見出し画像

ツルツルの洗い場、どうにかしたい ~床材変更のギリギリを攻める


悩み多きお風呂周り、洗い場床の仕上げについてのお話です。

古いお風呂だと、どうしても防水上の理由から床がタイル仕上げになっていることが多く、それが浴室の様々な問題を引き起こしていることがあります。

まず、ひび割れが出来てしまう。これ、そこから必ず水が入ります。なので、それをなんとかしようとシーリングを打ったり、いろいろな戦いの跡が見られる事が多いのですが、だいたい湿気が回り込んで剥がれてしまっています。水は建物の外敵としては最強レベルなのですね。
そこからの悲しい展開はあえてリアルには書きませんが、腐朽菌さんとシロアリさんが最凶タッグを組んでいることが多いです。

また、使うと濡れる、タイル表面に水が浮いて摩擦が減り、滑る。真上から踏みしめるならまだマシなのですが、変な角度で踏み出すと文字通り足を掬われたりするわけですね。

そして、硬い。なので転ぶとダメージが大きい。なので皆様、ホームセンターで買ってきたスポンジマットなどを使っていたり、福祉用具屋さんのカタログにある滑り止め(介護保険の給付対象外なんです)を敷いて対策としていたりしますが、使用頻度が高ければそれだけすぐに老朽化します。

あと、特に冬場、冷たい。その頃の住宅の浴室は無断熱ですからね。外からの外気も入るだけでなく、タイル床も冷えた地面の温度をそのまま熱伝導で移しているわけです。


で、介護保険における住宅改修では、手すりの取付や扉の取り替えだけでなく、
「滑りの防止または移動の円滑化のためのまたは通路面の料の変更」というジャンルがあります。我々は床材変更と呼び習わしておりますが。

でもこれ、建物の老朽化とか、冷たいとかという理由に対しては、100%改修は認められません。車で事故を起こしてもないのに保険請求するようなものだからです。介護保険はあくまで介護の保険、なのですね。

なので、例えばお風呂の洗い場が滑りやすいのでなんとかならないか、というご希望が出た場合、ちゃんとそれを介護保険の申請理由に落とし込めるかを確認したうえで、微妙な場合はあらかじめ担当部署に確認して、お見積を作成しつつ、それが保険の対象になるかを睨みながら進めていきます。保険者によって、このあたりは濃淡があるのでそこまで神経を使わなくても良い地域もあるかも知れませんが。

なぜそんなに神経を使うかというと、この画像を見ていただきたく。

がっつりヒビ割れてますね

要は、老朽化に対しては介護保険を出さない、という大原則とカチ合うからですね。滑りやすいけど老朽化もしている床、がほとんどなわけです。

こちらは介護保険を使う際、事前申請に必要となる「住宅改修が必要な理由書」に、利用者さんのADLや、入浴介助の体制なども正直に書きます。
それをもとにやり取りをして、役所担当の方の、「こ、これは老朽化が真の理由じゃないんですかね・・・」という目線をガッチリ受け止めて、書面できっちりそれは違います、あくまで滑りやすいからです、ということを抜かりなく伝えられるよう、あくまで事実をベースにして、書いているのです。

さて、晴れてその関門を突破すると、下のような工事が可能です。

ここは左官屋さんに下地をお願いせざるを得ず
翌日、浴室用塩ビシートが貼られました


これで、あくまで洗い場の床が滑りにくくなりました。
そして、あくまでおまけですが、床のひび割れが完全にカバーされ、さらに万が一の転倒の際のクッション性が確保され、床も冷たくなくなりました

副次的な効果が随分たくさんありますが、介護保険的には、あくまで床を滑りにくくする工事です。ここを押さえておいていただきたく。

珍しい床タイル貼りのユニットバス

こういった奴もありました。一部タイルの剥離が出てきた、ユニットバスのタイル床に対して、床材変更が認められた事例ですね。

こちらは浮きタイル接着後、内装屋さんのパテ掛け
外側の丸み部分までは貼れませんでしたが

こんなふうに滑りにくい床になり、副次的にタイルの剥がれやカビのつきやすい目地掃除からも自由になりました。副次的にです。


なお使っている浴室用塩ビシート、うちは東リのバスナシリーズです。


これ厚さ3.5mmあるので、クッション性と断熱性は高いんですが、なにせ曲がらないんですね。なので曲面施工は不可です。

上の事例がリアルデザイン、モザイク柄は結構自然なので使いやすいです。下の事例はフローレ、50角のタイル風です。色が合えばぜひ、という感想ですね。

こんな形での改修も、あくまで滑りの防止のためであれば、介護保険を使って出来ることがあります。でも、原則として20万円の改修費を何度にも分けて使うような仕組みなので、優先順位を考えたうえで、あくまで風呂場の床が滑りやすいのが一番困るわ、という場合は積極的にご検討いただけると、転倒事故防止などの観点からお勧めしたく。

あと、副次的効果も大きいですしね。

この記事、すごく役に立った!などのとき、頂けたら感謝です。note運営さんへのお礼、そして図書費に充てさせていただきます。