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軽音楽部のみんなへ

はじめに

軽音楽部の活動は、意外と難しい。吹奏楽部のように全員でひとつのバンドではないから、部員全員が顔を合わせる機会も少ない。だから、野球部のように全員でひとつのチームにはなかなかなれない。バンドという小さな単位の集合体であり、そのバンドも、少し油断すると空中分解して解散してしまう不安定な単位だ。部員同士のトラブルも起こる。しかも、学校のクラブ活動として成立させるとなると、さまざまな制約を乗り越える必要がある。生徒の立場になってみれば、バンド毎に好き勝手できない窮屈さもあるだろう。でも、放課後、無料で練習スタジオ(練習室)を使える。全校生徒数百人の前で演奏できるなんて、小さなライブハウスでは味わうことのできない感激がある。公式大会に公欠で参加して、自分達の表現活動を全国に広げるチャンスもある。学校の部活動ならではのメリットもあるのだ。

この文章は、軽音楽部の1年間の活動を月毎にポイントを絞って説明したものだ。そもそも、顧問が最初から担当する分野の専門家であることは稀だ。長い時間と苦労を経て専門家になるのだ。だから、新しい顧問の先生が軽音の活動について詳しくない場合だって、もちろんある。おまけに、コロナ禍で思うように部活動が出来ないまま2年間が過ぎてしまったので、部員にも通常の活動の様子が十分に継承されていない。どうしたらいいのか誰にも分からない事態が起きるかもしれない。その時は、この文章を参考にして部員と顧問で相談しながら活動計画を立てて欲しい。もちろん、ここに書かれているのはひとつの例に過ぎない。だから、これにこだわらず新しい方法や取り組みにも挑戦すべきだ。とりあえず、どのように活動をしてきたのか分かるようにまとめてあるので、参考にして欲しい。

4月

<部員勧誘と新入生歓迎会>
新年度が始まると、まず生徒会主催の新入生歓迎会が開かれます。これは、実質的なクラブ勧誘のスタート行事です。各部が5分程度の持ち時間でクラブ紹介を行います。最近は事前に動画撮影をして上映するクラブも増えましたが、生で実演する部もあります。軽音も有志数名で作った合同バンドが生演奏を行うパターンで主に対応してきました。

もちろん、運動部の中には入学式前のオリエンテーションから盛んに勧誘を繰り広げるクラブもありますが、部員は多ければ良いというものでもありません。特に軽音の場合、黙っていても本当にバンド活動がやりたい生徒は入部してきます。逆に雰囲気でなんとなく入部されると、幽霊部員化して部にとっても本人にとっても残念な結果になりがちです。ですから、くれぐれも入部を押し付けるような勧誘はやめましょう。

実は、部員数が多くなれば多くなるほど君たちが練習室を使える時間は減ってしまいます。かつて、部員数が80名に膨れ上がり、校内でも最も部員数が多いクラブだった時期もあります。5で割っても16バンド、掛け持ちも含めて20バンドがひしめき合う状態でした。そうなると、一つしかない練習室の使用時間を20等分することになります。放課後16時から19時までを練習時間と考えても1日3時間。それが月から金までの5日間で15時間。各バンドに割り当てられる時間は、単純な割り算でたった45分になります。

週に1回45分だけでは正直言って練習になりません。かと言って、田舎では貸しスタジオも限られていますし、安くても1時間1500〜2000円の費用がかかるでしょう。ですから、各学年にバンドが2〜3バンド、人数にして15人以内が本校での適正な部員数です。もちろん、希望者を拒む必要はありません。多ければそれなりの工夫をして部活動を行うまでです。また、楽器経験者である必要もありません。大切なのは、月並みですが「やる気」です。練習室に見学に来た新入生には優しく声をかけて、活動の様子を話してあげてください。例年、放課後の練習室を使った新入生歓迎LIVEも開催しています。気軽に新入生が参加できるよう、各バンド1〜2曲であまり長時間にならないように配慮しましょう。

<クラブ結成式>
いよいよ、新入部員とご対面です。まずは部長、副部長など部の役員から自己紹介を始めましょう。続いて3年部員、2年部員、そして新入部員の順です。その後、顧問の先生方にお話いただきます。結成式は2、3年生についても部継続の意思確認という意味があります。また、年間の活動計画と当面の練習日程、上位団体(高等学校文化連盟)への加盟や部費の徴収方法、個人楽器の保管や練習室の施錠解錠についてなど、年度初めに確認しておきたいことが顧問から説明されるはずです。なお、本校では新入生がバンドを結成するのは7月の文化祭終了後です。同時に3年生は通常の活動を引退し進路活動に専念します。以後は2年生が新部長となり活動を引き継いでいきます。

<練習日程>
平日の練習日程は顧問に割り振りをお願いしましょう。原則として放課後の3時間程度を使い、1日につき3〜4バンドを目処に計画します。ただし、この時点で割り振るのは2、3年のみです。1年生は全員で視聴覚教室を借りてパート別の基礎練習を行います。その内容については後ほど説明します。

さて、土日祝日は練習時間を十分に確保できます。積極的に活用しましょう。ただし、練習室はスタジオ予約制です。また、休日は原則として学校は施錠されており、部活動をする場合は顧問が使用施設を解錠施錠する必要があります。事前に顧問に申し出て練習室の予約状況を確認し、2時間程度を目安に予約しましょう。あまり欲張って長時間予約しても効果は期待できません。だらだらやるより目標を決め短時間で集中して練習した方が上達します。

なお、学校の行事や顧問の都合で練習できない場合もあります。そもそも、顧問の先生方も休日はお休みです。練習がある場合は休日返上で学校に来ることになるのです。ですから、せめて事前予約を取ってください。当日に「練習室を開けてくれ」と突然電話をしてきても対応できません。また、連休や長期休業の場合は顧問に練習計画を立ててもらいましょう。事前に指定の練習日を発表していただき、バンドリーダーが中心となってメンバーと相談をし、必要なら練習日の変更を申し出ましょう。

<新入生の基礎練習>
新入部員は、かなりの楽器経験者もいれば、担当楽器も決めていない全くの初心者もいます。また、限られた人数の中でバンドを結成するためには、担当楽器の調整が必要です。そこで、まずは担当する楽器を決めます。仮に15人いたとすれば3バンド程度の結成が見込まれます。つまりドラム、ベース、キーボードも3人程度欲しいことになります。この場合、掛け持ちはできるだけ避けたいところですが、どうしても希望者がなければ、一人2バンドまでで考えます。学年を超えたバンド結成も不可能ではありませんが、3年間の継続性を考えるとあまりお勧めできません。ギターは各バンドに複数いても大丈夫です。なお、ボーカルのみという選択は原則なしにします。ボーカル担当者もオリジナルの曲を作ったりバンドサウンドを理解するためには、何か一つは楽器ができた方が良いからです。ギターかキーボードが作曲しやすい楽器です。必ずしも希望通りの楽器を担当できないかもしれませんが、それは吹奏楽部でも野球部でも同じです。前向きに考えてみましょう。こうして、バンドを組む前に担当楽器を調整して決めておきます。

続いて必要な楽器等の購入について考えていきます。楽器のの購入については、経験のある2、3年生が地元楽器店や通販などの情報を知っていますから指導に来てもらいましょう。ドラムとキーボードは原則として練習室にある部所有の楽器を使いますが、ドラムスティックだけは消耗品ですので個人での購入が必要です。最近は安価な練習用の電子ドラムやキーボードもありますので、個人で購入して自宅で練習する部員も増えました。購入する場合は保護者ともよく相談し、4月末までを目処に入手してください。購入が難しかったり時間がかかりそうな場合は、無理せず顧問にも相談しましょう。すでに購入して持っている場合や家族から借りられる場合は、次の練習から持参して基礎練習に入ります。基礎練習では、全員でリズム練習や譜面の読み方から始めます。基本的な内容を固めたら、2、3年生に来てもらって担当楽器別に基礎練習に入りましょう。

5月

<公式大会への出場>
中間考査の1週間前から部活動は停止します。軽音楽部は学業優先です。補習や模試、検定試験がある場合はそちらを優先します。しかし、5月下旬には公式大会の地区予選が控えています。おおむね、この予選会には20校50バンド程度の参加があります。ベスト16に入賞できれば県大会に進出できます。入賞するためには、限られた時間を有効に使って計画的に練習を進める必要があります。

<大会エントリーと校内選考>
ゴールデンウィーク前には、各バンドの参加意思を確認し、エントリーシートを記入提出してもらいます。エントリーできるのは各バンド1曲のみ。なにしろ、2日間の大会期間で50以上のバンドがリハーサルをした上で、本演奏して審査まで受けるのです。各バンドに与えられる時間はセッティング込みの7分間だけ。この短時間で審査員に訴えられる最高のパフォーマンスを準備しなければなりません。単に演奏技術や楽曲の完成度だけではなく、バンドの持つ個性や世界観、ビジュアルを含めたパフォーマンスなども審査対象です。オリジナル曲かコピー曲かは問われませんが、最近はオリジナル曲で勝負するバンドが増えました。

また、エントリー数が許容できる数を超えた場合は、一つの高校で何バンドまでと言うように出場制限がかかります。そこで、事前に各高校でバンドの優先順位をつけておくよう指定されています。このため、連休中に部内オーディションを実施します。全バンド演奏後、部員一人につき3票を上限に投票し、自分たちが代表にしたいバンドを選びます。大会は前日にリハーサルを行うため、遠隔地で開催される場合は宿泊する場合もあります。顧問に引率計画を立ててもらい、公欠届をクラス担任に提出し、保護者の承諾を得て大会に参加しましょう。通常は出演者全員に加え、保護者や部員を含む多くの観客が見守る中での大会になりますが、コロナ禍の今年度は無観客、審査のみの形式で開催されました。

<1年生の課題曲>
1年生部員には基礎練習を継続してもらいますが、同時に課題曲のスコアー譜をを渡します。今年度の課題曲はあいみょんの『ロックなんか聞かない』とMONGOL800の『小さな恋のうた』でした。1曲目は全員が知っている楽曲でかつコピーし易い曲を1年生の希望も聞きなが選びます。ただし、初心者もいるので、BPMが早すぎる曲は無理です。難しいソロパートがある曲も避けます。まずは、緩やかなテンポで歌い易い曲を選びましょう。2曲目はやや難しい曲に挑戦です。と言っても、コピーしやすいスタンダードな曲がお勧めです。『小さな恋のうた』は古い曲ですが、今の高校生でも知っている名曲ですね。テンポが早くリズムキープが大変ですが、コピーし易い上にドラムを鍛えるにはちょうど良い曲です。楽譜はインターネットの楽譜サイトからもダウンロード出来ます。簡単なコード譜を見ることのできるサイトもありますが、譜面の読み方も含めて練習ですのでスコアー譜を利用します。楽器パートだけでなくボーカルやコーラスパートも全員で練習します。全員が歌えるようにするのです。

こうして、全員、全パート、同じ課題曲を演奏できるようにします。ある程度練習が進んだら、土日などを使って練習室に全員集合です。さあ、誰がドラムでも、誰がギターやベースでもバンド演奏できるはずですね。全員ボーカルもできるようになっています。交代しながらメンバーを変えて演奏してみましょう。課題曲を自由に演奏できるようになれば、誰と組んでも、すぐに合わせられます。バンド活動のイメージがだんだん理解できるようになるでしょう。そうして、メンバーを交代する中で、誰とバンドを組みたいのかも次第に見えてきます。

6月〜7月

<文化祭>
生徒会から文化祭の計画が具体的に示される時期です。軽音といえば文化祭でのパフォーマンスというイメージがあるでしょう。しかし、軽音だけの文化祭ではありません。生徒会や他のクラブとも連携し、全体の中でバランスの取れた発表ができるよう協力し合うことが大切です。特に軽音楽部の発表は大きな音が出ます。他の部の発表時間と重なって生徒間でトラブルになることがよくあります。また、一般公開するため、一部の観客が高校の文化祭にふさわしくない振る舞いをしてトラブルになることもあります。野外で演奏する場合などは、近隣住民から苦情が寄せられる場合もあるのです。このように、ただ演奏さえできれば良いというわけにはいきません。そうした場合の対処方法なども顧問や生徒会としっかり詰めておくことが大切です。

出演バンドは2、3年生のバンドになります。1年生はまだバンド結成前ですので、今回はPAや照明といったスタッフとして参加し、イベント開催に必要な知識をしっかりと学んで貰います。PAについては業者に委託する場合もありますが、かなり高額な予算が必要になります。もちろん、業者の機材はモニター環境も優れていますし、専属オペレーターがつきますのでトラブルも少ないのですが、部内の限られた機材だけで実施し、苦労してトラブルを解決していくことも学びにつながります。顧問とも相談し、予算や状況に応じて考えましょう。

<3年生の引退と県大会、全国大会>
以前は文化祭の時期といえば秋が定番でしたが、推薦入試など進路活動の多様化に伴い6月末から7月上旬にかけて実施される学校が多くなりました。3年生は文化祭を以って通常の部活動を引退し、進路活動を優先させます。県大会は7月下旬から8月上旬に計画されますので、3年生が県大会に進出した場合の引退はその後になります。さらに、県大会を勝ち抜いた場合は、8月末に予定される全国大会への出場があります。全国といっても、まだ軽音楽系クラブの場合は全ての都道府県が参加する組織化された大会にはなっていません。主として関東甲信越地区の学校が集まる大会です。

〈1年生のバンド結成〉
3年生の引退と同時に、1年生がバンドを結成しバンド単位の活動に入ります。1年生全員で集まって話し合いましょう。目指す音楽の違いや好き嫌いもあると思いますが、ここまで一緒に練習を重ねてきたのですから、顧問の先生にも相談に乗ってもらい全員がバンドメンバーになれるよう配慮しましょう。

顧問に練習時間の設定をしてもらったら、バンドリーダーはその日の練習内容を考えてメンバーに伝えます。授業と同じで予習が肝心です。よく見かけるのは、せっかくメンバー全員が顔を揃えているのに、それぞれが好き勝手に個人練習をしているバンドです。それでは練習室に集まる意味がありません。交代で練習室を使うのですから、限られた時間を有効に生かすべきです。個人練習は家で十分に行い、練習室に集まったら全員で合わせるのが原則でしょう。まず基礎的な音合わせやチェンジアップなどを軽く行い、リーダーの指示に従って予定している曲のイントロから合わせます。Aメロ、Bメロ、サビと部分的に合わせて、上手くいきそうならワンコーラス繋げて演奏してみましょう。その際に、最初から早いテンポでは難しい場合がほとんどです。思い切ってテンポを落とし、だんだん本物の速さに近づけていきます。キーボードにはメトロノーム機能が付いていますので、全員に聞こえるようPAでクリック音を流して演奏してみてください。なかなか、合わせるのは難しいのですが、より正確な技術が身につくはずです。

8月

<夏休みの活動>
夏休みは、顧問と相談して練習日程を決めます。補習や学校行事、地域のお盆行事などを避けながらも、せめて週2回はバンド単位で顔を合わせたいところです。その他、夏祭りなどの地域イベントに参加したり、合宿を行なったり、講師を招いたバンドクリニックや他校との交流会などを開催した年度もあります。充実した活動ができるよう顧問とも相談して計画を立てましょう。

<部内LIVE>
夏休みが明ける直前には、部内LIVEを開催しましょう。上手く顧問に調整してもらって、中庭などの野外でPAの実習も兼ねて開催するのがお勧めです。PA機材の設置やマイクのセッティング、マルチケーブルとミキサーの接続などは演奏以上に熟練を要します。マイクやスピーカーのケーブルを巻き取るのも、八の字巻きができるようにならないと、すぐにケーブルを傷めるし、次に使用する際に絡まって上手くいきません。学ぶことがたくさんあるのです。また、1年生にとっては上級生にどんなバンドなのか見てもらう最初の機会になります。この日ばかりは3年生にも参加してもらい、終了後は文化祭の打ち上げも兼ねて焼肉会で親睦を深めるのが通例なのですが、この2年間はコロナ禍で実施できていません。

9月〜11月

<新役員の決定>
3年生の引退を受けて、2年生から部長、副部長、機材部長、会計の新役員を決定します。顧問とも相談し、不公平が生じないよう注意して話し合いで決定しましょう。また、11月には生徒会の役員選挙も実施されます。軽音部員から生徒会長が立候補する場合もあるので、できれば重ならないように配慮が必要です。

<総合文化祭>
また、この時期は体育系クラブの新人戦が開催される時期です。文化系でも11月に新人戦県大会に相当する総合文化祭が開催されます。軽音楽部の場合、総合文化祭では各校代表が1バンド参加して翌年の全国総文祭に出場するバンドを決定します。状況によっては複数のバンドが参加できることもあるので、夏の大会同様、部内オーディションを開催して2年生バンドの優先順位を決めておきます。今年の総合文化祭はコロナ禍のため各校1バンド限定、無観客、審査のみの開催となりました。

<その他のイベント参加>
その他、地域の文化祭といったイベントも多く開催される時期です。主催者から出演の依頼が来る場合もあります。本校では例年市主催の芸術祭に参加してきました。また、近くの短大で開催されるイベントにも呼んでいただいています。注意が必要なのは、学校の部活動として参加するのか、個人の資格で参加するのか明確にする必要がある点です。部活動としての参加の場合、直接学校に依頼があり、顧問を通じて生徒に伝えられます。顧問はイベントへの参加届や引率計画などを学校や保護者に提出する必要があります。ところが、生徒を通じて依頼される場合は学校にも顧問にも連絡が来ません。ライブハウスへの出演など、バンド単位での活動を禁止するわけではありませんが、その場合は部活動としての活動と区別しましょう。また、自己責任で参加する形になるため、必ず保護者の承諾を得て、参加料やチケット販売などのトラブルにも十分注意しましょう。参加に不安がある場合は顧問にも相談して下さい。

12月

<クリスマスLIVE>
例年、クリスマスLIVEを開催しています。2年生が中心になって企画運営し、出演可能な3年生にもエントリーしてもらいます。顧問と相談して開催する場所と日程を決めましょう。これまでは校内の練習室や同窓会館を会場にして本校生徒のみを対象に開催してきました。しかし、コロナ禍でほとんどの大会がWEB開催や無観客となった今年は、感染者数が落ち着いたタイミングを見計らって、急遽市営の600人規模のホールを借り上げ、保護者を含む招待者90名に観客を限定して開催しました。PA機材は軽音部の自前のものを使い、照明も固定としてもらうことで、全てを生徒の力で実現させることができました。ちなみに、ホールの利用料は減免対象となり暖房利用と電気代の実費のみでしたので、かかった費用は3万円程度でした。

1月〜卒業式

<オフシーズン>
軽音の場合はオフシーズンがありません。しかし、冬休みは、完全に休部期間とします。お盆とお正月は家族との時間を優先し、地域の行事などにも関心を持って生活して欲しいと考えています。また、年末年始はデレビやラジオで音楽番組が数多く放送され、新しい音楽との出会いも期待できます。充電期間と考えて、これまでの活動を振り返りながら、今後の目標を見定め各自のスキルアップを図りましょう。

<冬季の練習>
もちろん、冬休み明けから練習を再開しますが、冬はそうでなくてもインフルエンザなどの感染症に注意が必要で、イベントも開催しにくい時期です。過去に他校との交流会イベントを計画実施した年もありますが、インフルエンザで出演できなくなるバンドが必ずありました。ましてや、コロナ禍の現在はなおさらです。地道にオリジナル曲の制作や新曲のコピーをしてレパートリーを増やすなど新年度に向けた助走期間としてレベルアップを図るべき時期です。また、2月末は学年末考査があります。部活動を言い訳にすることなく、十分な学習で進路目標を達成できるよう本業にも力を注ぎましょう。

<卒業LIVE>
卒業式前には3年生を呼んで練習室で卒業LIVEを開催します。あくまで部内行事で3年生とのお別れ会だと考えてください。すでに3年生は自宅待機期間になっており、ほとんど登校しません。練習する時間も確保は難しいので、事前に曲だけ決めてもらい可能な範囲で個人練習をお願いしておきます。顧問とも相談して日程を決めましょう。さすがに卒業式当日は難しいので前日の式予行などで3年生が登校する日にタイミングを合わせて設定します。また、3年生は教室の荷物も片付けて私物はすでに持ち帰っている状態です。ですから、手ぶらで登校してもらい、事前に2年生が準備しておいた楽器を使って演奏してもらいます。例年、その場で3年生に花束や記念品などを渡しています。

3月

<春休みの活動>
春休み中は、新年度に向けてバンドの方向性を固める時期です。大会に向けて最も自信のある1曲を生み出すのです。3月は高校入試や新入生のオリエンテーションなど様々な行事のため登校できない日もあります。。顧問と相談して練習できる日を確認し、各バンドに練習時間を割り振った計画表を作成してもらいましょう。

もし、君たちがオリジナル曲で大会に臨むつもりならば、この時期に曲として形にする必要があります。大会は例年5月下旬の予定ですから、新年度に入ってから曲作りをしていては間に合いません。大会までの2ヶ月は、曲の演奏精度を高め、歌詞やメロディーの微調整をします。また、審査員に何をどう訴えるのかアピールポイントを明確化し、ビジュアルも含めた細部を詰めていかなければなりません。そのためには、せめて春休み中に曲の大枠ができていなければなりません。

コピー曲の場合も同様です。2ヶ月前にはメンバー全員が基本的な譜読を終えて、バンドで最後まで演奏できるようにしておかなければ、大会までに勝負できる演奏には仕上がりません。厳しいことを言えば、君たちにはまだプロのような演奏技術はありません。譜面を渡されたその場で求められる演奏ができる訳ではないのです。しかし、ある程度時間をかけて練習し、精度を高めてステージに臨めば、プロ顔負けのパフォーマンスも期待できます。ですから、そのために新年度の最初の2ヶ月を使えるよう春休み中に準備を整えておくことが大切なのです。

また、4月に生徒会主催の新入生歓迎会が開催され、新入部員の勧誘も始まります。各部が持ち時間をもらって勧誘のための実演やビデオ上映などの発表を行います。事前にどんな発表を行うのか役員を中心に決めて準備に入ってください。持ち時間が少ないため、軽音だけ何バンドも演奏するわけにいきません。機材セッティングの制約もあります。これまでの例としては、2年生の中で代表による合同バンドを作って小規模な演奏をしたり、各バンドの練習風景をビデオにまとめて映像で流したりしてきました。3月中には準備を整えておきましょう。

最後に

考えてみると、私は高校の軽音楽部に入部して以来、今日まで45年間ずっと軽音部員だった。途中からは部員ではなく顧問という立場に変わったが、生徒と一緒に演奏したり、ステージに立たせてもらうこともあって、気持ちとしてはずっと軽音部員なのだ。

入学した高校には、ドラムもアンプもなかったので、知り合いが譲ってくれた古いギターアンプをリヤカーに載せて部室に運び入れた。吹奏楽部と掛け持ちの同級生がドラムを購入したというので、無理やり部室に持って来させた。本当はギターをやりたがっていた同級生を懐柔してベースを購入させた。文化祭はもちろんだが、12月にも音楽室を借りてクリスマスコンサートを計画。部員みんなで作ったチラシを昇降口で配布して音楽室は満員になった。

初任校では軽音楽部がなかったので、文化祭で演奏したいという生徒を集めて、倉庫になっていた部屋にドラムやギターアンプを持ち込み練習させた。最後まで部活動にはできなかったけれど、文化祭では素敵な演奏を聞かせてもらった。軽音部のある学校に転任すると、すぐに部員たちとセッションして仲良くなった。文化祭では生徒にドラムとベースを頼んでステージに立った。自分が楽しくてやっているのだから、生徒と大差ない。その後もいくつかの学校を転任した。もちろん、軽音以外の運動部の顧問も掛け持ちで持たされたが、ほとんど、途切れることなく軽音楽部に携わった。大会で顔を合わせる他校の顧問にも、似たような経歴の方が多く、三度の飯よりギターが好き、ドラムが好きといった、ちょっと変わった素敵な先生が結構いらっしゃって、絆も生まれた。そして、不完全かつ未完成ではあるけれど、大会のステージで熱気を帯びる高校生たちの演奏には、プロにはない新鮮な魅力があった。いつの間にか、軽音を辞めるタイミングを逸してしまった。

だから、退職しても気持ちだけは軽音部員のままでいよう。チャンスさえあれば、いつでも演奏できるよう練習だけはしておこう。年齢やジャンルにこだわらず、幅広く音楽を聴き続けよう。人生100年時代、まだまだ伸び代も残っているはずだ。完成しないことこそ、最大のモチベーション。チャーリー・ワッツも亡くなってしまったけれど、コロナ禍の今も、ローリングストーンズが現役ロックバンドとしてツアーを続けているように。


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