここでは西がブナリであり、ブナリが勝つと豊作で、他の地域の綱引きでしばしば見られるように、綱引きの結果が非対称の場合には、実質的には正

「古代」村落の想像的根拠から「極東の架空の島」へ:第1章 <二分心>の位置づけ

第1章 <二分心>の位置づけ 1.心のシステムと社会のシステムの関わりを問うことの妥当性 まず心のシステムと社会のシステムの関係はおよそ自明ではなく、単純な同一視は許されないことに留意する必要がある。藤井貞和『古日本文学発生論』における古橋批判「国家成立以前的段階から以後へという展開が、意識の次元でとらえられているという決定的な弱点(…)」(同書, p.20)を常に念頭におく必要があるということだ。確かに古橋の議論には直ちには首肯し難いものが感じられるが、それがどうしてなの

「古代」村落の想像的根拠から「極東の架空の島」へ:要約

本論では、藤井貞和が<うた>の起源に指摘する「双分観から三分観へ、中心(ミヤーク)を意識する」プロセスとジュリアン・ジェインズの<二分心>から意識への変容プロセスとの構造的な連関を、宮古島狩俣の村落の構造と祭祀と神歌との関わりを手掛かりに検証する。 まず第1章では、系統発生的=進化論的な自己の発達モデル(トリーおよびミズン)、および個体発生的=発達論的な自己の発達のモデル(やまだ)と<二分心>モデルの比較検討を通じ、それを「言語以降、意識以前の心の様態」として捉えることによ