見出し画像

VOL.14寄稿者&作品紹介32 柳瀬博一さん

当たった! しかも早かった!! ...ええと、なんで感嘆符を付けて騒がしくしているのかというと、柳瀬博一さんの最新の著書『カワセミ都市トーキョー: 「幻の鳥」はなぜ高級住宅街で暮らすのか』が今年1月に刊行されたこと、について。じつは前号への寄稿作の紹介で私(←発行人)は、以下のように書いていたのです。“柳瀬さんの第13号への寄稿作は「カワセミ都市トーキョー 序論」。ちなみに柳瀬さんの初寄稿作(Witchenkare Vol.5)のタイトルは「16号線は日本人である。序論」(...これは近い将来、カワセミを介した都市論/東京論のような本を上梓するための、予告なのでしょうか?)”。...それで、思わず一人盛り上がりを...スイマセン。同書の書評は(私の知る限りでも)朝日新聞毎日新聞東京新聞など多数。NHKのラジオ深夜便では、小誌のお取り扱い店でもある本屋titleの辻山良雄さんが2月に紹介しています。ちなみにアマゾンのレビューは...★★★★★がほとんど。カワセミを介した都市論、と多くの評者が捉えているようで、私もそのように拝読しましたが、個人的にはタイトルの付け方も、改めて秀逸だなぁ、と感じ入っています。「都市」を挟んだ左右のカタカナが絶妙のバランスで、しかもポップな響き。鳥の本でもお堅い都市論でもないよ、と未知の読者にも呼びかけているようで...。さて、そんな柳瀬さんの今号への寄稿作〈湧水と緑地と生物多様性 ~「カワセミ都市トーキョー」の基盤〉は、御著書『カワセミ都市~』からさらに先へと踏み出すための一篇、のように感じました。



本作に頻出するキーワードのひとつは「小流域(地形)」。“旧石器時代以降、東京都心部に進出した人類は「圧倒的に暮らしやすい一等地」として、都内の小流域源流部に居を定め、縄文、弥生、古墳、戦国時代とずっと「勝ち組」が暮らしてきた”との一文を前提として、筆者はカワセミを介しつつ、かつての「死の川」から復活した、1990年代以降の都内の河川に着目します。なかでも妙正寺川についての記述が詳細ですが、じつは小誌今号、荻原魚雷さんがタイトルもズバリの「妙正寺川」という作品をご寄稿くださっていまして、こういうシンクロニシティ、発行人としてぜひ読者に楽しんでもらいたいです。


終盤では港区の“再開発の緑化”について語られますが、シンクロニシティということでは、じつは中野純さんの今号への寄稿作「うるさいがうるさい」とも論調が通じ合うところがありまして...未来へのSOS、という点で。なんにしても、柳瀬さんはきっと、次作の構想がすでにあるのだと思います。SNS各所への投稿などから察するに、都市再開発に関する構造的ななにかを視野に捉えた...もしまた当たったら、遠くない将来にぜひ「!」「!!」をたくさん使って紹介させてください!


ウィッチンケア第14号(Witchenkare VOL.14)発行日:2024年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりー/発行人の屋号)
A5 判:248ページ/定価(本体1,800円+税)
ISBN::978-4-86538-161-0  C0095 ¥1800E 


 そんな妙正寺川にもカワセミのカップルがいる。毎年必ず子育てを行っている。水中の生き物をとって暮らすカワセミが、なぜ魚のいないこの川で暮らせるのか。
 この川にはカワセミの餌が大量にいる。中国産のシナヌマエビだ。主に釣り餌用に輸入された外来種で、いったん生き物がいなくなったこの川で、珪藻を食べながら大量に繁殖している。妙正寺川のカワセミは、このシナヌマエビをひたすら食べ続けて、子育てを行う。
 川のすぐ傍には、湧水由来の池がある緑地、哲学堂公園が並んでいる。モツゴやメダカが暮らしており、カワセミはこちらも縄張りにしている。哲学堂公園には、ツミやオオタカも飛来する。冒頭の緑地や哲学堂公園のように、都心の都市河川が削ってできた崖線沿いの湧水のある緑地や公園は、源流部であるがゆえに、高度成長期の公害や汚染から逃れることができた。


~ウィッチンケア第14号掲載〈湧水と緑地と生物多様性 ~「カワセミ都市トーキョー」の基盤~〉より引用~


柳瀬博一さん小誌バックナンバー掲載作品:〈16号線は日本人である。序論 〉(第5号)/〈ぼくの「がっこう」小網代の谷〉(第6号)/〈国道16号線は漫画である。『SEX』と『ヨコハマ買い出し紀行』と米軍と縄文と〉(第7号)/〈国道16号線をつくったのは、太田道灌である。〉(第8号)/〈南伸坊さんと、竹村健一さんと、マクルーハンと。〉(第9号)/〈海の見える岬に、深山のクワガタがいるわけ〉(第10号)/〈富士山と古墳と国道16号線〉(第11号)/〈2つの本屋さんがある2つの街の小さなお話〉(第12号)/〈カワセミ都市トーキョー 序論〉(第13号)

※ウィッチンケア第14号は下記のリアル&ネット書店でお求めください!
 

 
 
【最新の媒体概要が下記で確認できます】



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?