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最小限住居の設計課題 〜ねこ様と人間教育 ③


はからずもウチの元子猫が逃亡し、戻って来るなどの事件が勃発したことで、表題のシリーズが始まってしまった。なれば、せっかくのネタをお蔵出しするしかない。


というのも、自分は設計事務所を辞めてからというもの、ゼロから人間向け住宅を新築設計したことはないのだが、その代わりにお地蔵様向けとネコ向けが各一軒あったのだ。

もう10年以上も前のDELLのノートパソコンを起動し、データを覗いたらちゃんとありましたのでご紹介。あの頃はちゃんと図面も描いていたのだなあ、と我ながら過去の自分にちょっと関心しております。2007年の設計施工だね。


当時も手すり屋を開業してはおりましたが、その頃は友人の設計事務所の手伝いなどもしつつの、兼業手すり屋でした。そんな頃、住宅改修の依頼をよく受けていたケアマネさんに、ネコの家を作れる人は居ないかという相談があったらしく、なんとかやれるだろうということで、ワタクシに白羽の矢が立ったらしいです。こういう積み重ねで仕事を増やしてきたかと思うと感慨深い。

そのときはなんと贅沢な猫よ、と一瞬思ったのですが、現地に赴きお話を聞けば、切実な事情がありました。なんでも同居猫のお嬢様?と相性がめちゃくちゃに悪く、喧嘩ばかりするので室内に入れなくなり、やさぐれているニャンタロウ君の専用住宅を作ってほしいというご依頼でした。

相性ってあるよね。仕方ない一肌脱ごう。


いまコレが描けるかどうか・・・

お施主様からは、冬寒いのでコタツの導入はマスト、ということで寸法がいろいろ決まっていく。ドギーマンが出していた猫コタツだったかなこれ。
コタツ棟(ご飯も置く)とトイレ棟の分棟式で、土地の条件に合わせて設計している。我ながら改めてみると感心する。

屋根には人間の住まい側からちょっと様子がわかるようにアクリル板を入れているけど、そこですこーし隙間もつくって換気も考慮しているようだし。

そして当然にセルフビルドです。工事中画像はなかったので割愛。


いろいろとギリギリな設計


出入り口は既製品。外から野良の猫がやってくることもあるとのことで、防犯シャッターを入れたいという要望でこうなったような記憶があります。普段は押せばどっちにも開くアクリル扉ですね。手前のトイレ棟、奥の居住棟ともに屋根の軒下にパッチン止め金具があり、外すと奥の方に向かってパカーンと開く仕組み。お掃除やら何やらがやりやすいように全開します。

トイレはカバー付きにしてありますが、それでも飛び散る猫砂対策にはこんな工夫が。

ココを外して内側から掃き出し

いろいろ考えてます。感心感心。

なんか自画自賛祭りになっておりますが、材料も桧の羽目板などを使っているので、12年後にまたオスモカラーで塗り直したときはおじいちゃんになったニャンタロウくんにちゃんと使われて、家もちゃんと建ってました。合板を使わなくてよかった。

当時、こちらは借家ぐらしで猫は飼えなかったので(イタチなどは居た)、羨ましく思った記憶があるのですが、そこから15年余りで、猫軍団に家を占拠されているとは思わなかった。十年一昔ってこういうことですかね。



余談

今回の件をここで取り上げるにあたって、ご家族様に許諾願いのメールをしたところ、丁寧なお返事をいただきました。

当事者のニャン太郎のことですが、残念なことに数年前に旅立って行きました。

ニャン太郎は、◯◯に住んでいた頃の押しかけ猫だったので、正確な生年月日が分からないですが、他の飼い猫の一匹がなくなった後、アライグマがハウスに入ってしまって、最期の数年は家の中に入れてあげて幸せに暮らしていました。

19歳で老衰で天寿を全うしたのですが、私にとってはかけがえのない相棒だったので、しばらくはペットロスになりました。

橋本さんがご存知の、他の2匹の猫たちも、もう既に旅立っていませんが、4年前に新しいオスメスの姉弟猫が2匹やってきて、元気に暮らして私たちを幸せにしてくれています。

 

19歳!そうすると彼の健康維持にお役に立てたのかな。ずっとそこに住み続けたいという希望を後押しする仕事をしているつもりなので、種の壁を超えてそれができたのが嬉しい。

なおハウスは老朽化したので昨年解体されたとのこと、築16年でした。こういうデータも仕事の上では有り難いのです。

それにしてもタヌキに似た、傍若無人のあいつがここにも・・・。ほんとうに厄介ですわ奴ら。


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