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VOL.14寄稿者&作品紹介35 久禮亮太さん

昨年4月発行の「ウィッチンケア第14号」では、ご自身が書店をオープンするまでの過程を、出版界への率直な思いも交えてご寄稿くださった、目黒不動前にある「フラヌール書店」の店主・久禮亮太さん。開業に必要なおカネ、実店舗を施工するのに必要な資材など、かなり具体的に踏み込んだ...いわば〈経営ハウツー〉的な要素も含んだ内容でありながら、読了後に残るのは「...なんだか、ちょっとジーンとしちゃったよ」みたいな、名コラムに心を揺さぶられたような感覚。筆者のお人柄や、お店が目指す書店としての在り方が伝わってくる一篇だったからだと思います。いやぁ、最近はついに「無人本屋」なるものまで世の中に登場するようになって...拙宅の近所では「無人冷凍餃子店」というのができては潰れていますが、本と餃子の売り方が同じになった2024年。今度久禮さんにお目にかかったら、どう思うのか伺ってみたい気がしてきましたが...それはともかく、久禮さんの小誌今号への寄稿作は〈フラヌール書店一年目の日々〉。タイトル通りの日記風な展開ですが、実店舗ならではでの、お客様等との交流の様子が描かれていて、これがとってもおもしろいのです!



【四月一四日(金)】のエピソードは、読んでいてスリル満点。“アラブ風の顔立ちをした十代に見える青年”が来店して、店主にスマホを見せる。そこには“Jugendgedenken, Hesse”との文字が...それを解読して、ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』(草思社文庫)を出してきて青年に渡せる店主様の博学さにびっくりしますが、その青年はさらに、今度は“Hesse”という作者名(ヒント)もない、ドイツ語の作品名だけのスマホ画面を...この結末は、ぜひ小誌を手に取ってご確認くださいね。


お客様との話の他にも、たとえば出版社の人や書店に関わる知人、またご近所のPTA関係者など、とにかくお店を開いているといろんな人がやってきては多種多様な相談を持ちかけて、それらに対応しながら自問自答する久禮さんの姿が描かれています。ときには“あー!! と声が出そうにな”る(実際は無言...)ような著名作家が、不意に出没することもあるのだそう。みなさま、ぜひ目黒に行くさいは、フラヌール書店さんに立ち寄ってみてください! 小誌もBN含め、お取り扱いいただいております(←ちゃっかり宣伝)。


ウィッチンケア第14号(Witchenkare VOL.14)発行日:2024年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりー/発行人の屋号)
A5 判:248ページ/定価(本体1,800円+税)
ISBN::978-4-86538-161-0  C0095 ¥1800E 


八月四日(金) ペブルズ・ブックスの頃から通ってくれているお客様で友人のギタリストSさんが来店。彼はギターが仕事で本が趣味、私は本が仕事でギターが趣味。他者のニーズに応えることと自分の好きなことを追求することのバランスについて、二つの共通する分野でお互いに反転したアプローチをとっていることが面白くて、いつもおしゃべりが尽きない。仕事で大切にしていることは、暗黙知を言語化して再現性を持たせること。趣味で大切にしていることは、「下手の横好き」を全開にして人前に出ていくこと。そんなふうに二人で一致した。

 

 ~ウィッチンケア第14号掲載〈フラヌール書店一年目の日々〉より引用~


久禮亮太さん小誌バックナンバー掲載作品:〈鈴木さんのこと〉(第6号)/〈フラヌール書店ができるまで〉(第13号)


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