フリーランスには休みがない?

「休みを休みとして確保できる人でないと、(フリーでやっていくのは)難しい」

フリーを続けていくうえで、もっとも重要になるスキルは「タスク管理」まわりの能力である。複数案件の〆切を整理しつつ、進行スケジュールを見通し、先の案件についても交渉を進める。

……というのが理想なのだが、私はフリーとして独立してからこういうことをうまくできた試しがない。先の予定についてはなんとなく、テンションが乗ったときに取りかかろう、くらいに考えつつ、〆切が近づいてきたものから脅迫感に駆られて片付けていく、という具合である。

幸いWeb系のメディアは〆切がざっくりしているものも多いので、こういうやり方が災いしたことは(多分)ないのだが、脅迫感ベースのタスク管理で一番問題なのは「はっきり休みがとれない」ということだ。

夏休みの宿題先に片付けておく系メンタリティの持ち主であれば、手を付けられるものから消化し、余裕が作れたら休みを取ればいいわけだ。しかし脅迫感ベースだと、「あぁこれあと3日くらいか、そろそろ本腰いれんと……」とか言いながら、「書くテンションが作れない」とか言い訳を重ね、そろそろやばいという段になって集中する、という具合である。3日間、ウダウダと作業しているのかしていないのか判然としない時間が続く。ちょうど夏休みの間、「自由研究何にしようかな~」とか言って、アイディアが浮かぶことを期待しながら気散じに興じ、何も浮かばないまま最終日を迎えるのと同じように、である。

そのくせ、夏休み中にどこかへ出かけることを持ちかけられたりしても、宿題のことが気にかかって満足に応じることができなかったりする。要するに、「タスクが脳に居座る時間」をいたずらに増やすばかりに、明確な休みを作る余裕がなくなるのだ。自業自得の極みである。

いっそのこと、〆切直前まですべてを忘れ、100%ギリギリで取りかかった方がよさそうなものだが、小心者の私にはそういうことはできない。なんとなく、「案件を恐れる時間」を作ってしまうのである。

これを単なる「悪癖」として私自身が認識すればいいのだけれども、意外とこの「恐れる時間」がプラスに働くこともあるからややこしい。案件を相対化することで、求められている要件がクリアになったりするのである。いや、ただの言い訳かもしれないが。

私は自身の文章力そのものには自信を持っていない。ライターとしての売りは、諸般の事情を察する能力であると自己規定している。諸々のニュアンスを咀嚼するにあたり、ウダウダとした「草食動物しぐさ」が必要であるようにも感じている。

しかしそろそろ、明確に休みを作れないことが切迫した問題に感じられてきた。プライベート云々もそうであるが、インプットの時間が作れない、というのもこの先問題になりそうだ。案件に直結しない情報の積み重ねが、後々引き出しの多さにつながるのである。このままでは、ペラいその場しのぎの記事しか書けなくなってしまうのではないか。

解決策は見えない。ライティングにおけるウィダーインゼリー的なものが、どこかにあればいいのだが。

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