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VOL.14寄稿者&作品紹介38 ふくだりょうこさん

「ウィッチンケア」には第10号からご寄稿くださっているライターのふくだりょうこさん。フォローしているSNSからは、いつもお忙しそうな様子が伝わってきて...今月になってからだけでも、ヴィラでの宿泊レポートや料理記事でのライティング、そして、いわゆる〝イケメン〟芸能人へのインタビューも続々と流れてくるのです。問題(←といっても私/発行人側の...)は、その〝イケメン〟さんたちが誰なのか、よくわからないこと。川西拓実さん、鈴木達央さん、木全翔也さん、内田雄馬さん、森次政裕さん...スイマセン。。じつは私、あの旧Jのみなさまでも、顔と名前が全員一致するのは...「大野さん」を最後に覚えたあのグループまで。ここ数年は大河ドラマで活躍した役者さんを覚えるようにしています。「光る君へ」だと、一条天皇と花山院と藤原伊周とまひろの弟の顔と名前は、なんとか一致させられるよう頑張ります(映画で見かけた人は多いのだが...混線気味)。それで、そんなふくださんの寄稿作のタイトルが〈にんげん図鑑〉。こちらも「顔と名前が一致」的なストーリーなのですが、でもボケ気味な私のボヤキなんかよりも、もっとずっとシリアスな、ディストピアの可能性を描いた一篇です。



〈にんげん図鑑〉とはサブスクアプリの名称。月額1万円と高価だけれども、主人公である「私(みゆき)」の両親が、娘の安全のために契約してくれています。たとえば通学中に押し倒されたりした場合、相手の写真を撮影してそのアプリで通報すると、過去の〝犯罪〟歴を照合してくれる、という機能が付いています...とここで書いているだけで陰々滅々な気分になりますが、まあそろそろ、民生品として登場しても驚かないかも。対して「私」の友達のマリちゃんが使用しているのは〈いいひと図鑑〉。こちらは人の善行を見つけて通報すると、その人にも通報者にもポイントが加算されて、貯まると好きな商品に交換できる...ますます陰々滅々な気分ですが、その理由は...理由をいちいち言葉にしなくても「だよね」で通じる人とともに未来を生きたいと思いますが、たぶんそんなでは〝お花畑〟と呼ばれそうで、なんとも。

この作品は「私」とマリちゃんが両アプリとも完全に肯定するわけでもなく、否定するわけでもなく終わっています。そこがなんとも、ふくださんの匙加減なんですよね。ぜひ小誌を手にしてご確認ください。そして、今後はデジタル・ネイティヴの時代で、もうすでにほぼ、なんにでも履歴が残るような世の中だし。ちょっと、いにしえの、会社の上司が部下に「オレは言ったぞ、聞いてなかったのか」とか「なんだそれ、オレは聞いてないぞ」とか怒っていられた時代が、懐かしく感じられました。


ウィッチンケア第14号(Witchenkare VOL.14)発行日:2024年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりー/発行人の屋号)
A5 判:248ページ/定価(本体1,800円+税)
ISBN::978-4-86538-161-0  C0095 ¥1800E


「にんげん図鑑よりいい図鑑アプリが出たんだよ!」
 うつむく私と裏腹に、マリちゃんは声を弾ませて言い、スマホの画面を見せてくる。
「これこれ! 『いいひと図鑑』!」
「いいひとずかん……?」
 マリちゃん曰く「にんげん図鑑」とシステムは同じだけれど、目的は真逆のアプリなんだそうだ。いいことをした人にポイントが加算されていく無料アプリ。
「対象はアプリに登録している人だけなんだけど、『いいこと』が投稿されるごとにポイントが加算されていって、貯まると好きな商品と交換できるんだよ!」
 友だちが良いことをしていたとしたら、その友だちの名前を検索。
 ただいいことをした人を見つけたときに、アプリ専用SNSにそれを書き込むだけでもOK」
「無料アプリなのにすごいね」
「善意で寄付する人たちが多いから成り立っているんだって」
 無料アプリで商品ももらえるなんて、「にんげん図鑑」よりもだいぶお得度が高い。
「でも、他人のいいところを見つけて投稿、なんて、ちょっと偽善的じゃない? いい人ぶってるというか。それに、投稿するだけなら、嘘でもいいわけでしょ」
「人の悪いところを見つけようとする人より、いいんじゃないかなあ。あと、運営のチェックが厳しくて、嘘を投稿した人は垢BANされるんだよね。どういう人たちが運営しているのかが謎なんだけど」

 

~ウィッチンケア第14号掲載〈にんげん図鑑〉より引用~
 
 
ふくだりょうこさん小誌バックナンバー掲載作品:〈舌を溶かす〉(第10号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈知りたがりの恋人〉(第11号)/〈死なない選択をした僕〉(第12号)/〈この後はお好きにどうぞ〉(第13号)
 


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