某日のブログから 2016年 全員一致による決定は無効

某日のブログから

あるところで、一般公開していないブログを書いていました。週一くらいの更新です。一昨年度のブログの中から、ある日の記事を再掲していきます。

全員一致による決定は無効

今週は、月曜日と火曜日は稚内市で初級職員研修、木曜日は会社で打ち合わせ、金曜日は高等検察庁でマネジメント研修です。日曜日の天候が崩れ、稚内への移動も、飛行機からJRへと変更しました。最近道内の天気が悪くなり、移動に影響が出ることが多くなってきています。

稚内市での初級職員研修では、初級職員に求められる能力、仕事の管理、チームワーク、コミュニケーション、問題解決を2日間で行います。

1日目には、コンセンサスゲームを行います。コンセンサスゲームでは、グループ内で合意を得るために、徹底的に話し合いを行います。

私たちはチームで意思決定するときに、多数決の方法をよくとります。多数決は確かに民主的な方法ですが、多数決が機能するためには、2つの前提があります。一つは、全員が多数決という方法に納得しているかどうか、もう一つは、少数意見が取り上げられているかどうかです。

このゲームでは、多数決の方法を取らず、納得するまで話し合いで決めていきます。

しかし、組織の中でお互いに真摯な態度で議論し、意見の一致(コンセンサス)を得ることは容易なことではありません。意見の違いは人間そのものに焦点があたり、感情的な対立を招くことが多いからです。あいまいな妥協や取引をせずに、地位や肩書きによる力も排除しながらコンセンサスを得るということは大変なことです。

メンバーの一人ひとりが持っている知識、経験、技術、物の見方・考え方、情報等は、それぞれ個別のもので、そこから出てくる判断も当然違ってきます。しかし、そうした各メンバーの中に存在する、あらゆるリソースを活用してこそ、組織としての判断(意思決定力)は向上されます。

時には反対意見もなく、多数決を行わなくとも、簡単に意見の一致を得ることがあります。日本の会議では、よくみられる傾向でもあります。しかし、簡単に意思決定することは、必ずしも良いことではありません。安易な全員一致は、かえって危険です。

全員一致による決定について、次のような考え方があります。

それは、イザヤ・ベンダサンの『日本人とユダヤ人』で紹介されたサンヘドリンの規定である、「全員一致による決定は無効とする」というものです。全員が誤りを犯している可能性があり、検証できないという理由からです。サンヘドリンとは、古代ユダヤの国会兼最高裁判所のようなもので、七十人で構成されていました。

イザヤ・ベンダサンの『日本人とユダヤ人』については、真偽、諸説ありますが、ここでは真偽は問わず、こういう説もあるということで留めておきます。

意見の不一致の重要性についてドラッカーも以下のように述べています。

成果をあげる者は、意図的に意見の不一致をつくりあげる。そのようにして、もっともらしいが間違っている意見や、不完全な意見によってだまされることを防ぐ。
Peter F. Drucker 『経営者の条件』

意思決定の過程で意見の不一致が必要だという理由を、ドラッカーは三点述べています。

第一に、組織の囚人になることを防ぐからである。あらゆる者が、決定を行う者から何かを得ようとしている。特別なものを欲し、善意のもとに都合のよい決定をしてもらおうとする。(中略)
第二に、選択肢を与えるからである。いかに慎重に考え抜いても、選択肢のない決定は向こうみずなばくちである。決定には常に間違う危険が伴う。(中略)
第三は、想像力を刺激するからである。問題を解決するには想像力は必要ないとの説がある。だがそれは数字の世界だけである。
Peter F. Drucker 『マネジメント』

意見の不一致が問題への理解をもたらしてくれます。どのような問題であれ、意見の不一致が皆無などということは、ありえません。議論もされずに決められたことが、後に不祥事となった例は枚挙にいとまがありません。

意見の不一致を恐れず、意見の不一致こそが宝の山です。意見の不一致の理由は必ず突き止めなければなりません。そこには、必ず何かの真実が隠されています

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