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ふたりでは狭い洗い場、でも安全に ~浴室の折戸改修を勧めるワケ


日本の住まいの浴室の大きさは、おおよそ一坪サイズ(両辺の内法がおおよそ1600mmなので、1616サイズと呼ばれます)のものと、それより洗い場の奥行きが短い、0.75坪(1216サイズ)のものにおおよそ分かれる。
広い方は長い浴槽が配置できること(それはそれで問題もあるのだが)、あと何と言っても洗い場が広いことが、介護を考える際にはアドバンテージであると言える。

介護を考えると、基本的に一人で入ることを前提としていた浴室では、介助者の立ち位置がなくなりがちなのだ。訪問介護や、看護の方も、浴室での立ち回りに苦労される方も多いと思う。場合によっては利用者さんの動作空間をひねり出すために、浴槽に片足を突っ込んだり、ということもあるのではないだろうか。

特に、0.75坪(1216サイズ)の場合は洗い場での動作を考えると、利用者さんと一緒に出入りする際の、ドアの形状が問題になりがちなのだ。

こんなケースである。

浴室の内開き戸が、途中までしか開かない?
ですよね~

浴室での介助や、立ち座りの支援に必須と言っていい、シャワーチェアというものが導入されると、とたんに内開き戸は介助者に牙を剥く。この状況で、利用者さんの歩行を支援しながら、この椅子にどのように座っていただけるのか。悩ましい。
この画像を見て、こんな大きいチェアでなく、折りたたみのシャワーチェアを使えばいいんじゃないの?と考える方もいるかも知れない。

こういうやつですね。

折りたたみシャワーベンチ IS【アロン化成(安寿)】

でも、よく考えればそれは罠である。なんせ、使うときには開いて使うのだから、どのみち最初から開いておくしかないのだ。あくまであの折りたたみ機構は、片付け場所の確保、その一点のためにある。

というわけで、それは問題解決にならないので、扉をどうにかすることを考える。
すでに使っているシャワーチェアがある場合、それをシャワー側に向けて、目一杯浴槽側に寄せておいてその寸法を計測し、なんとかなりそうだという目星がつくのであれば、浴室の扉を、こうしてしまうのである。

内側折れ戸に交換

あえてチェアとバスボードを置いて画像を撮ってみました。

浴室への誘導から、バスボードを使っての浴槽への移動まで、これなら介助者も、利用者さんも動きのイメージがしやすいのではないだろうか。なにより、無理な姿勢にならざるを得ない部分が限りなく減る。
ADLがさらに低下した場合でも、シャワー用車いすを利用してでシャワーまではなんとか使える、という一手先の選択肢もできる。

この折れ戸の設置のやり方、カバー工法といいます。在来工法の浴室でも、ユニットバスでも、どちらでも設置可能。


最近うちで使っているのは、ドアリモ 浴室ドア【YKKAP】。



このやり方だと、今まで使っていた浴室の扉枠を残すので、そこの防水は切らない、つまりあらたな防水上の問題が発生しない。
仕事をする側としてはとても安心である。浴室はシロアリも出やすいので、変なところから床下に水を落としたくないのだった。

もともとの扉枠に段差があると丁度いいのですが

ただし、既存の開き戸の扉枠が、上記の青のラインのようにちょっと下がっていると洗面所から敷居が出っ張らず、丁度いいのですが、もともとほぼ平らな場合は段差が2cm程度できてしまいます。なので、そういうときはアルミのスロープを洗面所側につけて躓いたりしないように処理しております。
上の工事後画像にもスロープ、ついておりますね。

うちのサッシ屋さんいわく、ドアリモだと他社のものより少し低く仕上がるとのことで、できる限り敷居段差が小さくなることを優先し、これを使うようになりました。

また、この改修をやると、副次的な効果もあります。

中で誰かが倒れても安心

内倒しで外せる仕組みなので、中で誰かが倒れて開閉できない!ということになっても安心できます。
ま、この機構は最近の内開き戸でもついているはずではありますが。

ただ、倒れるに関連して落とし穴も。

一見、良さげな話に聞こえますが

このドアリモという製品、ガスケットタイプと、ガスケットレスの2種類を選択できるのですが、うちはあえてガスケットタイプで発注しております(価格は変わりません)。

なぜなら、中で誰かが転倒して、半透明のポリスチレン板が割れたりしたときに、ガスケットレス構造は樹脂板とアルミ部を接着固定しているので、交換ができないからですね。
お掃除しやすい、は確かにあるかも知れないけれど、サッシ屋さんと話していて、そういうケースがあったことを知ってからは、あえて交換可能であることを優先して選んでおります。

というわけで、介護するとき、浴室の洗い場が狭く感じるはどうやらこの内開き戸のせいだ!という皆様、もし利用者さんの出入りの動作に問題があるのなら、介護保険給付の対象にもなりますので、ケアマネさんなどにご相談されるのはいかがでしょうか。
浴室での転倒は、利用者さんだけでなく、介護者も怪我をするリスクが高いですし、何より無理な介助姿勢は腰痛の原因にもなります。

家で、誰もが気持ちよくお風呂に入り続けるために、こういったところの手入れも実は重要なのだよね、というお話でした。



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