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「気をつけ」たら縛られてる?! 〜支持基底面と重心位置のはなし ②

支持基底面と重心位置の話、つづき。



「気をつけ!」という動作が、日本の教育界などにはある。もともとは兵練から生まれた動作かな。

本来は
Rise → Attention → Bow → Sit down

起立、注目、礼、着席。

この一連の動作の翻訳が始まりであろう。その、注目=気をつけてみよ、のときのポーズとしてそれが一人歩きし、「気をつけ」がそのポーズの意味にもなっているのだと思われる。

ご存知とは思うが(若い方はもしかしたら知らないかも)、直立して、両足の内側をつけて揃えるポーズがそれである。


ここで、先の基本法則を思い出していただきたい。

「重心位置が支持基底面の内側にあるとき、人は安定している」

さて、気をつけの姿勢の、支持基底面の特徴はどうであろうか。

二足での起立姿勢での、支持基底面を最小にした姿勢、と言い換えられることにお気づきだろう。


その狭い範囲に重心位置を置かなくてはならないのだから、自然に上体は動きを最小限にせねばならなくなる。つまりおとなしくなる。これがあのポーズの本質である。


つまり、
我々はあの足の位置の強制により、上体の動作の自由を奪われていたのだ。
重力という見えない力を用いて、縛られていたのだ。

な、なんだって〜!!
と言っていただきたいところである。
自分はこれに気づいたとき、ちょっと感動した。

だが事実なのだ。


そして朝礼の時、校長センセの話が長くなると、生徒が倒れる場面に遭遇したことがある方も多いと思う。

そらそうだ、という話になるのである、上の事実を踏まえれば。

体調不良で上体がゆらゆらしたら即転倒、あれはそういうポーズなのである。

「気をつけ!」
これが、二本脚における支持基底面最小ポーズ

ここではまず、それだけ押さえて欲しい。 


朝礼バージョンで話を進める。

長い時間の話になるとき、あらかじめ休め!のポーズになったこともあると思う。

この号令で、少し足を開くことが許される。足のサイズ2つ分くらいだけだが。

だが、これで支持基底面はざっくり2倍見当になる。上体の自由度がそれだけ上がり、好きなポーズを取れるようになったはずだ。
「気をつけ!」が束縛なら、「休め!」は自由への扉であったのだ。


ここまで来たら、突き詰めたい。二本脚における、自由の最大限のありようはどうなのだ、と。

学校でわたくしがお見せするのは、これである。

せっかくなので多めに。


足を横に開いて支持基底面が広がれば、上体の位置もその分だけ自由になる。
皆様もそれぞれ体験していただきたい。だんだん楽しい気持ちになるよ。

「チューチュートレイン」
これが、二本脚における支持基底面ほぼ最大ポーズ

ここではそれだけ押さえて欲しい。 


ちなみに、この話の究極バージョンはこれだと思う。

まさに「バランスの奇跡」―大相撲の醍醐味「立ち合い」について考察する


股割り修行による股関節の柔軟性の確保、
手をつく、つかないによる支持基底面の変化、
仕切りの静と立ち合いの動の切り替えなど、
すごく奥が深い話になっていくのだが、こちらは各自深めてください。
正直、自分も全ては把握できておりませぬ。国技、深い。


ここまでは、介護福祉士系の勉強をした方はボディメカニクスの話でなんとなく理解してる方も多いのでは、と思う。

ただ、それを介護者の重心移動の話としてではなく、利用者さんの動きを中心においてに考える、そういう使い方は教科書にはなかったのでは?

そしてあの概念が真価を発揮するのは、実はむしろこっちじゃないかな、と自分は思っている。



ちなみにトップ画は支持基底面最小にしてなお寛げるお猫様の画像です。四つ足って便利よね。

ようやく、次から転倒防止の話です。


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