俗に言うマタニティブルーズ(1)

出産から一夜明け、処置室から病室へと帰ってきた。出産前は分娩室前の処置室へ直行したので病室に来るのは初めて。6人部屋の窓際のベッド。実は以前の破水の疑いの際に入院した時と同部屋同ベッドである。全身の痛みに耐えながらベッドから起き上がり、車椅子に乗って病室にやって来た。看護師さんから今日から歩行の練習をしてもらうと言われる。全身が痛くてヨボヨボなので歩ける自信がない。ベッドに横になる。トイレまで歩いて向かうのが歩行の練習なので、トイレに行きたくなったらナースコールで呼ぶように指示される。体を動かすのがとても辛いのでベッドに横たわっても休んだ気がしない。そうこうしていう内に尿意を感じたので看護師さんを呼ぶ。看護師さんはトイレの個室にも一緒入って様子を見てくれた。これは恥ずかしい。オナラとか出なくてよかった。ちなみにガスは出たのかと昨晩確認された。食事はお粥。梅干しが添えられているが生憎私は漬物が食べられないのでおかずの煮魚の煮汁をお粥にかけて食べる。お粥は翌日まで続いたので早く一般食が食べたいと強く思った。

術後2日目には新生児室へと向かい赤ちゃんと久しぶりに対面。初めての抱っこに緊張。予定より1日早く授乳を開始する。抱っこ、オムツ替え、授乳のアレコレを看護師さんや助産師さんから教わる。メモを持ってくれば良かった。覚えられるだろうか。おっぱいは全く出ない。初めてだから仕方ないと諦める。ゲップも上手く出させてあげられない。これも初めてだから仕方ないと諦める。それにしてもよそのお母さんは胸が大きいな…。そんなことを考えながらヨロヨロ歩きで新生児室を後にする。ベッドに腰掛け持ってきたメモ帳に教わったことを記録する。授乳に行く前にはうがいと、帽子をかぶるのを忘れずに。授乳の時間がスケジュールに組み込まれると入院生活は途端に忙しくなる。退院までの間、毎日3時間おきに(8時〜23時、23時は希望者のみ。夜間早朝はスタッフが授乳)ひたすら新生児室の隣の授乳室で授乳。

術後3日目。許可が出たので忙しい合間をぬって久しぶりにシャワーを浴びた。約1週間振りだろうか。それにしてもおっぱいが出ない。面会に来た母から『あんたおっぱい出るの?』と言われカッとなって怒る。加えて私が痛そうに移動していると父から『まだ痛いのか?』と言われる。父は開腹手術を受けたことがないし母は自然分娩だったので帝王切開の痛みのことは分からない。そばに夫もいたが構わず両親にキレた。両親が帰ってから夫からあれは酷いねと言われる。ヒドイよホント。相変わらずおっぱいは少ない。授乳前に赤ちゃんの体重を計測し授乳後に再度計測。体重の差が母乳の量なのでスタッフに申告すると少なければミルクを受け取りミルクを与える。申告時の数字を聞く限り他のお母さん方は結構母乳が出ているようだ。出ないのは私だけか。焦る。赤ちゃんは途中で寝ちゃうし自力で起こせなくてスタッフの手を借りる。自宅では自分一人でやらければいけないのに。焦る。あれ、赤ちゃんが苦しそうにしている…?気付いた時には新生児室の専属スタッフのおばさんが赤ちゃんを私から取り上げて背中をドンドン叩く。何が起きたのかよく分からず混乱するが私が悪かったことだけは分かる。周りにたくさん人がいるのにボロボロ涙が溢れる。赤ちゃんは自分のヨダレで溺れることがあるから背中を叩くように指導される。冷たく怒っている。私、母親失格じゃん。この夜、ベッドで声を殺して泣いた。(続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?