同人誌即売会(技術書典7)にサークル参加をした話
大分時間が経ってしまいましたが先日技術書典7にサークル参加をしてきました。
そもそも本を書くことはおろか同人誌を作るという事もやった事のない素人がやってみるとどうなったのか、という話です。
概要
初めて同人誌を書いて、売ってめっちゃ苦労したけれど面白かった。初めてにしてはわりと売れた気がする。そのチェックリスト数や時間ごと実売数、収支,コスト,想定してなかった出来事のまとめを公開する。それなりに反省点もあったのでそこは今後に活かしたいという話です。
1 背景
1.1 技術書典の熱気
そもそもは数年前twitterでふと技術書典4 の情報が流れてきて、買う側で参加して見ました。まだ秋葉原の狭い会場ということもあり、混雑している中まず思ったのは熱気がすごいという点でした。それ以降は毎回買う側でも参加するようになり、自分も何かやってみたいなと思うようになりました。
1.2 モチベーション(エンジニアとしての知識創造)
僕は仕事と並行して社会人大学院に通っています。(留年生のボンクラです)その背景として、そもそもエンジニアの組織の中でどのように知識を維持するかという事に悩みを抱えていました。そして大学院で学ぶ中で知識工学というのに触れ,調べていくうちに知識創造経営などで有名な野中郁次郎先生のSECIモデルというのを知りました。(https://ja.wikipedia.org/wiki/知識経営)
それが自分にはぐっとくるというか腑に落ちるような気がしました。
そして組織の中で、またその基本単位として人の知識のインプットとアウトプットのサイクルを作ることが大事だなと思うようになりました。と同時に関西人である性か、できるだけアホな表現をする、その事で敷居を下げるということを心がけようと思うようになり、社内で週間中年ジャ○プのような雑誌をチームメンバーに作らせていました。今回技術書典ではその延長線として、自分の勉強の一貫として楽しいことができないかな、というモチベーションで活動を始めました。
2目的
2.1 技術の布教
モチベーションは上の通りなのですが、今回の活動の意義というか目的としてはTTCN-3という技術を布教するという事を狙いました。
僕は決して優秀なエンジニアではありません。そもそもバックグラウンドもリベラルアーツ校の文系メジャーでした。またqiitaやstack overflow なしではコーディングはできないでしょう。そのため、便利そうだがまだあまり認知されていない技術を使ってもらって、面白いと思う人が出てきて、広めてくれればそれが自分のためになるのではないかと考えました。今回のTTCN-3 もそれなりに歴史があり、ヨーロッパではかなり使われているが日本語での情報はあまり見つからないという状況でした。そのため、今回のような本を作る事で必要のある人が調べたり記事を書いてくれたらエコシステム ができてくれないかなーと思った次第です。
3. 準備でやった事
3.1 事前準備
運営をされている事務局が準備イベントを開いており、参加してきました。
こちらのイベントは結構な頻度で開かれており業務外の時間に行くことが出来ました。
https://blog.techbookfest.org/2019/08/11/tbf07-mokumoku/
またギロッポンのズーヒルのカリメルのスフィオに行くことが出来てなかなか新鮮でした。説明も丁寧で、初心者のつまづきやすい点や、執筆の上で注意するべきスケジュール、お金の事などがわかりやすかったです。もし初めて同人誌作成を検討されている方には是非おすすめします。その説明会の中で一つキーワードとしてあげられていたのが、技術の布教という言葉でした。先ほど目的の中でも記載しましたが、世の中にまだあまり知られていないが、やくにたつかもしれない、自分のやっている事は誰かの役に立つかもしれないというのは一つのモチベーションとなりました。
3.2 事前の予算、値段設定
説明会の中では1000円まではノールック、100部ほどは売れるという情報がありました。よくわからなかったので、まあそれでいいやと100部で発注をかけました。
前回参加した印象ではネットワーク系は出店が少ないかなという印象でしたので、まあ半分売れたら御の字かなという感じでした。最もその結果として原価は一部あたり500-600円前後になります。今回全く利益は狙っていなかったのですが、赤字が少ないにこした事はないので値段設定をどうするかはかなり悩みました。最終的には後で電子版を500円で売ろうと思っていたので、小銭を用意する事やスタッフのオペレーションを減らすために本も電子も500円という形式にしました。
ここは正直ちょっとケチくさかったかなと悔いの残る点でした。この後の結果から考えると本と電子もセットにすれば紙の在庫もよりハケたかもなとは思います。そこはまた次回があれば改善したいポイントです。
3.3 準備した道具
あの布
事前説明会の中でも触れられていたのですが、あると便利という事だったので下のサイトから購入しました。
100均道具
mochikoさんのnote(https://note.mu/mochikoastech/n/nf484f114855c)を参考に小銭いれ, 硬質カード、カードスタンドあたりを購入しました。後は個人的に昔の八百屋さんみたいにカゴに小銭を入れてそこからやり取りをするのがいいな、と思っていたのでザルのような箱を購入しました。個人的には出し入れしやすくてよかったかなと思います。
ポスタースタンド
今回依頼した印刷所の猫の尻尾さんではポスターを2枚400円程度で作ってくれました。まぁ半分広告半分記念に買いました。
(https://www.amazon.co.jp/【INSIGHT-WORKS】-POPスタンド(フロアスタンド)-長さの調節が便利なスライド式%EF%BC%8F持ち運びに便利な分解可能タイプ(ドライバー不要)-本体のみ/dp/B01M5EV3YZ/ref=asc_df_B01M5EV3YZ/?tag=jpgo-22&linkCode=df0&hvadid=219907180462&hvpos=1o1&hvnetw=g&hvrand=17114847969854757485&hvpone=&hvptwo=&hvqmt=&hvdev=c&hvdvcmdl=&hvlocint=&hvlocphy=1009332&hvtargid=pla-440994561523&psc=1)
お客さんの中にはポスターに目を止めていらっしゃるお客さんもいたようなので、あると便利だと思います。
3.4 イラスト発注
学生時代からの先輩で、SNSにイラストを投稿していたud(@youdie)さんにお願いをしました。どうもイラストと表紙デザインを作る技術は別物らしいので、両方やっていただいたud さんには頭が上がりません。実際作っていただいたイラストも素晴らしいものでした。この表紙で買っていただいたお客様もいらしゃったのではと思います。"なんかいい感じで"と雑に依頼を出したのにもかかわらず貧乳ショートになったのはきっとudさんの要件定義能力の高さ故だと思います。お代に関しては、JPYはお支払いできないのでYAKINIKUかSUSHIで、と依頼をしました。本職の方に頼むのであればそれなりにお金がかかってくると思われます。
3.5 ドキュメント/タスク管理
簡単に土日の予定だけでgoogle spread sheet上にWBS を作成しました。私は遅刻することがあらかじめわかっていたので、それぞれの締め切りの1-2週間前を内部締め切りにしていました
そのほか当日スタッフへの手順書やスケジュール調整、イラスト依頼に当たっての資料・画像の共有は全てgoogle drive で実施しました。レビューの際にもpdf にコメントを追記できるので役に経ちました。特に気軽にURLでシェアできるのが便利でした。
自分でのレビューの際には、ipad でgoodnote を使いました。ペンやマーカーで書き込みができるので、細かいスペルや、送り仮名、句読点の統一などのチェックに役立ったと思います。
またブレインストーミング兼タスク管理にはtrelloを使いました。自分の例では書きたいこと、準備、申込ステップ、やること、書くコンテンツ、完了したタスク、当日持って行くものリスト、レビューのコメントのボードを作成しました。
それぞれ、書きたいことボードや当日持っていくものリストにはブレインストーミングで思いついたものをひたすら追加して、後でいらない物は別ボードに移したり、アーカイブするようにしました。それぞれのカードに期限やステップを設定できるので使っていなければ出店も危うかったかなと思います。
4. 本を書く
4.1 技術のテーマ設定
本文の中でも書きましたが、私は業務としてTTCN-3 とpythonで実装されたツールを使ってネットワークの検証試験の自動化に携わっています。
CI/CD やインフラのテスト自動化というのは近年のトピックとなっているので需要はあるのかな、と思いつつ、TTCN-3の情報は自分でも困るくらい日本語では見つからなかったのでそこの敷居を下げるような内容というのは一つ価値を持つのではないかなと思いました。技術書典は傾向としてフロントエンド系やweb系が多く、インフラ系はどちらかというと少なめという印象でした。最もニッチなテーマは話題を呼んでいるような印象を受けていたので、需要はありそうだけれど知られていない技術を取り上げると爆死することはないかな、というトピックを狙ってみました。
4.2 執筆環境
基本的にはmac で作業をしていました。部分的にwindows 10 にWSLでdebianを入れてそちらを使用しました。ツールはLatex を使用しました。
またエディタはVS Codeにlatex workshop のパッケージを追加しました。
多くのサークルではRe:Viewを使用しているかと思います。特にlatexにこだわりはなかったのですが、上述のように大学院で論文を書かないといけなかった点から、そしてre:viewでもPDFを作成する際にはバックエンドのlatex の知識があったほうがいいようだったので、学習コストを下げるためにlatex のみにしました。最も今回コマンドの表記とソースコードの表記も同じになってしまい決していい内容ではなかったと思います。ここらへんは自分で使いやすいフォーマットをまとめてテンプレをどこかで公開したいと思います。
4.3 レビュー
事前説明会でその技術に詳しい人にレビューをもらうのもいいけれど、知らない人に読んでコメントをもらうと読みやすさの面の改善などにいい、と聞きました。そこで、技術系の人や関係ない人にも雑にレビュー依頼を投げました。結果コメントとしてもらったのは以下のような内容でした。
* 最初にどんな事ができるかわかりやすくするといいのではないか
*最後にこれまでの内容でできる複雑な事のイメージさせる内容を足すといいのでは
* プロトコルのリストなど、今回の内容では出てこないけれど、この技術でできるようになる事がわかるといいのでは
全てのコメントを本文に反映できたとは言えないのですが、当日販売する中でもお客様から実際にいただいたコメントと共通する部分も多かったなと感じました。
と、いうわけで友人・知人へのレビューはとてもおすすめです。
5. 結果
まずチェックリストは私が確認したタイミングの最大値は52でした。
やはり前日~当日の伸びが多いなという印象です。
また販売部数は85部となりました。製本版は64、電子版で21でした。
初出店としてはなかなかなのではないでしょうか。お買い上げ頂いた方は本当にありがとうございました。
またこちらの不手際で電子版は解凍できていない状態が発生しておりました。
再度ファイルを添付していますので、そちらをご確認お願いします。
統計を分析しているか方によるとチェック数を上回る販売は難しいようなので, なかなか嬉しい結果だったのではと思います。
https://note.mu/yagitch/n/nf215f7abeec7
今回試験的に手書きで売れたタイミングのメモを取ってみました。全てのデータが取れているわけではないのですが、確認できた限りでは時間とともに以下のように増加しました。やはり最後の追い込みがきいているのかなと思います。
あとイケメンスタッフと可愛い女子が立っている時間と販売数の増加に露骨に相関が出ているような気もしますが、そこは追わないようにします。
ROPが揃っていないので気持ち悪いですが、時間帯事の販売数をみると一般入場が始まってすぐ、12:00-13:00ごろが最も多かったようです。やはりモチベーションの高い方の方が大枚を叩いてくれるのかなーという気がします。
また今回本/電子を分けていたこともあり、内訳としては以下のように75%が紙媒体という結果になりました。技術書典という特殊性なのか紙への需要が多かったようです。
次に支払い方法の打ち分けです。大体現金/後払いが半分づつとなりました。後払いシステムを導入してくださった運営様様です。
最後にコストの打ち分けです。今回設備投資というか什器などをかなり購入しているのでそこが圧迫の要因になっています。またまだ実施していないので全貌が確定していないですが、スタッフの打ち上げ予算がかなり全体の比率をおしています。(アホや。。。)最終的には3-5万程度の赤字に落ち着きそうです。
これをどう捉えるかですが、個人的には充分満足できる結果だったと思います。ラグビーワールドカップのチケット相当の体験はできたと思います。
最も本来の目的であった技術の布教、TTCN-3のエコシステム を作るという目標のためには今後の継続が必要と思います。
6. 振り返り
6.1 サポート対応
今回プライベートのアカウントや連絡用のアドレスを公開しました。
ある程度のクソリプのようなのも覚悟はしていたのですが、今のところ頂いてません。
(そこまで反響がないというレベルというだけかもしれませんが。。)
ある種エンジニアというユーザー層のはっきりしているグループだったためにある程度マナーがある方だったのかなと思いました。
6.2 結局使わなかった道具
イーゼル -> 余裕があれば好きなプロトコル選手権などシールを貼るアンケートのようなことをやりたいなと思っていました。そこで3Mのを購入したのですが,いざ届くと思ったよりも大きかったため当日の搬入は諦めました。
https://www.amazon.co.jp/住友3M-イーゼルパッド(大判サイズ)-EASEL560/dp/B0053NLF62
代わりに100均で硬質カードのA3を買いましたが、こちらも結局スペース的におく余裕はありませんでした。
6.3 タイトルが大きい
正直タイトルはデザインの依頼をかける時にパッと考えたレベルだったので、主語が大きくなってしまったかとは思います。"ネットワーク"といっても業界によってイメージが違ったようで、そこはもう少しクリアーにするべきだったかなと思いました。
6.4 結構内容は読まれる
今回かなりサンプルを手にとっていただく機会は多かったと思いました。やはりネットワーク関連でテスト自動化を扱っているトピックが少なかったからかと思います。一方でかなり熱心に読まれるが、購入には至らないというケースも多くそこは自分の実力不足だなーと軽く凹むポイントになりました。
7.想定していなかった件
7.1 ちょまどさん& インフルエンサー
サークルのほぼ裏にちょまどさんがいらっしゃいました。
とてもお綺麗でした。ヘタレだったのでサインとかは貰いにいけませんでした。
また開始時には考えてもいなかったのですが、多くfollowerを持っていらっしゃる著名な方のtwitterに掲載頂いたようです。感覚的にはこういった方々の影響でブースに来ていただいた方もいらっしゃったのかなと思います。
7.2 別の同人イベントへのお誘い
後半に関西でも同じような同人イベントをやってらっしゃる方がいらっしゃり、サンプルとして使ってもいいですか?というコメントをいただきました。
7.3 コミュニティの一部として宣伝してもらえる
また後日エゴサをしてみるとテスト系でqiitaにまとめを書いて頂いるかたがいらっしゃり取り上げていただきました。
https://qiita.com/takehara-ryo/items/65f4864a7fb8247dbc6b
本を書くとこういう副次的な効果もあるのだなと思いました。
7.4 Connecting Dots
当日スタッフとして手伝ってくれた方とイラストを描いていただいた先輩が繋がりました。イベントの後アイマス?のライブに行く予定だったらしく話が盛り上がっていました。それぞれ10年以上と5年以上の付き合いだったんですが、軽く置いていかれた感じがしました。。
こ、、、これが、混ぜるな危険。。
8 参考になった書籍、web記事
8.1 数学文章作法
結城浩先生の数学文章作法は何回も繰り返し読みました。
特に推敲編は同人誌に限らず論文を書く方にもおすすめです。
8.2 Linux とlatex で技術同人誌を書く本
以前の技術書典で購入した本になります。本の構成やlatex の使い方でお世話になりました。また個人的にベンチマークというかこれぐらいのページ数でこれぐらいの構成で組めばとりあえずはサークル出店OKかなという目安にしていました。
https://www.wakamesoba98.net/circle/books/latex-book.html
8.3 税金
税金に関してはいかのブログを参照しました。
全くもって一円の利益も出ていないので納税の対象外の認識です。
https://que.u.nosv.org/item/guest/1484108417
8.4 国立国会図書館への納本
記念にやってきました。
事前にこちらのサイトで検索するとTTCN-3では2件しか引っ掛からなかったのでまぁ国のアーカイブに貢献っちゃ貢献できたのではないでしょうか。
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/search?keyword=TTCN-3&searchCode=SIMPLE
納本の仕方に関してはこちらのブログを参考にしました。
https://mofday.info/national-diet-library-doujinshi/
納本の担当の方の対応も丁寧で特に困る事はありませんでした。その方もどちらかというとこちら側の人間の匂いがするような気がしましたが、それはここだけの秘密です。
最後に
と、いうわけで技術同人誌を作って売ってみたという話でした。
今後の予定ですが、私の都合で次回の技術書典申込は見送ろうと思っています。
今回同人誌を一から書いてみて、丸々書き下ろしはスケジュール的に辛いという事がよくわかったので、ネタがたまったらまたチャレンジしてみたいと思います。
最後に宣伝になりますが、今回出した本(電子版)をboothで電子版を販売しています。
https://yakecsson.booth.pm/items/1571827
この記事を読んで興味を持った、本を見てみたい、投げ銭をしてやろうという方はお買い上げ頂けると嬉しいです。(著者の赤字が減って焼肉を食えるようになります)
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