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山崎与次兵衛アーカイブ:作曲家論集

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これまでWebページ、Blog記事として公開してきた、クラシック・現代音楽の作曲家の人と作品についての文章をアーカイブ。
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#交響曲第7番

ブルックナーと「録楽」をめぐって―フランツ・ヴェルザー=メストとクリーヴランド管弦楽団の演奏を視聴して―

フランツ・ヴェルザー=メストがクリーヴランド管弦楽団を指揮したブルックナーの第7交響曲と第5交響曲の録画が放映されているのを 偶々視聴する機会があった。第7交響曲はクリーヴランド管弦楽団の本拠地であるセヴェランス・ホールでの2008年9月25日の演奏会、 第5交響曲はブルックナーゆかりの聖フローリアン修道院での2006年9月12日,13日の演奏を収録したものとのこと。 朝の7時半過ぎから夜の9時過ぎまでオフィスにいて日々の糧を得ることに追われた後のためか、久しぶりにブルックナ

バルビローリのシベリウス:第7交響曲 ハレ管弦楽団(1966)

シベリウスの音楽の極限。シベリウスの音楽は語法が伝統的であるのに比べて、 音に対する態度は、間違いなくいわゆるクラシック音楽の極北にあると感じられる。 例えばウェーベルンにも似たところがあるが、シベリウスはウェーベルンが引き返した (のでなければ、そこを極限と見なして立ち止まった)地点を(恐らく気づかずに)超えて 先に進み、そして全く別の理由で沈黙してしまったようだ。それはある意味では、周縁的な 音楽の特権といっても良いのかもしれない。(例えば、武満の音楽にそれを感じる時があ

オイゲン・ヨッフムのブルックナー(1) : 実演に接した感想

1986.9.16 東京文化会館 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 ワグナー トリスタンとイゾルデ 前奏曲と愛の死 ブルックナー 交響曲第7番 もう聴いて20年近く経つが、この演奏会は当時の私にとっても今の私にとっても群を抜く、圧倒的な経験だった。 当時の私にとっては、ヨッフムは特に熱心なファンではないけれど、1度目のブルックナー全集(その当時、第9、第5、第2を持っていた)や、コンセルトヘボウ管弦楽団との「大地の歌」のレコードで馴染みの指揮者で、「あの」コンセルトヘボウ

バルビローリのブルックナー:第7交響曲・ハレ管弦楽団(1967年4月26日・マンチェスター、自由貿易ホール)

バルビローリがブルックナーの音楽を非常に好んでいたのは、ブルックナーの評価がドイツ語圏にほぼ 限定されていて、まだ評価が定まっていなかった時期のイギリスとアメリカで、それをしばしば取り上げた ことからも窺える。恐らくはレパートリー上の棲み分けの問題などもあって、正規のスタジオ録音が なかったため、バルビローリのレパートリーの中でブルックナーが占めている位置の大きさを知ることは、 近年のBBCによる放送音源や演奏会のライブ録音のリリースまでは一般には困難であったと言って良い。